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ジェフ・ベック・ライヴの「Scatterbrain」から学べるもの [ドラム]

扨て、前回はUKZについて多少辛辣な感想を述べた左近治でありましたが、あの手の出音を素直に受容できない照れ隠しみたいな所もあるのですが(笑)、四分半拍半(=半拍半の半分)という32分音符を巧みに操るドラミングなどはやはりバンドとして醍醐味の一つなのかもしれません。ただ、ややもすると飛び道具的でサーカス・バンドみたいになりかねませんが(笑)、ま、80年代後半の90125イエスやらABWHサウンドにミクスチャー系を足しているような所に一寸杜撰な印象を抱いてしまいまして(笑)。

リズムにおける細かな符割りの世界観とやらもイイんですが、それとは別方面におけるリズムの妙味みたいなモノを今回は、先のBS-Hiで放映されたジェフ・ベックのライヴから取り上げることにしようかな、と。

その題材は「Scatterbrain」なのでありますが、先のライヴは「Scatterbrain」と「A Day in the Life」が個人的には非常に満足出来た曲でありまして、ビートルズから好きな曲選べと言われたら真っ先に「Strawberry Fields Forever」と「A Day in the Life」を挙げてしまう左近治。エフェクトを多少かけているとはいえど、原音が全く判らなくなるようなエフェクトをかけているワケではないジェフのその表現力にノック・アウトされてしまった左近治なのでありますよ。

Scatterbrain_ronniescottsclub.jpg


まあ、そんなワケで先の「Scatterbrain」における特筆すべき点はというと、コレはもう後述の譜例を見ていただくしかありませんな。

※まーたやらかしちまいましたね、左近治は!譜例の元テンポに戻る時は9/8拍子の3小節の長休符上になっていますが、コレは間違いで、実際は「Vinnie's Drum Riff restart」という所から1拍3連の音価を8分音符3つに変更、という風になりますのでご注意くださいね。

因みにこのリズム譜は、先のロニー・スコッツ・クラブでのライヴのジェフの2回目のテーマのギター・ソロからという風に表記しておりますのでご注意くださいね、と。

それまでジェフは4拍子でソロを繰り広げているワケですが、キーボード・ソロになると9/8拍子なんですな。2回パラディドル・フレーズで続きますが、まあ、ココは序の口。で、2回目のテーマが終わって6/8拍子のブリッジの後に「テンポ・チェンジ」したようにキーボード・ソロが継続しますね。ココがポイントなんですな。

譜例からも判るように、それまでの8分音符×3つの音価が、テンポ・チェンジと思わせる所の1拍3連に置き換えているフェイク・ビートなんですな。

6/8拍子のブリッジがあるから判りやすいかもしれません。でも、どうやって戻るねん!?

で、フェイク・ビートに置き換えられた所も9/8拍子でカウントして2回繰り返して、ゆっくり目の6/8拍子になったらその後はルバートなのか!?と思いきや、きちんと拍を取っているんですな、コレが。

フェイクした所の最後の6/8拍子の所で四分音符を強烈に感じるか、または2拍9連をカウントするコトで戻りやすくなるんですな。

「2拍9連のタイム感なんてわかんねーよ!」

なんていうヒトも居るとは思うんですが、実は2拍9連のタイム感というのは非常に簡単でして、ジャズのワルツなんですな。シャッフルのワルツ。

以前にもリズム面での楽理の基本中の基本として語ったことがありますが、3拍子というのはテンポを速めると2拍子に聴こえてしまうんですな。誰でも6/8表記の「シャッフルに感じる」曲や12/8拍子表記は見たことがあると思うんですが、1拍3連の3拍子のテンポを速めて2小節でノる、というのがジャズのワルツなんですわ。

そうすることで6/8拍子or 12/8拍子表記における各拍(8分音符3つ)を4連符にしたり、とかそういう風にリズムを拡大させていくこともできるワケです。

で、今回のScatterbrainのフェイク・ビートの後で戻る時は2拍9連を感じていれば自然と元に戻るワケですな。非常によく出来ております。

ジェントル・ジャイアントの「Schooldays」にも似たフェイクを思い起こしてしまったワケでありますが、無論シーケンサーではないので多少のテンポの揺らぎはあるでしょうが、その辺は目くじら立てるワケにはいかんでしょうな(笑)。タルちゃんも「飲まれて」突っ込んでるような所はライヴ中にはありますし、その辺全部の吸収役はカリウタで、さらにジェフのゴリ押しでカリウタをも引っ張る!みたいな(笑)、ただ、その飲まれた所を瞬時に吸収している様が非常によく伝わるんですが、一般的な人からは気付かせないようにしている所が凄いと言いますか、ついつい目頭熱くなってしまう所なんですな。

この「吸収の速さ」というのが、その辺のミュージシャンではなかなか見られない敏感さがあるな、と。さすが百戦連覇の人たちだと痛感してしまうワケなんですな。

ジャズなどではbpm250超えとか普通にあるんですが、グイグイ行く演奏だと、読譜力が拙いとそれだけで呑まれてしまうコトも多々あります。また、他のパートの「予期せぬ」出音の迫力に自分が負けてしまって呑まれるケースとか、色々あるワケですね。そこをサポートしながら引っ張っているアンサンブルというのは、ロック系のジェフ・ベックにおいても実は結構持っているのだなぁとあらためて凄さを感じたワケですね。