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Bob Is Not Your Uncle - ウォルター・ベッカー Circus Money Analysis - [スティーリー・ダン]

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執拗なまでのベースのリフのペダル。もちろんウワモノのコードは動いておりますけどね。レゲエっぽいビートを全面に押し出しているのはこの曲だけではないんですが、ポリスやらスペシャルズやらが好きな人にもスンナリ聴けるのではないかと。

所々毒味を織り交ぜているんですが、ギタリストじゃないとなかなか耳につかないほどさりげないかもしれませんね。

それにしても曲ド頭のスネアのオカズにふんだんに処理したフィルター施したタップディレイの音が実にイナタい(笑)。ディレイ音なんか3kHzくらいでフィルタリングしてんじゃねーか!?と思わせるほど。ただ、こーゆータップディレイ(エコー)を演出する時は低域が飽和してくるんでディレイ音の低域カットはマストですね。あんまりカットしすぎるのもアレなんですが(笑)。

まあ、お風呂場エコーのようにしないポインツというか常套手段というか(笑)。演奏ぼやかすためにリバーブたっぷり好んで使うどこかの演奏者のそれとは次元が違うというか(笑)。

他の曲と比較して、アルバム前半の曲はギターの音像が少々引っ込ませているのは意図しているんでしょう。その引っ込む音とは別にスネアのリムショットやらベードラの倍音がやたらと引き立つ。正直、「Negative Girl」のカリウタのドラムよりも好きな音像ですね。

コレくらいアンサンブルが研ぎ澄まされていると、概ねハットの強い時にスネアやら他の太鼓類のカブリやらオーバーヘッドの音の「引き連れ」が判って、ゲートのリリースタイムとかが判断しやすいものですが、この曲はそれが読めないほど綿密に処理されていると思います。

ただ、ハットのオープン時に「空気の抜け」による回折の音が聴けるので、この音でEQ具合やらカブリ対策が「読める」んですな。普通に楽曲耳にしている人はこーゆー所あんまり聴かないかもしれませんが。まあ、アンサンブルが少ないほどミックス的な部分で読めることは多いかな、と。

また、この曲だけに限らないんですが、左右に音像が振れる(いわゆるトレモロやら)系のソースに対してはPan Lawで処理しているようです。この曲になるとアンサンブルがシンプルなので、そういった細かい部分を聴き取りやすいと思います。

また、この曲のキックはそれまでの曲とは違って若干低域を潰し気味の(コンプ強め)音とカブリ音(オーバーヘッド含)のミックス具合が心地良いです。

この曲に限らず、キックにサウンドホールを開けているタイプの音は、スピーカーで言えばバスレフの「抜けてくる」風圧の音というのが概ね88~210Hzくらいに推移します。ピンポイントでその大域間で特定の部分音が聴こえるというワケではなく、その帯域間に風切音が一様に分布しているようなモンです。これにはもちろんサウンドホールの物理的な大きさによっても変わりますが、一般的には110~170Hz辺りを狭いQ幅で狙ってカットしてやると、その違いが判ると思います。

で、この曲はこの辺りの音をそれほどカットしていないんですな。ただ、コンプで直接音を強めにかけると、聴感上では高域成分が尖ったように残ります。この残り物をEQで整えながらカブリの音やらオーバーヘッドで混ぜて、実際には位相が異なるため難しい処理かもしれませんが、ギラつきを無くしつつスッキリと聴かせるというミックスだというのが顕著に現れています。

この手の音の場合、リムショット(つまりスネア)の音が現れる時に他のカブリ音を引き連れてきやすいものなんですが、それが無い。この辺りが実に巧い処理だなと感じるわけであります。ハットとスネアのマイキングはかなり勉強になります。