SSブログ

短二度への収斂 (2) [楽理]

扨て、完全四度音程を累積して行くと、その過程においてとても興味深いシーンを幾つも確認するコトができます。そーゆー事も確認しながら完全四度累積とやらを見ていくコトにしますが、私が今回述べる件はシェーンベルクの和声法で述べられている事を述べるワケではありませんが、四度音程を用いて半音階を得ようとする狙いは同じです。


前置きは扨て置き、四度が二度、という見方は以前にも語ったように、完全四度を3つ累乗させた四和音というのは、構成音をそれぞれ転回させると2組の長二度音程が出現するワケです。だから「二度」なのだという事ですね。因みに私は完全四度累積の四和音構造を「p4」と呼びますが、完全四度累積の三和音は「sus4」という風に呼ぶ事とします。しかしポピュラーな方でのsus4というのは仮に「ソ・ド・ファ」という音があった場合、ドを基準にsus4を成立させますが、完全四度累積の三和音の場合は本来の基準はsus4と呼ぶにしても「ソ」にあるという事だけ注意してもらえれば今後、左近治の語るコトで戸惑うコトは少なくなるかと思います。


m_01Cp4.jpg
とゆーワケで、先ずは譜例の方を確認してもらうコトとしましょうか。最初の譜例では最初の小節で完全四度累積の体で表していて、次の小節では2組の長二度音程として表す転回形として表しております。


なんで最初の完全四度累積の体は最低音がD音なのか!?と言いますと、ただ単にハ調域で変化記号が不要という単純な理由もあるんですが、音程の起源を辿ると、オクターヴが最初に完全五度/完全四度で分割された時のテトラコルドで生ずるF音-C音-G音という体は言うなればCsus4でもあります。その起源となるテトラコルドもハ調で言う所の下属音と属音は二度で保たれており、それらの音に群がるようにもうひとつ完全四度累積を「ハ調の域」で付け加えるとD音を付随する事がベターなワケです(F音の上方に調域を視野に入れずに完全四度累積をさせた場合、D音ではなくBb音が加わる)。

故に、こうした完全四度累積の体を取り扱う際、多くの理論書でもD音から積み上げた体で先ずは解説している事が多いと思います。


さらに、完全四度という音程は完全五度の次に協和的な音程なワケですが、上方倍音列とかち合わせた場合、下方に生ずる音は上方の音の完全五度音と共鳴するため、上方にある音が調的な重心を備えてしまうのであります。これはヒンデミットの音程根音を以てしても然りです。先の譜例で言えば最高音のF音が包含している完全五度音=C音に共鳴するのは、その完全四度下方に位置するC音であり、下方の音が和声的&調的な重心を得るよりも上方にある音が重心を強めるという事を意味します。


加えて、完全四度を更に累乗させようとした場合、調域をハ調という範囲で累積させようと憂慮すると、自ずと上方ではなく下方に完全四度を累積することが必然となります。完全四度累積はそれ自体(和声そのものに)にある種の調的な情緒を得ようとするならば、下方にその重心が存在し牽引力となるというコトは以前にもチラッと述べたことがありましたが、それは短和音(マイナー11th)のオミット形式として捉える場合と同様に解釈した事でありまして、また短和音の音程的構造は長三和音と違って構造そのものが上方と下方への構造関係が逆になる(鏡像形式となる)というのも述べましたね。これに関してはシェーンベルクの三度構造の和声の例を引き合いに出しつつ追々語ることとしますが、下方への牽引力というものは、調域を意識すればこそ生じるチカラなのだ、という風にご理解いただければな、と。


m_02minor3rd_withinCp4.jpg
で、完全四度累積を四和音のカタチでまずはとどめておきますと、転回すれば2組の二度音程を生じまして、それぞれのペアは「短三度」を生ずるワケです。短三度を完全四度累積の体としての「応答」として私が以前声高に語ったのは、脈絡のなさそうな短三度音程関係であっても完全四度累積を繰り返すことで実はそれほど多くの完全四度累積を用いずとも得られる音程関係である、という事を述べていたワケですね。


今回は短三度のコンバージョンとなる変換は無関係なので、p4の体を二度音程の集合という風に見てもらう事が重要なのでソチラ方面で話を進めていきますが、扨て、この四和音から更に「二度の集合」を推し進めていった場合、「5つ目の音」は何処に表れるのか!?という風にまず考えていただきたいのです。

「CとD」
「FとG」

という二度音程の組み合わせはそれぞれ完全四度で発生しているのだから、次はもしかすると

「GとA」に現れるのでしょうか?それとも
「BbとC」に現れるのでしょうか?


「Bb」が現れる時点でハ調の調域ではないので、二度音程の組み合わせは「GとA」の部分に発生するのでしょうか?


完全四度累積をさせた場合「CとF」に強固な軸は表れず(Cの調域なのに)、「DとG」の音が軸となって、その両側にブドウの房のように二度が群がるようになるんですなー。ですので「CとF」に房が付くようにはならないので、5つ目の音は単純にそれひとつが発生してからE音の発生を待つコトとなるワケです。


m_03_fusa.jpg
そうするとハ調の調域の内、6音が確定しました。さらに完全四度累積をハ調域で推し進めるとB音(=H音 ※譜例では青色で示しております)を呼び込むワケですが、H音を呼び込むコトでヘプタトニックとしての調的な重心は確定するワケでして、そうすると「ハ調=C」として推し進めていたにも関わらず、なぜか半音下へ牽引力を伴っていることをまず不思議な事象と捉えてもらいたいのです。


m_04minor2nd_lowerthan_root.jpg
それと同様に、B音(=H音)という7番目の音を得る前の6番目の音であるE音を得た時に、「長二度の集合体」は初めて別の方角で「短二度」を見るコトとなります。E音とF音で初めて半音を生じます。四和音状態の時では「短三度」を見出しただけだったのに。


完全四度累積の和音の体は当初は「長二度の集合」ではあるものの、それがいずれは半音階を得る時の半音(=短二度)の出会いはどこにあるのか?つまる所、長二度はどのように短二度へ「圧縮」されていくのか!?という所の興味を、私は「短二度への収斂」と述べているワケであります。


つまり、二度をトコトン推し進めると、長二度だったのが短二度へと凝縮する力が発生すると言いますか、つまりこの事象を半音階へのいざないと私は感じ取っているワケであります。


いたずらに半音を鏤めるのではなく、自身の歌心として半音階を得るための根拠と思っていただきたいんですな。なぜこういう表現をするのかというと、半音階の世界に目覚めていない、つまるところ耳がまだ習熟されていない人にはこういう説明をしないと返ってピンと来ないであろうという思いから敢えてこうして語っているワケですな。耳が肥えれば自ずと半音階や微分音の方へ耳は注力されていきます。しかし耳が習熟されていなくとも理論的には遭遇してしまう事があるワケで、そんな時に半音階を理解しようとしても文面程度では判っていても脳が処理していない事など往々にしてあるワケです。

あまりに未習熟な人であれば、「こんな感覚いつ手にすることができるんだろ?」程度に、あまりに乖離しすぎていて笑ってしまうコトすらあるかもしれません(笑)。乖離しすぎているなどと自分自身を愚弄する必要はないのです。音楽にある程度人並み以上に注力していればいつしか「厳しい音」への感覚は鋭敏になっていくモノです。


完全四度累積の四声体はそれをオクターヴ内で3組持ち合うコトで、結果的に「半音階」を得ます。それぞれの四声体は等しく「長三度」で隔たっているように思えますが、実は「四全音」という「増五度」という音程で持ち合っております。この「四全音」についてもアルノルト・シェーンベルク著の「和声法」では詳細に述べられていることなので一見の価値はとても高いことでありましょう。因みにこの増五度という音程と、それを転回した減四度という音程については今後とても重要なキーワードになってくるのでお忘れなく。