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左近治のドラム考察 パート2 [ドラム]

打ち込みによる音楽が浸透している昨今、生ドラムも含めて生楽器に精を出すのは実に良い経験が得られることではないかと。

ドラムの場合は叩く事が前提となってアピールされるものの、チューニングの確かさによる音の美しさの重要性は大きく取り上げられることが少なく残念であります。演奏という物理的な技量面ばかりがクローズアップされがちなのですな。もちろん専門的な考察においてはチューニングの重要性は語られているものの、ドラムを何年も経験してきた人でもチューニングが疎かになっている人は結構多いものです。

特に、チューニングボルトを同じ回数分回してチューニングしてしまったりなど(笑)。これ、実はかなり致命的でリムは傷めるわ、ラグに余計な負担が掛かってネジがスムーズに回らなかったりなどと実に様々な弊害があるんですな。

例えばスネア。まず新品を買ってきたら一旦ヘッドは表も裏も外します(スナッピーも)。その後、チューニングボルトを受けるネジというネジ穴の全てを掃除します。ネジ受けの方だけではなくネジ本体も「バリ」を取るように掃除します。

ラグの方は筒状になっているため、細い筆を使っても取れない時があるので、なるべくラグからバリが出るように逆さに置いて、エアスプレーを放射したり、不要なマスカラの柄先を掃除しておいてそれを使ったりなど、とにかくネジ穴やネジ周りのバリの除去から始めます。

ヘッドをはめずに、チューニングボルトを何度も付け直したりして、こういう作業をバリが確認できなくなるまで続けます。場合によっては数日費やすことになるかもしれません。

バリが全く出なくなった時に、ネジ本体側に薄くグリスを塗ります。グリスも経年変化で硬化することがあるのでこれまた注意なんですが、上手く調整が行き届いたヤツというのは本当に僅かな力だけでチューニングボルトがクルクル回るものなのです。バリが残ってしまったままグリスを塗ってしまうとラグの方のネジ受け部分に未来永劫バリを残すことになるのでご注意を(笑)。

さて、次はヘッドの装着。チューニングボルトを対角に締めていくわけですが、チューニングボルトは常に遠い方を次に締めていくようにして対角でやっていくといいかと。時計を例に挙げると、12時からスタートしたら次は6時。じゃあ、6時の次は?1時?11時?

1時や11時だと、スタート時の12時に極端に近くなるんで、正解は3時or9時です。こうして後は対角にやりながら、既に締めた位置の最遠部を見つけながらやっていくというワケなんですな。故に遠い方と。実際には時計のように12等分じゃなかったりするんでイメージだけ掴んでみていただければ、と。

で、ある程度締めていったらチューニングを合わせる前にヘッドを両手で強めに押さえ込みながら、ヘッドの個体差が持つ「たわみ」を取るようにして馴染ませます。シワやたるんだ状態ではなくある程度ヘッドを張ったら実際にシワやたるんでいなくてもそれを伸ばすようなイメージで手で押さえつけながら馴染ませていきます。

スナッピー側の裏ヘッドは薄いヘッドを使いますが、打面よりも高いピッチで張った方が良いです。スナッピーの響線がムラなく接触しないことはもちろん、バンドアンサンブルにおいて特にベースの音に共鳴しやすくなりますが、うまく均等に張ると共鳴が無くすことにも繋がるのである意味では打面よりも神経を使います。

こういう例に限らずドラムの場合は変な不協和な音にさせないチューニングのツボが必ずあるのでそれがドラムの奥深さでもあるわけですが、ドラム個体の持つ共鳴特性はもとより、バンドアンサンブルにおける外部楽器による共鳴は、ある程度のピッチになると押さえ込むことが可能なので、特にベースの音の共鳴がある時は概ねスナッピー側を低く張ってしまっていることが多いと思われます。

スナッピー側の裏面、すなわちボトムヘッドを高くするにはどれくらいのチューニングにすれば良いのか?これは打面のチューニングを施してから決めることに。

では、打面側のチューニング。ある程度ヘッドを馴染ませてチューニングボルトをそれぞれ同じ回数分くらい回して調整したとしても、見た目にはヘッドのたわみやシワが取れていても実際には不均一に張られています、よほどの偶然が無い限り(笑)。

ここで、均一なチューニングをするために打面ヘッドの中心を指1本で印鑑を押すような感じでミュートさせます(ずっと)。

ミュートさせたままの状態で、各チューニングボルトから2~3センチほど内側の打面をチューニングボルトの位置に沿った形でそれぞれ軽~くスティックのチップでコツコツ叩いてみると・・・!?

各チューニングボルトのへりでそれぞれ音程が違うことに気付くはず!コレが重要なポイント!

こうして音程差を聴きながらチューニングを合わせていくと、均一にヘッドが張られているという結果を導くワケです。あまりにバラバラだと、打面の叩く位置が僅かに違うだけで音程差がかなり生じてしまったり、ひどい場合は、強度があまり無いリムだと横から見ると湾曲してしまうことも!これがラグなどボルト類を傷める原因の最たるモノ!

チューニングを均一にした上で、ある一本のボルトだけ少し緩めて長2度音程差くらいにして音の変化を楽しむということもできるんですが、音程の高めの打楽器類ではオススメしたくない(笑)。バスドラだったらある意味オススメですが。

ま、こうしてチューニングを均一にしていったらボトムヘッドも同じ要領で均一にする、と。そうするとスナッピーもムラなく当たって豊かな音を発生させるんですな。スナッピー側のチューニングは私なら打面より長6度高い音に合わせますが、短7度だったり、これは好みによりけり。

このように、プレイヤー・ドメインでキッチリとチューニングを合わせても、実際にCDやレコードなどで耳にする音と実際のドラムの音が違うのは、レコーディングで録音された音のそれは、ゲート、コンプ/リミッター、EQさらにはリバーブなどが付加された音という現実。特にリバーブ以外の前述のエフェクト類はドラムサウンドを作る必要不可欠なエフェクトなので、今度はドラムにおけるエフェクトについて語ろうかと準備中。

スナッピーの鳴りが心地よい(左近治の思う)音をアップしてみたので試しにどうぞ。

太い音


アンビエンスを効かせた明るい音