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Finaleにいそしむ [サウンド解析]

着メロや着うた制作には欠かせない、左近治のDAW環境。着メロ時代ではMIDI編集、着うたではオーディオ信号ベースの編集、というワケですがそもそもこういうことを苦も無くこなせるのは、音楽制作がパソコンにすっかり浸透してしまうほどOSとアプリケーションが相互に使いやすくなってきているという恩恵を、使用者がそれほど意識することなく操作ができるようになったからなんですな。

そのOSとアプリケーションの関係とやらも紆余曲折を経て今があるんでしょうが、左近治にとって音楽制作ソフトの類を操作していて一番面白さを感じるのは、それらのDAWアプリケーションよりも楽譜制作、つまりFinaleを使った楽譜浄書なんですね、実は。

Finaleでいくら楽譜を作ろうとも、出版業務に携わっているわけではないんですが、言い換えるなら左近治が「釣り」を楽しんでいるようなモノとでもいうか、釣りをする前に道具をアレコレ工夫して試行錯誤してみたり、そういう作業に似ていると言えるかもしれません(笑)。

DTP関連も好きな作業ではありますが、文字や画像のレイアウト編集というのが好きなワケではなくてですね(笑)、楽譜というものは音以外で音楽を形容するにあたってこれほど便利な伝達手段はないものだからこそ、その音符ひとつひとつに重みを凝縮できる、或いは読み手のことを考えて読みやすくしたりなど、曲の根幹に細かく触れながら編集する作業というのは時間を忘れさせてくれるワケであります(笑)。とはいえDAWアプリケーションにおいても時間を忘れさせてくれるようなことは沢山あるわけですけどね。


時間を忘れて作業なんて、出版業界じゃそんなこと言ってられないよ!

そういう声が聞こえてきそうです(笑)。そりゃそうです。別に楽譜制作に限ったことではなく、クライアントの要望に迅速に応えつつ業務を遂行しなければならない。さらにはその業務が奉仕ではなく利潤を追求しなくてはならないという側面もあるのが実際です。


例えば、左近治がFinaleを使ってパートが5~6パートあるような音楽アンサンブルにおいて、四拍子で100小節ほどの曲をどれくらいで仕上げるかというと、概ねトータルで10時間くらいかかってしまうかもしれません。今までの経験で。これは業務レベルではなく、あくまでも自分の趣味の領域としての時間の使い方ですけれど。

私が着メロや着うたを制作する場合、ある1曲を手掛けるのにどれくらいの「工数」を要したかという観念を用いています。出版業界やらもそうだと思うんですけどね。「工数」とはなんぞや?


例えば左近治の場合は、「1工数」=10分という単位で作業をします。つまり、ある1曲のMIDIを起こすのに2時間30分かかったら、その曲の「工数」は=「15」というコトですね。

業務レベルの現場では、この「1工数」という単位に値段を付けているのが実際です。そこには損益分岐点を考慮した上ではじきだされる価格であり、これは社内内部ではつまり「原価」という風に置き換えることができます。

多くの作業経験から、その業務においてどれほどの工数を必要とするのか、ということは経験的に判るものでして、光熱費やら人件費などのコストを考慮して、そこで初めて損益分岐点が明らかになり、1工数という単位にどれくらいの値付けをすればいいのかというのは企業において色々価格的な開きはあるでしょうが、こういう風にして算出しているのが業務レベルの実際ですね。


出版業務であれば、ある一人の名刺を作るオーダーで版下を作るなんていうのは、私の概念における工数ならば2工数以内でやってしまうのが実際ではないでしょうか。活字やJISコードにも存在しないような文字を用いているのであれば、工数はもっと必要となるでしょうけどね(笑)。一旦印画紙出力したりして、それをスキャンして、Illustratorでトレースして外字作ったりなど、と(笑)。

ただ、単純な名刺だと工数そのものはそれほど多くないのが現実でしょう。


では、その工数は着メロや着うたにおいてはどれくらいなのか!?というとですね、これは曲の和声の構造や和声や演奏の難易度によって大きく左右されてしまいます。その難易度というのも主観的であって、人によってはそれが容易であったり、またさらに他の人には極限レベルを超えた難易度かもしれない曲だったりetc

着メロ時代、MIDIを起こす所だけを工数で考えるなら、例えば吉幾三の「Dream」が一番最短で(笑)、10分程度、すなわち「1工数」で済んでしまったという曲もあります(笑)。

実際には何日にも及んで制作するため、事細かく工数を割り出しているワケではありませんが、着うたの多くの曲は概ね、私の工数の割り出し方なら30~100工数以内で推移するでしょう。その工数に含まれるのは、耳コピ(聴音)から始まって、MIDI編集とオーディオ信号を並行して作って、ミックスして、それを最後に着うたフォーマットに仕立てる、と。そういう工程を全て含んだ工数です。


和声やアンサンブルそのものの難易度が高くても、自分が得意とするようなものならば、工数がそれほど多くならなかったり、曲自体は簡単なのに、音作りで工数を割かれる例もしばしばです。

着メロ時代だと、私は音色を使いまわすことは少なく、その曲用にFM音色を編集していたので、場合によってはこちらで一番工数が多くなってしまうこともありました。音色自体が固定化されていた時の着メロ黎明期の3~4和音の一部なら、それこそMIDI編集だけで済むため、1日に何十曲も作れたりすることもありました(笑)。


没頭することの楽しさがあるのは、今も昔も私にとっては楽譜制作であって、工数なんてものはいくら費やしても、自分の手掛ける楽譜には愛着があるんですね。つい先日も、高校2年生の頃に、音楽以外の授業中にふと浮かんだコード進行を机に書いていたという曲のメモをみつけてですね(笑)、「俺って、スティーリー・ダンに、この頃既に冒されていたんだなぁ」とつくづく感じたことがあってですね(笑)、それも楽譜データにしちゃったというコトがありました(笑)。

学校の机の上は、五線譜の落書きだらけという、授業には没頭せずに常に頭の中が音楽に満ち溢れている、その感覚は、教室という場所や鉛筆(シャーペン)というツールがない現在でも、ツールが変わり、他の方法で没頭できているんだぞ、と。世の中がどう変化しようとも、音楽とそれに対する姿勢は変容していないことにあらためて気付いた次第です。