SSブログ

たらこ・たらこ・たらこ 変格旋法の妙味 [MONDO]

上野耕治作曲とくれば、ピンと来るのが戸川純とのゲルニカ(細野晴臣と高橋幸宏が当時立ち上げていたレーベル「\ENレーベル」)や、高橋幸宏の「四月の魚」のハープのアレンジなどなど。オーケストラアレンジなど得意とする方ですね。

このCMを最初に見たのはもう2年くらい前でしょうか。その時から左近治は既にチェックはしていたのですが、あまりに人気があると返ってリリースしない方がいいのではないかと思いながら、とうとうCDまで発売されてしまいました。

チェッチェッコリをCDで買った時は店頭で恥ずかしながら買った覚えが(笑)。今回はキャラクターグッズに釣られて娘が既に買っておりました。

マイナー・キーはドリアンでモード解釈してどちらかといえばフュージョン寄りというのが坂本龍一だとすれば、上野耕治はナチュラル・マイナーとその音階の2nd(9th)のトーン、すなわちトニックから数えて♭6thと9thトーンを巧みに使うタイプの方だと形容できるかもしれません。

ドリアンを意識させるにはナチュラル6thがキメ手。ここからちょっとしたパッセージで♭6thに移行させながらアッパー・トーンで遊ぶと、ナチュラル・マイナーからフリジアンへのモードチェンジに移行できたりするので結構オツな響きになるのです。

私もこの響きは田中裕士さんから教わったことがありました。

ベース弾きである私が20歳の時に書いた曲で、9thメロディトーンが強調されたその曲の調はEマイナー(笑)。ベースとしてはよくありがちなパターン。

Em9→Am6add9(onE)→FM7(+11)→E♭M9

とまあ、こんな感じのコード進行なのですが、Eマイナーでありながら、最初はEドリアン。しかし次はEから見た♭6thの音(いわゆるナチュラル・マイナー)の感じを出したいためにこういうコード進行に。しかしバンドの他のメンバーは、ドリアンに慣れてしまっているため、どうにもこうにもヴォイシングをあれこれ指示してもしっくりこないハーモニーの解釈に・・・。私もアレンジに悩み、たまたま田中裕士さんのジャズトリオのライヴを見ていると、曲名は分からないものの、やはりEマイナー(Eドリアン)で途中に32分音符のパッセージで数オクターブにまたがるアルペジオを聴いて完全KO!

田中さんのライヴが終わり、たまたま近くに田中さんが居たためその時の曲の高速アルペジオについて問い掛けてみると、田中さんは快くなんと、ピアノの傍らまで私を連れて行ってくれ、さらには田中さんがその場でピアノを弾いて解説していただけるという、とても幸運なシーンに遭遇できたのでした。

♭6thと9thのトライトーンが非常に絶妙なハーモニーを導くわけですが、ここにD音(Eにおける7th音)が入ってしまうとダメなのです。

話がそれましたが、マイナー感を醸し出す曲というのは6度と9度の巧みな使い方で非常に奥深い響きが生まれるというわけなのです。

「たらこ・たらこ・たらこ」が6度と9度の妙味を使っているのかというと別にそういうことではなく、いわゆる一時的な転調感を醸し出す「変格旋法」がキメ手となるということを言いたいだけなのですが(笑)、それでいてマイナー(短調)のキーの曲は概ね前述のような妙味を意識すると多調感が演出されるということを強調したかったのでありやす。

ポピュラーなところでは「トルコ行進曲」や「幻想即興曲」など。一時的に転調感のある部分といえば分かりやすいでしょうか。

例えば、メジャー・スケール(長調)の7th音をフラットさせれば、スケールはミクソリディアンではありますが、これを同主の調の感じを貫けば立派な変格旋法ですね(ヒポイオニア)。属七の音階でもありますが、変格旋法として曲を成立させるには時にはブルージーであったり、ユーロな感じを演出できる音階として重用されます。ユーロな感じはよく4度と長3度と短7度の音をぶつけて演出しますね。他にもマイナーが突然フリジアンっぽくなったりする転調感は変格旋法ならではの技法です。

ヒポイオニアは中世の頃から多用されていて、平均律も存在しないその当時から属七の規則とは別に扱われてきたわけですね。まあ、属七が持つトライトーンのトニックへの帰結感も平均律導入によって希薄になっているわけですが。

さて、「たらこ・たらこ・たらこ」はウチではどう扱おうかと思案中。今更原曲のベタなリスペクト・アレンジを施しても訴求力は希薄であろうことは制作する前から容易に推察できます(笑)。原曲の着うたでも既にリリースされていることですし。

この曲がウケているのは、児童ボーカルというのがキモ。左近治は3年ほど前にキッズ向けアレンジで新店を出店しようとスタッフの方々と協議した結果、悟生楽横町で展開するという方針になった経緯もあり、キッズものに関しては結構敏感にアンテナを張り巡らせていることはご理解願いたいと存じます(笑)。

まあ、我が子を持つ親の心があれば、子供がどういう風に演出されていると可愛さが増すのか、そういうツボは左近治でなくとも世のお父さんお母さんが一番よく分かるのではないかと(笑)。左近治も娘を持つお父ちゃんですので、そういう着眼点は常に抱きながらマイペースで着うたをリリースしているというワケです。飛び道具系やキッズもの。それらはアイデアが固まり次第、ウチでは必ずやリリースしますので今後とも期待せずにお待ちください(笑)。