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ピッチ補正あれこれ [サウンド解析]

 エマニエル坊やのシティ・コネクションや昔のテープ音源などのピッチ補正について語りましたが、デジタル・ソースにおいても時たまピッチ補正が必要になるシーンがあるのでそれについて。

 私の大好きなSteely Dan。バンド結成前のベッカー&フェイゲンは出版社とのいざこざもあったためか、pre-Steely Danとしての音源が乱売されています。「アンドロイド・ウェアハウス」というのはその後の「アルタミラの洞窟」に繋がっていくものなのだなあと分かったり、その後の名曲達はこのような初期音源のスケッチのようなものから生まれたものなのだと痛感させられるわけですが、それらの曲の中にはどう聴いてもピッチが低すぎるものもあって、非常に聴くに堪えないような物もあるのが残念です。

 私が好きなベッカー&フェイゲン時代の曲は「Brain Tap Shuffle」「Don’t Let Me In」が代表的なのですが、「Brain Tap Shuffle」の方は現在iTMS-Jでも購入できるモノです。

 ところが、この曲はおそらくGマイナーのキーなんでしょうが、演奏時のコンサート・ピッチを440Hzと仮定した場合、27.24セントほど高いのです。これなどはまだいい方で、例えばCDとなるともっと凄いものがあります。

 ベッカー&フェイゲンの音源は至る所でリリースされてしまっているためか、一概に言えないこともあるのですが、例えば、以前ポニー・キャニオンからリリースされた「STEELY DAN featuring Walter Becker & Donald Fagen」(D20Y0250)に収録されている「Don’t Let Me In」を例に挙げるとしましょう。

 一聴して、明らかにテープスピードが遅すぎる。う~ん、こりゃヒドイ(笑)。フェイゲンの声質を思い出しながらとりあえず半音単位で探ってみると、おそらくこの曲もまたGマイナー・キーなのではないかということが分かるわけですが、それでもまだコンサート・ピッチを440Hzと仮定するとピッチが合っていないわけです。

 で、最終的に224.69セントほど上げると、ようやく曲の本質が見えてくるようになります。当時のスティーリー・ダンがコンサート・ピッチは常に440Hzだったのかということはさておいても、これだけ違和感のある音楽を生き返らせることが出来るという意味では大きく、やはりピッチ補正というのはこういうシーンにおいて非常に役立つというわけです。

 エマニエル坊やのシティ・コネクションの記事には、文章の誤りがあったので修正しておきましたが、こういうのとはまた違った楽しみがあって、音楽の編集の奥深さと手軽さにあらためて感動してしまうのでした。