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変拍子を考える [クロスオーバー]

今現在制作に没頭している洋楽関連曲(あなくろ本舗用)がありましてですね、それがHatfield and The Northの『Mumps』なのであります。

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プログレとカテゴライズされるHatfield and The Northですが、Mumpsが収録されている2枚目のアルバム『Rotter's Club』なんてぇのは、70年代を代表するマスト・アイテムだと思われるんですな。一部の偏狭的なマニアだけには勿体無いほどの高い完成度と高度なハーモニー。

緻密に計算され尽くされたアレンジと演奏というのは正直言ってですね、その辺の人がただ単にモード・スケールなぞっただけのようなソロやらインプロヴィゼーション聴かされるより遥かに素晴らしいんですよ。楽曲的に。

例えばパット・メセニーのように瞬時にハーモニーの構造を昇華して、十二音の中で自由に巧みに操れるような人というのはかなり稀有だと思うんですよ。大概は自分の弾きたい世界へ持ち込んで解釈しているワケでありまして。

ところが稀有ではない雑多タイプの人達のソロなんてのは殆どが「やらない方がマシ」のようなソロが実に多いワケでしてですね、カンタベリー系と称される「ジャズ・ロック」の計算され尽くされた様式美というのは、クロスオーバー・サウンドとして在るべき姿だと思うんですよ。

左近治のクロスオーバー・サウンドの基準というのは実はHatfield and The Northのサウンドにあるのです。実は。

ジャズ/フュージョン畑の「クロスオーバー・サウンド」聴きたさに足運んで実につまらない演奏聴かされたコトも多々あり。高校1年の時からこちとらPIT INNに通いづめ(笑)。でもですね、ジャズ畑ではないような人達の「クロスオーバー・サウンド」というのはムダが無いし、計算されているものが多く、ソロを取ってもジャズ畑のそれよりも遥かにイイ演奏しているコトが実に多いんですよ。アンサンブル全体の「音」というのも緻密に計算しているような。


さて、『Mumps』の方を語るとしてですね、左近治はいまだにMumpsのいわゆるコアとなるテーマ部分をチマチマ作っていてリリースできるほど完成に至っておりません(笑)。20分を超える大曲ですが、左近治の作っている部分はアップロードした拍子列の小節構造部分の正味90秒のコア部分(笑)。

Mumpsの収録されているアルバム「Rotter's Club」はローズ聴いているだけでも気持ちイイものでありまして、ローズを目の前にすると左近治はついつい「Underdub」とか弾いたりするモンです。

4/4拍子一辺倒な人からすると、Mumpsを知らない人は譜例の変拍子を見て面食らうかもしれませんが、実はこの曲というのは実に「自然に」変拍子が変拍子っぽくなく聴くコトが出来る曲なのです。

4拍子のリフの中に局面だけ変拍子が入ったりするような曲の方が大半は「幾何学的」なリズムに聴こえるワケでありましてですね、コレほどスンナリ変拍子が入ってくる理由というのは恐らく、この曲のメロディやハーモニック的なリズムを与えるタイミングが、拍など気にせずに人が楽器と戯れて爪弾いているような時のフレーズに拍を当てはめたような、そういう「鼻歌要素」のあるフレージングだからだと思われます。

もちろん、作曲時点では変拍子であることを前提にアレンジしていたりするかもしれませんが、鼻歌的な要素がある変拍子というのは実に自然に溶け込むというモノです。

変拍子の扱いが巧みなバンドは他にはジェントル・ジャイアントやらレッド・ツェッペリンもありますが、鼻歌要素とはまた少し別の、リフとしてカッコイイ変拍子であってですね、やはりこのMumpsとはチト違うんですね。

フランク・ザッパは「喋り」のリズムを拍子に置換するような視点で作られたりしますが、周囲のアンサンブルはその「喋り」を楽曲的なアレンジにまで昇華できているかというと、そうでもなく、拍子の概念に支配されているプレイヤーが多いのが事実です。ザッパの曲全てがそうだとは言いませんけどね。そうは言っても左近治自身フランク・ザッパはかなり好きなんですけど(笑)。


先述の譜例で所々リズム譜を入れているのは、そこが「コア」な部分と左近治が感じ取っているだけでありまして(笑)、参考になればよいかな、と。

左近治のリズム解釈は本当はですね、譜例の拍子の分母は半分で捕えています。3/4拍子だったら左近治自身は「3/8拍子」として捕えているということですね。すなわち音符上では倍テンポ解釈なんです。打ち込みの時点でもそういう風に作っているんですけど、倍テンポ解釈だと曲全体が解釈に戸惑うような感じになると思って今回のような譜例を挙げてみたというワケであります。変拍子は奥が深いモノですが、4拍子一辺倒の人にも騙されたと思って変拍子に触れてほしいと思います(笑)。