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SCフィルターの応用 [ネタバレ]

扨て、今回はSCフィルターを減衰方向ではなく、ブースト方向に作用する効果について語るとします。

SCフィルター・ゲートがドラム類に効果的な理由は、残響部というのは低域が残りやすいので、不要な残響部分をカットするにはゲートで減衰させた方が効果的、あるいはSCコンプによって狙った帯域を抑え込むというやり方が功を奏するというワケで多用されるわけですね。

ではブースト方面だとどんな効果があるのかと、一例を挙げてみましょう。

いまや30年も昔の曲になってしまって隔世の感がありますが、YMOの「ファイヤークラッカー」が最たる例ですね。

この曲の各小節4拍目のスネアの音は「スカッ!」とフィルターが掛かった音になっていて効果的な音を得ているわけですが、これこそがサイドチェインの応用例でもありますね。

この曲のレコーディング時はクリックを伴って同期されているのかどうかは判りませんが、原理的には変拍子もなく4拍子一辺倒なのでステップシーケンス的発想で4拍目にトリガー信号が生きるようにして、フィルターを作用するようにすればいいワケですね。

但し「ファイヤークラッカー」の場合は設定されたフィルターの周波数はスタティックではなく、高い周波数へ動くのでスウィープします。まあ、ワウペダル踏み込んだようなモンと同じです(笑)。

スウィープ速度は100msec以内程度にして、スウィープ幅を設定周波数の倍、つまりオクターブ上で止まるように幅を制限させれば、「ファイヤークラッカー」の4拍目に用いられているスネアのフィルターと同様の効果が得られることになります。

4拍目の音でトリガーさせている、ということこそがサイドチェインの要領でもありまして、フィルターをSCトリガーさせるとこーゆー効果もあるんだぞ、というコトが言えるわけであります。

一方でこれまで語ってきたSCフィルター・ゲートの周波数はスタティック(固定)なので、音色そのものはスウィープしません(厳密に言えば増減量が多く、且つ元ソースの周波数スペクトラムのターゲット周辺で音の揺らぎが備わってしまっているソースだと、増減による山や谷のキワ部分とその曲率からスウィープ感を生むこともたま〜にあります)。

フィルターの曲率の特性というのは様々で、それこそブースト方向とカット方向では曲率が違う特性を持つフィルターやEQなどもありますし、曲率が及んでいる裾野に当たる作用幅は変わらなくとも、山(谷)の部分を絵と例えるなら、その絵の面積を変えないように変化するタイプの曲率やら、色々フィルターの特性はあって奥深いものであります。オーバーシュートしたりとか。

Logic Pro 8のEQの拡張パラメータはこの辺りが実に変化に富んでいて面白いものであります。まあDPの4.5以降のMasterWorks EQもイイEQではありますが、今となってはLogicの方が私は好きです(笑)。

私がReaktorを初めて手にした時試したのが、実はこのSCフィルター動作の応用だったので当時を思えば懐かしさもあるってぇモンです。コンプもゲートもそうですが、Kneeカーブの曲率に手が加えてあるようなモノ、特にKneeカーブの曲率がマイナス方向に作用しているようなカーブというのは実にエグみのあるオイシイ効果が得られるので、この辺りにハマるともう病み付きになってしまいます(笑)。SV-719のゲートの特性もMIOの+DSPのようにひとクセもふたクセもあるので、色々お試しになってみるとよろしいのではないかと思います。