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混合長旋法とは [楽理]

 混合長音階やら呼び名は色々見るかと思いますが、まあ、今回はこういうテーマで語って見ようかと思うのですが、嘗ては「無窮動」というタイトルを付けて語ったこともありますが、エドモン・コステールも分類していたりするもので、リムスキー=コルサコフなどでも知り得たりすることでありましょう。


 混合長旋法とは、そのヘプタトニックを上下二つのテトラコルド(2種類の完全四度)に分けた時、そのテトラコルドのそれぞれは長音階の断片と短音階の断片を持つもの、という風に分けて考えると腑に落ちるものだと思います。


 例えば、ハーモニック・メジャー・スケールとして知られている音階は、ポピュラーな所でこれについて触れているのは濱瀬元彦著の「ブルーノートと調性」であるのですが、「ドレミファソラ♭シド」という音並びなのでありまして、先のようにテトラコルドとして2たつの完全四度に分けてみると「ドレミファ」は長音階の断片(Cメジャー・スケール)、「ソラ♭シド」は和声的短音階の断片(Cハーモニック・マイナー・スケール)というものを混合させたモノだという意味なのですね。

 加えて濱瀬元彦著の方では長音階の短調終止という風に触れていますが、ハーモニック・メジャー・スケールで生ずる♭6thの音は実は長音階の平行短調であるAmの主音への導音(=G#)の異名同音として機能するのであります。


 初歩的な理論的知識を得る段階から短音階というのは「自然・和声・旋律」という3種類あるということを覚えますが、短音階というものがなぜそこまで自由度が高く発展したきたのか!?というのは、結果的に調的な性格の「嘯き」が発展したことに起因するものでありまして、さらに純然たる長音階と自然短音階の脈絡だけを幾重にも構築させて発展させていく対位法的アプローチの一部にも、変化音的な脈絡、それは「和声的短音階」や「旋律的短音階」の脈絡を使ったりすることで、メジャーとマイナーの行き交いのように彩られる音世界がさらに明確になることで重宝されるものでもあり、先のナチュラル・マイナー・スケールを除く2つの短音階の特徴でもある音を使うことで、新たな嘯きへの脈絡として発展させることもできるポイントでもあったりするワケです。


 先のジェントル・ジャイアント(=以下GG)の「Black Cat」の4つの調域を選んで2つの構築のパターンを譜例にしてみたので確認してほしいと思います。
KongouChouonkai.jpg


 譜例の左の方は先のGGの「Black Cat」で取り上げた調域そのまんまですが、ロ長調を挙げ乍らもロ長調は実はB Harmonic Majorを私としては想起したいんですね。つまり、先の例で言えばロ長調を想起し乍らも、Bハーモニック・メジャーの特性音である「G」は嬰ト短調の為の音を嘯く、という風に私は捉えているのです。


 そこに「ロ長調」を想起する理由に、さらには背景のプライマリなホ短調の属音への動きはすなわち属七という七度の音を形成せずともそこには属音をルートとする長和音(B△)を自ずと想起する流れになっており、ホ短調というEナチュラル・マイナー・スケールの音並びとは異なる(変化音)が齎す作用を見越した上でロ長調だけど断片はBハーモニック・メジャー・スケールであった方がより良いのではないかという見立てで私は語っております。


 仮にロ長調が不自然というのであれば、もっと近親的な調関係にある調域を想起しても構わないとは思います。つまりロ長調の所を「ニ長調」に変えて見る、と。


 但し、譜例にも記しているように「ニ長調→ロ短調」という風にしている理由は、やはりプライマリなホ短調からの脈絡から齎してくれる音に対しての「応答」でありたいが為に、ここでもニ長調であり乍らDハーモニック・メジャー・スケールを想起していてニ長調での「ソラシド」の断片はDハーモニック・メジャーに任せて平行短調であるロ短調として見立てるやり方という提示なのです。


 プライマリな調域(=ホ短調)から見ればE音に対する導音(=D#音)がいつ生じてもおかしくない世界観でロ長調を見出した方が自然でもありますし、Black Catは突然対位法のアプローチが加わるワケですから、突飛ではないのは実はロ長調側の方だと私は思います。但し、発展させる人の意図にも依りますからこればかりは断言はしませんが、先の私の見立て(ロ長調側)の方が自然だと思います。


 さらに今回補足しておきたいコトは、先にも述べたように「応答」という言葉についてです。対位法においては他にも色んな呼び方があるのかもしれませんが、少なくとも私がこういう話題において「応答」と言っているのは次のようなモノだと考えてください。


 私のブログ上で対位法関連の話題になる時、九分九厘私は異なる調域が併存するタイプの対位法の方面を語っておりますが、「併存」とはいえど各々の調域にも共通する音があるワケで、例えばハ長調のG音とト長調のG音というのは性格は違えど共通する音です。「応答」と呼ぶのは異なる調域であろうとも共通する音の事を意味して呼んでいます。


 例えばペレアスの和声で上にBメジャー、したにCメジャーがあった時、応答している音はCがハ長調という調域前提のC調のロ音とBメジャーのルートが応答している、というコトを意味します。つまり、違いの調域が共通して持ち合える音が「応答」なのだという風に理解していただきたいワケです。


 そうして「応答」という意味が判った時、漸く「六極応答」という方向にハナシを進めることができるワケです。カンタンに言えば6音音階のオーギュメンテッド・スケールに準えた音並びに応答し合う、またはレンドヴァイ著のバルトークの作曲技法の中にも見られる「ドゥアモルの和声」での和音も脈絡として使えますし、この6極で応答し合う場所というのはそもそもフーゴー・リーマンが体系化しているものだという事を念頭に置けば充分な理解になるかと思います。


 追々私の作ったサンプルなどで、ハイパーな和声に対して厳しい所の「応答」で掛留させてさらに先鋭化させるものの、実は音はスンナリ聴こえる、みたいなモノを用意する予定ですので、まあその時でもハイパーな方面を語るのでお楽しみにしていただければな、と(笑)。