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たまにゃRhodesに酔いしれる [クロスオーバー]

そもそもDX7が出現してから練習スタジオに備えてある鍵盤はガラリと変容してしまいました(笑)。ごく普通にSuitcaseやMkIIなんて見たものでしたが、その後M1や01Wに置き換わっていったワケでありましたっけ(笑)。

しかし01Wの頃になると、モノホンのRhodesが姿を消していたにも関わらず音はトコトン求められるようにニーズは変化していきました。そうです、DX7の爆発的な普及は確かに凄かったものですが、席巻していた時代など僅かなモノだったんですな。

Rhodesの場合音作りは結構力入るモノでして、特にサンプル音源を使ってDAW環境で音を得るような時、フェイザーやコーラスやトレモロの各エフェクトのセッティングよりもルーティングに頭悩ませるコトもしばしば。何故かと言えば、チャンネルインサートにシリーズで掛けるのか、Busルーティングでパラってしまうかだけでも音はかなり変わるからなんですな。当然と言えば当然ですが、音色の変わりっぷりはかなり大きいポイントなんですね。これらのルーティングは。Rhodesに限ったコトではないんですが。

とまあ、要所々々でそれらを使い分けながら、さらにエフェクトのパラメータを細かく編集していくというのがRhodesを用いた時の左近治の実際です。

先日も、坂本龍一がイナタくローズを弾く山下達郎作曲の「Kiska」を作っていたこともあって、「このフレーズ、かなりマックス・ミドルトンっぽいよなあ」などと、クロマチックのフレーズなんか聴いた日にゃあついつい「ニヤリ」としてしまった左近治でありました。まあ坂本龍一の場合離鍵がキレイなのでマックス・ミドルトンよりもソフィスティケイトされるワケですが、マックス・ミドルトンのモタったような離鍵もそれはそれでかなりイナタく味わい深いものであります。ジョー・サンプルの弾きムラたっぷりのタッチもローズだからこそ得られる快感であり(笑)、アコピ弾かせた日にゃあピアノ線ブチ切れそうな臨界状態の変な倍音も聴けてしまうのがジョー・サンプルではあるものの(笑)、ローズだと本当にNastyで絶妙です(笑)。

エフェクトのシリーズorパラレルという点は、どちらが良いor悪いかではなく、ルーティングによって生まれた相乗効果をどう選択するかという好みの問題であるというのを前提にして語らなければならないと思うのですが、例えばローズにコーラスをかけるシーンがあったとしましょうか。

ローズ音源側にコーラスが内蔵されているモノも少なくないものの、ここでは外部のコーラスエフェクトを使うという事を前提に語ります。

コーラスというのはつまるところ位相をLFOで揺らしているため、補強される周波数と相殺される周波数は確実に現れるワケです。ただ、そこでデッドになってしまったとしても、ステレオ感を演出できるように施されたコーラスであれば、相殺されてしまった周波数よりも僅かなピッチの揺れと左右の拡大感の効果の方がより大きいため、実際に相殺されてしまった周波数帯をネガティヴに捕らえるよりも、そういったコーラスならではの効果をポジティヴに利用しているケースの方が多いと思います。

また、元ソースに高域成分が豊かだと、さらにその成分がコーラスの位相の違いによって強化されたりするのも当然のように現れます。

そういう特徴(特長)があるのを念頭に置いた上でコーラスを直結で掛けると、ステレオトラックだったりコーラスそのものをモノ・コーラスとして扱わない限りはステレオの拡大感は増えると同時に、相対的にセンターが抜けるような音になります。

一方、バスルーティングによってコーラスをパラレルに掛ければ、コーラスをoffにしていればEQや別のエフェクトを使わない限りは、同一ソースを並列に、同時に鳴らしているコトになるワケですね。アナログならこれだけでも音が若干変わる要素を秘めているかもしれませんが、デジタルの場合だと同一ソースを重複させればレベルは増大するし、場合によってはとんでもないほど音が破綻してしまって、デジタルクリップの飽和状態にもなりかねません(笑)。

実際にはパストラックに持っていっただけでは音が破綻するようなことはまず有り得ないと思うんですが(笑)、要はルーティングによって生まれる相乗効果を利用した音作りに発想を変える、と。

ま、そんなんでサンプルを用意したんですが、最初に現れるコードは直結でコーラスを掛けたもの。後半が同じパラメータ設定のコーラスをバスアサインしたもの、となっております。後半の方が多少レベルは増加しちゃっているものの(笑)、拡大感よりも中央を補強した感じは十分伝わると思いますし、レベルの増大によって耳がそう聴こえる、という程度のモノではないということも判っていただけるのではないか、と。



ローズの方はコンプとEQしか掛けていませんし、バスルーティング側ではコーラスのみで他はEQもしていません(笑)。2ミックス用のリミッターを掛けるのもすっかり忘れて省きました(笑)。

肝心な点は、ローズの元のトラックのアウトプットとバスルーティング用のBusトラックのアウトプットを同時に使う、という所ですか。

更に細かく編集したい場合は、Busリターンを使ったセッティングなど色々方法はあるでしょうが、単純にコーラスを使うだけでも並列と直列では結構変わるということをあらためて知るというのが今回のポイントです。

今回のデモで弾いている左手のヴォイシングは、チック・コリアがよくやる「ルート+5度+13度」で5度と13度は長二度というヴォイシングによるメジャー9th(13)のコードですね。どんな音域にも使えるってェわけじゃないですけどね(笑)。このヴォインシングは7度またはそれ以上の音がとても綺麗に響くので、左近治は結構好きなヴォイシングのひとつなので今回用いました(笑)。

ヴェロシティを全く同じく上下に平行移動させてサンプル音源やらシンセを鳴らしてしまえば普通に同じように鳴ってくれるかもしれませんが、鍵盤楽器の面白さというのは黒鍵と白鍵の物理的な構造や大きさの違いがあって、どんなに流麗に弾こうともその構造が独特の情感が現れるといいましょうか。特にローズだとそれが顕著に表れるます。黒鍵鳴らさないように指宛てがいながら、白鍵のストロークの深い鍵盤に勢い付けて落とし込む!みたいな(笑)。

ベースに例えるなら、4弦をそのまま弾くんじゃなくて、3弦に宛てがってた指を4弦に向って弾く!みたいな(笑)。

物理的な構造の違いによって生まれるヴォイシングの巧みさというか、綺麗なヴォイシングって結構あると思うんですね、鍵盤楽器は。私などチェルニーですらヒーコラ言っているようなモノなんで大したコト言えませんけど(笑)。