SSブログ

エレクトリック擦弦 [制作裏舞台]

音楽制作においてDAWアプリケーションが核となった今、敢えてフィジカルな楽器的側面を語りたくなる左近治。今回はE-Bowについて(笑)。

ギタリスト1000人居ても、E-Bowを買う人は1人居るか居ないかでしょうなあ(笑)。YMO好きな方ならビル・ネルソンというとってもkinkyなギタリストの名前を耳にしたことがあるのではないかと。

Be Bop Deluxeというバンドに在籍していたビル・ネルソン。当時のバンドのサウンドは初期ロキシー・ミュージックと、近年で言えばiPodのCMにも使われたCaeser’sのサウンドを足して2で割ったような感じとでも形容すれば分かり易いかも!?

電磁力を使ってエレキ・ギターの弦を振動させるというエレクトリックなボウ。すなわちE-Bowというワケですな。

左近治は当時、YMOのソロ作品を追いかけていた時期もあったのでビル・ネルソンがE-Bowを使う曲というのは何曲かあるワケですが、一番好きなプレーは高橋幸宏の「Are You Receiving Me?」のギター・ソロでしょうか。途中で32分音符よりも細かい音があるんですが、リング・モジュレーターを低周波で途中からONにしているのか、弦を激しくベンドさせてE-Bowの筐体にぶつけて音を出しているのか、ピックアップのポールピース上付近で電磁ノイズを出しているのか(これが一番可能性が高そう)未だに不明ですが、この音が異常なほどカッコ良く、プレーが一番冴え渡っているように思えます。

E-Bowってえのは発音させたい弦の両隣に滑らかで浅い曲面状のガイドレールがあって、それがエレキ・ギターの各弦の間隔に見事にフィットするようになってるんですが、指板から見て一番外側の弦(通常1弦と6弦)は片方のガイドレールが意味をなさなくなり、宙に浮いた状態になりますが、普通に慣れてしまえば何事もなく演奏ができてしまいます。

バレー・コード(6本の弦全部で音を出すギターのコードの押さえ方)で、E-Bowの筐体を軽く弦に押し付けたまま、ガイドレールを滑らすように1弦←→6弦と往復させると、アラ不思議。手っ取り早く、モノの見事にスウィープ・ピッキングが完成します(笑)。

ギターをこよなく愛する人からすればE-Bowなんて異端そのもの。さらにディストーションやハーモナイザーで音を変化させて、元の楽器の音すら分からないような音なんて人によっては侮蔑モノなんでしょうなあ(笑)。

しかし、本当にとんがった人というのはギターという演奏スタイル、まあユーザー・インターフェースみたいなものですか。それを利用しているだけであらゆる音を手に入れようとしているだけで、保守的なギターの演奏スタイルに固執していないだけとも言えましょう。マイク・マイニエリが鉄琴状のシーケンシャル・サーキット社のアナログ・シンセ(実際はムーグ製です!スイマセン!)を使っていたように(笑)。まあ、後のコルグさんが輸入代理店になっていたmalletKATシリーズのようなものですか。

楽器に必要な演奏方法をユーザー・インターフェイスとして見た場合、この演奏形態には固執しつつも音に関しては執着しないという、ヒネたタイプのアーティストが私は好きでして、左近治のベース観というのも実はこっちのタイプです。とはいえベースとして分類されるものでもジャズベース、スティングレイ、F-Bass、リッケンバッカー、ケン・スミスなど本来の音が持つ良さも分かるんですが、左近治の場合、シンセで言うところのADSR的側面で見たベースのエンベロープや音色はそれほど固執していないのです。演奏形態こそがベースのそれであれば、DXのベース・サウンドが欲しいと思ったくらい(笑)。

ベース・シンセにしても実際のタッチやプラッキングやアポヤンドやらアル・アイレやスラップなど、微妙に音が変わる要素があるのに出音がそれらに全く追随しないのがシンセの特徴でもありますね。これらの要素が他のコントローラー情報など両手以外で必要とせずに済めば問題ないのですが、実際にDXベースのような音をエレキ・ベースで再現しようとしてもリアルタイムでオーディオto MIDIが実現したとしてもムリなハナシなワケです。遅れが生じますし。まあ、シンセサウンドが欲しければ犠牲を払ってでもそれに慣れろという事かもしれませんけどね。それを考えるとジョージ・ベンソンがカヴァーした「Feel Like Making Love」におけるウィル・リーのローランドのベース・シンセなんてかなりいいプレイしているということをあらためて痛感させられるのであります。

つまり、演奏形態において出音が追随してくれるのはトリガーでサンプル音源やシンセ・サウンドにするのではなく、出音そのものが演奏による僅かな違いをも音色変化に対応してくれるにはエフェクトの方が手っ取り早いというワケです。

そこで、こうした「ヒネた」タイプの人の多くは、エフェクトで音を変えようとアレコレ考えるようになるんですな。

演奏形態がエレキ・ベースのままで他に欲しいと思った音はやはりDXのベース。ベロシティによってオペレータのアウトプット・レベルが変化することで音色変化が実に見事に演出されるからなんですが、あの音だけでもDXの価値はありますね。まあ、ファクトリー・プリセットのローズの模倣した音もかなりイイ音なんですが。

チャップマン・スティックの場合、演奏形態はエレキ・ベースのそれと大きく異なるものでありますが、タッピングという奏法にほぼ限定されるため、弦長スケールもベースと同じ(昔のはミディアム・スケール)ということで敢えて通常のベースとは弾き方が違うことで弦間ピッチの狭さ(ギターと一緒)を受け入れてしまえるスティックそのものの音の魅力というのもあります。

よせばいいのに左近治は、スティックにE-Bowを使ってみたことがあるんですが、スティックの弦はゲージもかなり細くてテンションはユルユル。E-Bowはある程度広範囲で電磁力を生み出しているとはいえ、弦長の腹や節に該当しないどんなポジションでもソツなく拾えるポイントというのはピックアップのポールピース辺りになってしまうという有様(笑)。

ポールピース上でE-Bowを使うと電磁ノイズが乗るわ、テンションが緩いんで一旦弦が震えだすと振幅が大きすぎてE-Bowの筐体にビリビリ当たるわ、ブリッジ寄りにE-Bow使うと弦が振動しないわ、手は届かないわで散々な思いをしたことがあります(笑)。

テンションを高めようとチューニングを上げると、スティックの1弦は.007という非常に細いゲージ。通常12弦エレキ・ギターの3弦用の副弦の細さですな。巻弦の一番細いものも、エレキ・ギターではなかなかお目にかかれない細さです。

特殊な音を試みてあらためて楽器固有のそのものの音の良さを認識させられるのでありますが、エフェクトを使って原音が何なのか判別できないほど音を変える人であっても、ギター本来の音の良さと特徴をきちんと分析していると思います。

とりあえず特定の音のソースの空間系エフェクト部をエフェクターによって真っ裸にすることもあれば、原音すらも特定できないようなエフェクトの海状態に加工してしまったり、エフェクトでも決して得られない演奏方法の根幹から音を変える発想など、楽器というのはそれによって様々な音を出してくれるからこそ色々アイデアも湧くんでしょうな。

DAW上でソフトウェア化された楽器を取り扱うことが増えてきた中、あらためて楽器への思い入れを痛感させてくれるのであります。そうなんだよ。DAWアプリケーションやらMacやPCなどに入れ込むのではなく、あくまで生楽器が好きなのだと。

パソコンに何でもかんでも仕事持ち込まないと気が治まらなくなっていやしないかとあらためて生楽器の良さを知らされるのであります。

ハイ、そこで現在左近治が制作中の着うたですが、現在は放映されていない某長寿TV番組のテーマ曲に挑戦中であります。たぶん、着メロでも着うたでも希少の部類に入るかもしれません(笑)。番組自体は左近治の世代なら誰もが知っていると思うんですが、お楽しみに。この曲の1拍6連を4フィギュアのタイム感で演奏するファンファーレは誰もが聞き覚えがあるのでは!?

オーケストラの耳コピって本当に辛いけれども面白いですね。あらためてアンサンブルに混じる様々な音を普段は聞き逃してしまっているのだなあと反省。小太鼓のロールも96分音符を平然と演奏してしまうマーチング・ロールの真骨頂!。

ちなみに左近治は、96分音符よりも細かいロールは頭の中で符割として処理できないと断言しちゃいます(笑)。マハビシュヌ・オーケストラにおいて聴くことのできる某有名ドラマーさん(名前挙げる必要ないですがビリー・コブハム)はこれよりも細かいロールでコム・フィルターがかった音になってますよね(笑)。たぶん128分音符なんだろーなー。左近治なんてbpm120前後で48分音符が限界ッス。ベースのスラップでなら逆に驚かせられる符割ですけどね。

さらには160を超えるbpmで1拍6連で同じ音を吹き続けるファゴットやらオーボエなど、演奏力の高度さがタダモノではなかったり。偶数次倍音を持つ楽器のアンサンブルに溶け込ませるアレンジの妙味など、やはり深いなあと感じさせられるワケです。音域の高低差を12音に置換して表現できる作曲能力(かなり秀でた絶対音感が必要)にも驚きを禁じ得ないのでした。