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ミックス裏舞台 [クロスオーバー]

3月14日のリリース楽曲の概要については前回のブログで語りましたが、今回はin Depthな方向でハナシを進めてみようと思いますね。

ではまず「Kiska」から。

原曲は山下達郎作曲、坂本龍一編曲という曲ですね。坂本龍一の弾くポリムーグとおぼしきシンセのリフとローズ。今ではこういう演奏はなかなか聴くことは難しいのではないかと。

それもこれも、この曲はYMO結成直後辺りの時代なので、YMOお三方のアルバムで例えるなら細野晴臣の「はらいそ」や高橋幸宏(ユキヒロ時代)の「Saravah!」、カクトウギ・セッションの「Summer Nerves」の辺り。おそらくや「千のナイフ」の前あたりでありましょう。

当時のCBSソニーから出ていたオムニバス企画アルバムで「エーゲ海」やら「New York」やら「Pacific」などと、リリースされていた曲。後にベストアルバムで「Island Music」やら「Off Shore」というアルバムで再編集されるワケですが、「Kiska」は「New York」とその後のベスト盤「Off Shore」に収録されているモノであります。

これらの企画アルバムにはYMOが半ば実験的にYMOたるスタンスを探るような実験場としての動きを垣間見ることができまして、「コズミック・サーフィン」やら「ミコノスの花嫁」やら、「Reggae Aege Woman」(←個人的に左近治の好きな曲)やらも聴くことができて、YMO黎明期におけるシンセサウンドの在り方を模索しているような所が実に素朴で、且つ味わい深い親しみがあると言いますか(笑)、YMOのコアなファンの方なら左近治がわざわざ述べる必要はないかもしれませんが、実に興味深いアルバムであったワケです。

作曲の山下達郎はコーラスで参加しているのが「Kiska」でありますが、そのさりげないスタンスとは裏腹に、「達郎節」とも言えるコードワークは見過ごせないモノがあります。そんなコードワークに水を得た魚のように和声とポリムーグやローズに酔いしれる坂本龍一の姿が目の前に浮かんできそうな、プレイヤビリティに溢れた演奏を繰り広げるのがこの曲なんですね。

以前にもローズに用いる空間系エフェクトの妙味について語りましたが、骨っぽさを残しながら薄くコーラスをかけたい場合は、シリーズ接続よりもバス・アサインの方が功を奏することがあるというようなことについて語ったものでした。

通常、オーディオ畑の「モノラル」の扱いはLch、すなわち左側の信号を優先していることが多く、右チャンネルや両チャンネルミックスのモノラルというのは少ないワケですね。この辺の事情については語りませんが(笑)。

ましてや両チャンネルミックスによるモノラルとなると、場合によっては位相を反転させているだけのシーンも想定できるため、これを単純に両チャンネルミックスとしてしまうと音が失せてしまいかねません。

しかしながら単純な空間系エフェクトというのは、例えばコーラスならモノラルでコーラス効果が得られれば別にそれはそれで越したことはないんですが、ステレオコーラスとなると、片チャンネルを単純に逆相にしていたりとか、ある帯域だけ位相をずらしただけのものとか意外に多いんですね。単純に左右のパノラマ感を微妙にずらして位相各を変える程度くらいのものとか。まあ、この辺を細かく制御するようなパラメータを持つコーラスはもはやコーラスではなく別名称で製品化されていたりするものでもありますが。ま、言いたいことは、ステレオ感を演出する空間系エフェクトの多くは右と左のFXバランスは結構違ったり(だからこそステレオイメージでもあるんですが)して、中には安直なものがあったりするんで注意が必要ってこってす。

そうなると、モノラル再生端末も実際には多く存在するケータイ市場において着信音をまんべんなくコーラス感を得ようとするとそれなりに注意を払う必要が出てきます。別にコーラスに限ったことではなく、ステレオ間を演出する類のエフェクト全般に言えることであります(だからといって全てのエフェクトが左チャンネル優先というわけではないので誤解のないように)。

とまあ、そういう所に配慮しながら作っているのだということを知ってもらえればコレ幸いでして(笑)、単純にオーディオファイルを作っているだけではないのであります(笑)。


チャーリーズ・エンジェルのアイキャッチも、これもよ~く聴かなくとも「ローズ」だということが判っていただけると思うんですが、実は用いているコーラスはリリース日が同一であろうと、ローズの音のキャラクターはもとより、空間系エフェクトも全く異質だということをあらためて比較できるのではないかと思っております。

リディアン・メジャー7th、すなわち、#11th音を足したメジャー7thの音となるとYMO好きな方なら「東風」やら「Castalia」ひいては坂本龍一っぽさを連想するかと思うんですが、別に坂本龍一のための特別な和声ではないんですが(笑)、坂本龍一はやはりこの手の響きの咀嚼が実に巧みだからこそそういう印象になるワケで、YMO関連を引っ張っている左近治なので、坂本龍一ではなくとも、それとなく「っぽさ」を感じるジングルも関連付けてリリースしてみたというのが今回のチャーリーズ・エンジェルのアイキャッチに繋がったというワケです。

さらに、このアイキャッチで特徴的なのはSolinaですけどね(笑)。ローズと共に必要不可欠なこの音(笑)。まあ、時代を感じさせる機材達ではあるものの、いまだにその音の魅力は通用すると言いましょうか。こういうモノがPSEによって消えなくて本当に良かったと痛感するのであります(笑)。あの時動いたひとりに坂本龍一も含まれておりましたね。

骨のあるローズの音という視点で音を探ると、左近治が最も好きなその手の音はマハビシュヌ・オーケストラにおけるヤン・ハマーだったりしますが、マックス・ミドルトンやヤン・ハマー、ハービー・ハンコック、ジョー・サンプルという人達の特徴は、飽和感とエグみある骨っぽいローズの音を好む類の代表とも言えるかもしれません。勿論他にもたくさんおりますし(笑)、「チック・コリアは?」とか訊かれそうでありますが(笑)、チック・コリアはリチャード・ティーっぽい方の音かなあと私は感じております(笑)。いずれも好きではありますが。

10年くらい前なら「インコグニートとブラン・ニュー・ヘヴィーズのどっちのローズが好き?」と言われれば私は後者のBNHの方を答えておりましたが、BNHはコードワークやヴォイシングなどプレイヤビリティに関してはインコグニートよりも遥かに乏しい(笑)、だけど音が良かったりするんですね(笑)。インコグニートは二人居ますけど(笑)。

イイとこ取り系の音はアジムスだったり、初期スパイロ・ジャイラのジェレミー・ウォールだったり、と。この辺を挙げればキリがないのがローズの多様な側面でありましょう。一日あっても語り尽くせるモノではありません(笑)。ローズの音だけやストラトやレス・ポール、あるいはフルアコの音だけのテーマで議論されるようなテレビ番組とかあってほしいですね(笑)。

チャーリーズ・エンジェルもただ単に現在放映中だからという理由で取り上げただけではないということが判っていただけたかと思いますが、テレビコンテンツにまで話を引っ張るとなると次は「ごきげんようサイコロトーク」のジングル(笑)。

これはですね、週末の夕方テレ朝でやっている「クイズマンショー」にて、たまたまテレビコンテンツの音楽やらをやっていた時があって、左近治の制作魂に火がついてしまったというワケでした(笑)。ジングルに用いられているアレンジの方は作ってみてあらためて気付いたんですが、リバーブが結構深めなんですね。

ローズとかだとプレート・リバーブは結構相性良かったりするんですが、ローズやらウーリッツァーの発音構造なんて実際には音叉やら鉄琴みたいなモンで、さらに金属系であるプレート・リバーブで馴染ませるという、実は結構理にかなっている組み合わせ。EMTなんて金箔使ってるんだぜ!とまあ、別にEMTじゃなくともプレート・リバーブなど沢山あるワケですが、音になっていない段階の信号においても鉄板で残響が加えられたり、バネで残響加わったりするという実にアナクロでアナログな発想というのは、実に興味深く、残響が付加されるほどまで影響を及ぼさなくとも回路のパーツ類で音が変わるというのは寓意であることかもしれませんね。

左近治自身は、どちらかというと浅いリバーブが好きです。ただ、デジタルの世界というのはパノラマを積極的に弄らないと音像はセンター付近に集中して、左右両チャンネルで同じ音を倍加させるようなもんなんで、ただでさえデジタル領域で周波数やら処理の帯域が限定されている所に詰め込まれるようなモノなんで、低域がどんどん強められてしまうんですな。まあデジタルでなくとも低域ソースなどこんなモンですが。

そこに単純に残響を付加させてしまうと音は濁るわ、かといってリバーブ・タイム稼ぎたくなってしまったりと、EQでうまいこと探りつつ、低域が集中して飽和した音をあらかじめイメージしながらEQを弄りながらトータルの音をコーディネイトしていくと結構功を奏するといいますか、リバーブやらFX音もEQ活用したりして、深いリバーブを「不快」にさせないポイントが結構あるといいますか。今回そういう意味ではリバーブの難しさをあらためて思い知ることができましたね。そういう意味でも今週のローズ関連やら、ごきげんようのジングルは多くの共通点があったというワケです。