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密集和音と開離和音について [クロスオーバー]

明日、6月29日はリリース日であります。まずはリリース曲の紹介から。

あなくろ本舗にて

『Virginia Sunday / Richard Tee』をリリース致します。


極上エレピサウンドの代表曲のひとつと言ってもイイでしょう。こういう分散和音を巧みに使う旋律というのはリチャード・ティーのお家芸のひとつでもあるんですが、音の埋め方としてはやたらと高度なモノではなく、音選びそのものにセンスが問われるのがこういう曲ではないかな、と左近治は思っております。

リチャード・ティーのこうしたアルペジオのフレーズの代表的なモノは他にもグローヴァー・ワシントンJr.のアルバム「Winelight」に収録されている、ビル・ウィザースの唄う『Just The Two of Us』とかもありますね。

今回左近治は、Virginia Sundayのアルペジオのほんの一部分にJust The Two of Usを思わせる音運びをしている部分があるので、原曲をご存知の方は判って頂けるのではないかとほくそ笑んでおります(笑)。


分散和音フレーズを巧く鏤めるには、やはり密集和音としての狭い音程と、開離和音にみられる広い音程のメリハリを使い分けることが重要になってくると思うんですが、リチャード・ティーも含めて、こういうフレージングが巧いのはグレッグ・フィリンゲインズも挙げられるのではないかと思います。

密集和音の定義とは、とりあえず和音を構成する各音の音程間が「長三度」以下であることが条件ですね。長三度は含むけど、それより半音広い完全四度以上となると「開離音程」となるワケです。(※長三度はたまに現れるけど、そういう音程を含むことが多いながらも開離音程が多い曲の一例であるという意味で語っておりまして、長三度は開離音程ではないので混同しないようお願いします)

この手の曲だと、のっけからクローズド・ヴォイシング(密集和音)で弾くことは少ないと思うので、鍵盤楽器のみで曲のアンサンブルを構築しようとすると概ね開離和音を弾くことが多くなると思うんですね。

例えば、クローズド・ヴォイシングを転回する際、低い音から2番目の音をオクターブ下げれば「ドロップ2」と呼ばれ、低い音から3番目の音をオクターブ下げて転回すればそれは「ドロップ3」、さらには例えば三声を超える四声の和音にて低い音から2番目と4番目の音をオクターブ下げて転回すればそれは「ドロップ2&4」と呼ばれるのはご存知だと思うワケですが、こうした予め転回されたオーブン・ヴォイシングを弾きながら、その構成音の隔たりの間に生まれるコードトーンをうまく鏤めていくと、先述のようなリチャード・ティーやらグレッグ・フィリンゲインズ風になる、というコトですね。

とはいえ、音を鏤めるにあたってその音を巧く選択できなければ唯のモードスケールなぞっただけと同じになってしまうので、フレージングにセンスが問われると書いたのはこういう理由からなんです。


ドナルド・フェイゲンのソロ・アルバム「Nightfly」に収録の『Maxine(=愛しのマキシン)』のピアノのイントロなんてぇのは最たるモノで(byグレッグ・フィリンゲインズ)、耳当たりの心地良いVirginia Sundayからさらにジャズっぽさを推し進めると、Maxineのようなヴォイシングになるというワケですな。


「ジャズをどう聴いてイイのか判らない」

こういう人達は意外と多いんです。あまりにもハードなジャズやら和声の難易度が高度なモノをいきなり聴いてしまうと、その和声すら耳が受け付けずに、他の楽器のフレージングが唯単に半音階の乱れ打ちのようにしか聴き取れないと感じる人も多いワケですね。

ただ、そういう人でもどこかしらジャズっぽさを感じる耳は持っているワケで、やさしい、ジャズの入り口を提示してくれる曲というのは、その曲を実際に耳にしてから出ないとなかなか購買意欲というのは湧かないと思うんですね。そういう意味において、人によってはジャズは当たり外れの度が高く感じてしまい、ついつい敬遠しがちになってしまいかねないという音楽ジャンルでもあるんです。

Virginia Sundayをジャズと形容するには少々誇張し過ぎかもしれませんが、充分にジャズに入り口を提示しているというのは以前のブログでも語ったコトですが、なにより、クラシック畑の人、それも幼い子たちに耳にしてもらいたいというのがこの曲だったんですね。

曲が幼いのではなく、聴く人が幼い内に早期の段階でこういう響きを耳にしてほしい、という意味ですね。

通常、ピアノのレッスンに没頭する小学生がショパンの音について語れるようになる時というのは年齢は少なくとも二桁に達していると思うんですよね。

ただ、ショパンの特徴を俗世のクラシック畑における解釈のままになってしまうと、その特徴すら理解がおぼろげになって楽理的な特徴は掴めぬまま大人になる人が多いワケです(笑)。その特徴とやらを他の曲で後押ししてもらうことで、飽くなき和声への欲求を高ぶらせて、音楽へ没頭する心が強化されれば、是、左近治は感慨無量なワケですね(笑)。

とっくにリチャード・ティーも知ってしまっている人にではなく、全く知らない人や、これからピアノ頑張るぞ!という子達にぜひ聴かせてあげたい曲というコトなのです。


「ウチの子、ナメんなよ!」というご貴兄には、私がリリースしている他の楽曲(あなくろ本舗)の和声構造でも徹底分析してもらえたらな、と思います(笑)。


でもですね、この曲は決して幼い響きじゃあないですよ(笑)。ウチの子も凄いと思いたいんですけどmihimaru GTとかオヤジも一緒になって聴いてるのが現実でして(笑)。