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非チャーチ・モードの世界に寄り添うと [楽理]




一般的なポピュラー音楽系であっても「一時的には」チャーチ・モードの世界の中では語ることのできないようなフレーズの「借用」があったりするものです。


場合によってはポップス関連ばかりでなく演歌とかの方が顕著だったりするかもしれません。まあしかし、器楽的な能力向上を志す多くの人が当初から演歌の道を目指す人というのは数少ないと思いますし(笑)、ましてや「俺ぁ演歌覚えたくて楽理学ぶんじゃねえ!」などと言われてしまうかもしれません。

まあ、演歌系であろうがそうでなかろうが、もっとディープな視点で楽理を突き詰めれば、非チャーチ・モードの世界観というのはとても「民族的」な旋律にもなるワケですね。

例えば、ツェッペリンやジミー・ペイジが好きな人や、ドラッグにハマってる人がラーガな雰囲気を欲することだってあるでしょうし、楽理を深く知ろうとすると避けては通れぬジャズ方面の理論だって、別にジャズ知りたくて学んでいるワケではなく、ロックにラーガな雰囲気を導入したくて会得しようとする人が居ても全くおかしくはないんですな。

ジミー・ペイジのフレージングが独特なのは、自身がラーガ系やら民族的な響きを好むと同時に、ギターのチューニングは「DADGAD」(=ダッドガッド)として知られるチューニングを導入することで、ギターにおける運指そのものからいわゆる体系的なフィンガリングによるフレーズを極力避けようとするための狙いもあって「異端な」フレーズを導入しようとする試みから端を発しているのではないかと思うワケですな。

ポール・マッカートニーが12弦ギターの主弦だけを取り除いて副弦だけの6弦ギターにしてコードを弾いたり。こうすると、3~6弦の副弦が通常のギターの3~6弦よりも1オクターヴ高くなるワケで、ギターのヴォイシングとしてはとても「突飛な」ヴォイシングを導入して変わったアンサンブルを構築できるのでありますな。

それが民族的な志向性を持っていないシーンであっても、体系的な部分に埋没したくはないという欲求の表れから生じるチャレンジだと思うワケですな。

民族的な旋律の多くは、音程の跳躍にも「クセ」がありますし、何よりも「音」として表現される時こそが最大の魅力なワケなので、いくら運指に少々手こずろうがその魅力を活かそうと導入するのでありますが、音階が持つ独特の「情緒」をまんま利用しただけだと、誰が作ってもその音階さえ導入すれば独特の情緒が得られるという悪循環にも陥りかねません。

ホールトーン・スケールだって普通に使ってしまえば、誰もが鉄腕アトムのイントロのようなフレージングにしかならないのと同じように、音階そのものが持つ性格をまんま利用するだけでは味気なくなってしまうのであります。

ところがジェントル・ジャイアントのケリー・ミネアー作曲の「Free Hand」では、あのような独特のアンサンブルを構築しつつ、ホールトーン・スケールを導入したり、リディアン・オーギュメンテッドの旋律すらも移ろわせていたりするんですな。まあ、これについてはいずれ詳しく語りますが(笑)。


いずれにしても、音階が持っている強固な性格とやらに埋没させない作曲家自身の強烈な個性によって生み出されている楽曲という所が素晴らしい部分であるワケで、楽理的側面を深く知ることなどなくとも、そういう面に常々敬意を払って音楽を耳にしていたいと思うばかりであります。


幾多の音階を数多く覚えて「スケール博士」になったとしても、それは知識としての情報量だけが蓄積されるだけで、音階が最初から有している独特の情緒に埋没することなく自身の感性で構築されるメロディメーカーになれるワケではありません(笑)。

私の披露するデモなどは、正直言えば音階そのものの性格をそのまま拝借しただけの音の羅列にしかすぎないようなモンでして(笑)、ここにミソ付けられても困るんですが、例えば直近のデモであるマイナー・メジャー7thの分散フレーズをマイナー・トライアドにスーパー・インポーズするアレだって、最大限に感じ取ってもらいたい情緒はFマイナー・トライアド上でのEマイナー・メジャー7thの分散フレーズの情緒なワケですな。

他の分散フレーズは、わざわざマイナー・メジャー7thを想起しなくても生まれる情感でもありますが、それらをオーギュメンテッドな音程関係にあることの重要性については見逃せない事実でもあり、こういう情緒を導入することで民族的な旋律にもより近く寄り添うことができるようになるワケであります。

言い換えれば、民族的なフレーズを知れば知るほど、和声的な側面においても独特の和声感を想起させながらいつの間にか寄り添っているということと密接な関わり合いがある、という事をあらためて提示したワケでありますな。

私が闇雲にメロディック・マイナーやらマイナー・メジャー7thやら非チャーチ・モードのダイアトニック・コードやジプシー系の音階を語っていたワケではなく、きちんと順序立てて説明してきているということはご理解願いたいな、と(笑)。

クルマ使ったり飛行機使ったりこそすれば、到着する時間を短縮することには貢献できますが、近所の地理すらも疎い状況に陥るほど「歩かない」状況になっては本末転倒でありまして、歩いて景観眺めてナンボなんだと、特に音楽の世界というのは音の一塊を垂直に聴くのではなく、時系列に飛び込んでくる音の連なりとやらに耳傾けるコトが多いワケですから、連なりの一つ一つを理解するにはじっくりと「歩く」ようにして捉えなければ理解できないこともあるワケですな。


先のマイナー・メジャー7th分散フレーズのスーパー・インポーズを例に取っても、弱起部分を除いた最初の1小節目の3拍目の16分音符4音。この情緒をFマイナー・トライアド上でトコトン理解していただくと、「独特の情緒」というものを理解しやすいのではないかと信じてやみません(笑)。

必ずしもこのテンポで、この音価で体得する必要はなく、延々と白玉でFマイナー・トライアド鳴らしてゆっくりとこういうフレージングをしながら、Fマイナーに乗っかった「そのフレーズ」とやらをじっくり味わっていただくと、左近治の形容する世界観というのはより深く理解していただけるのではないかと思うワケですな。それと同時に、先のデモにおけるブリッジ部などもゆっくりゆっくり弾いていただければより深く知っていただけるのではないかと。