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エレクトリックな弦楽器の魅力 [ネタバレ]

左近治がリリースする着うたは比較的スティック(チャップマン・スティック)の音を使ったものが多いと思うのでありますが、ノン・エフェクトでこれだけのクセのある音を出せる弦楽器というのはそうそう無いでありましょう。

レオ・フェンダーの設計したギター&ベース類は、とことん計算されて設計された部分もあれば、割り切ってしまっている部分もあって、それらが特徴的なキャラクターとなっているんですが、スティックの場合はタッピングという特殊な奏法ありきで、物理的に弦振動が小さくなってしまうのを弦の張力を逆手にとって、ユルユル&ベロベロのテンションの低いゲージを張って、そこで得られる特殊な弦の鳴りを、さらに超ワイド&ジャンボな筒状のフレットで独特の音色が得られるという、計算され尽くされたモノだと思うワケです。

ノン・エフェクトでここまでシンベのような、はたまたクラビネットのような音を得られる楽器はそうそうなく、エフェクトの使い方によってはDXのスラップ系サウンドに近いニュアンスすら得られるんですな。EQ、コンプで出来ちゃいます。如何に元の音の倍音分布が特殊なのかが解ります。

80年代中盤頃までのスティックは、ベースで言うミディアム・スケールだったんですな。80年代後半くらいからロング・スケールになったというワケです。

スティックの難点は、ベースのように指板側を強く押弦してしまうクセを抜かさないと、フレットの摩耗がやたらと早めてしまうコトになるんですな(笑)。そのクセが抜けないままにキング・クリムゾンの「Frame By Frame」なんてやろうものなら1曲終わった時には確実に減っているコトでしょう(笑)。某楽器店の店頭に並んでいるスティックもフレットなんてところどころ真っ平らになってますからね(笑)。行き着く先はフレットレス・ワンダー!?

レス・ポールのフレットレス・ワンダーで1音半チョーキングしようものなら、指先にタコが無ければスパッと切れそうなくらいのフリクションがあるんですが、テンションを緩めようと画策してゲージを細めると音も細くなる。じゃあ、ストップ・テールピースの逆通し(ネック側からブリッジ側に通して、折り返して張るやつ)をしても、フレットレス・ワンダー相手じゃあ相当キツイことでありましょう(笑)。

レスポールの逆通しは古くはBB&A時代のジェフ・ベック、近年では(っても、古株ですが)ザック・ワイルドあたりが有名ですな。逆通しやると、一回り上のゲージを張れますからね。

弦の物理的な違いの側面によってこれだけ音色が変わるワケなので、スティックの場合だと更にその影響が強まります。

例えば、左手で全く押弦せずに右手だけでタップした場合、開放弦から突然タップすることになるので、仮にタップした位置が12フレットだった場合は弦振動から見ると最も「デッド」な所をタップすることになるんですな。というのも12フレットからブリッジ寄りの振動をピックアップは拾っているワケですが、このタップの場合、12フレットからナット側も等しく弦振動させていることになるので、「節」部分や、ハーモニクス・ポイントやら、低次の倍音に近いところをタップしようとすると必ずデッドな音に直面してしまうワケです。

すなわち、左手を全く使わなければスティックの場合だとタップする位置がナット側に極力近い方がより鮮明なキャラクターを得られることになるワケですね。

つまり、ナット側の弦振動を抑える左手ミュートあるいは、タップの力に頼った強い「タップ」で弦振動させずに、極力「触る」程度の弱いタップの方が音色的な側面で見ると功を奏するという、とても不思議な奥深い楽器なのです。

ギターやベースなどでは通常の弾き方なら、音を拾うピックアップ側で明確な物理的な弦振動を起こしているので、僅かにナット側が振動していたとしても音色キャラクーはそれほど変容しないワケでありますが、ヘッド部やネックの跳ね返りの二次的な振動で相殺させてしまうベースやギター(概ね組み込みが悪い)も実はあります。

古くはローランドのベース・シンセサイザーではヘッド側にスタビライザーを設けて、フォデラでは低音弦側の12フレット辺りの跳ね返りからネックが共振することを抑えるように、エンペラーIIやらアンソニー・ジャクソン・モデルに代表されるような構造になっているんですな。ヌーノ・ベッテンコートが使っていたWashburnのギターも低音の振動を相殺させない為のアイデアでああなっていたというワケであります。

ベースでミュートとなると、ブリッジ側にスティングレイやらSGベース、リッケンバッカーなどではスポンジミュートが付いていたり、或いはブリッジ側に手をのせてミュートしたりすることが多いワケですが、ウィル・リーの場合は、左手押弦のフレットの次の上のフレットを他の指で軽く触れることでミュートを巧みに使います。しかしこの方法は、物理的に指が太く大きい人ではないと無理です(笑)。左近治のように左手薬指の指輪のサイズが13なんてぇ細い指しているような奴では、到底無理なおハナシなんですな(笑)。

トニー・レヴィン先生も年を重ねるごとにスティックのタップはソフトに変化しているようでありまして、こういう所を隈無くチェックして少しでも自分自身に役立ててみたいと思うワケでありますな。

そんなトニー先生も、スティーブ・ガッドと同窓生だった時代にはガッドと同じバンドでアコベを弾いてジャズやってたというんですから驚きですね(笑)。だからあんなにフレットレスのポルタメントが巧みなんだなぁと感心してしまうワケですよ。

ンなワケで、今回はスティックの音を使った簡単な曲をアップしてみよっかな、と(笑)。



ドラムとスティック以外はApple LoopsのMIDIを使ったものですけどね(笑)。スティックの音とスナッピーの音に極力注意しました(笑)。今回は全体的に少々ハイが出過ぎですけどね(笑)。