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着うたにおける「油」の発想 [サウンド解析]

左近治の扱うショップでの着うた品目が増えてきたのもあるとは思いますが、この夏くらいから俄かに着うたの需要は結構な成長曲線を描いているであります。おそらくは利用者がパケット通信費に二の足を踏んでしまうというような従来抱えていた懸案が、利用者の間での心理は緩和され、対応端末が普及しているものだと思われます。

ダウンロード数推移はもとより、利用携帯端末も把握できるのでこのような現象は番号ポータビリティサービス開始後さらに拡大するのではないかとにらんでおります。

まあ、左近治が感じているということはどこのどなたも制作サイドは同じことを考えていると思うので、着うたでのクオリティやアイデアも従来にも増して訴求力のあるモノにしていかないと淘汰されてしまいかねないので(笑)、留意しなくてはなりませんな。とはいえ今までのマイペースぶりで充分だろーと楽観的な左近治であります。

着うたにシフトしようとも、再生可能な端末では実際には低ビットレート品質でしか再生できない端末も多く、この辺りの底上げと端末買い替えがキモとなると思われます。

低ビットレートの場合、特に制作側で問題になるのがプリエコー対策。プリエコーとは何ぞや?と思う人がいると思いますが、簡単に説明を。

原音よりも音の品質をどうにかこうにか人間の耳を騙しながら品質を落とさないとデータ容量を下げることができません。で、まあそういう品質を落とさざるを得ないのは避けられないんですが、あまりに低いビットレートだと音質よりも容量低下ありきの設計がほどこしてあるんで、立ち上がりの早い音の品質は特に影響を受けやすいのであります。

立ち上がりの早い音が、ある大きな音に埋もれていたとします。で、耳に付く時はそれなりの音量や周波数分布になっているため、この音をアピールする時というのは、水中に潜っていた音を突然水の中から現れてくるようなモノだと考えてみてください。そうすると立ち上がりが早いことが先決なんで、水しぶきが出来てしまいますね。この水しぶきも当然のように音となって(非常に短い時間の雑音のようなもの)聴こえてしまうようになるわけです。これがプリエコーだと思ってもらえばよいかと。

非常に厳密なレベルで言えば、高ビットレートであっても音楽ソースによっては左右に音のイメージが飛び交ったりするような時だと再現性が実は違っていたりすることもあります。ほとんどは気が付かないと思うんですけどね。

オフセット印刷の基本。これは4色のインクしか使っていません。それぞれのインクは点の集まりですが、この集まり具合を制御しているのはもちろん機械ではあるんですが、実態は「油」を制御しているんですね。

油が水をはじくのと同じように、油をコントロールしているのがオフセット印刷(最もポピュラー)の原理なワケです。

音楽も左右が別々のインクのようなモノでして、これを制御する油の役割のようなものがあるんです。これが「位相」です。

で、位相の差を制御していたりする顕著な例がFM放送。一旦左右のインクを混ぜてしまっても、位相という魔法の油を使って分離させたりするんですな。MP3やAACなどに代表される着うたに用いられている音楽は、この「油」を利用しているんです。

油の構造は実は各社色々違っていて、この分離具合が音楽ソースによっては分離具合が強くなく、混ざってしまったままになってしまうケースがたまにあるわけです。

着うたを制作する場合、どうしても油の構造でそれを回避できないこともありますが、私の場合はそこに元のソースの位相をあらかじめ弄ってしまうのです。こうして出来るだけおかしくならないように編集しています。

これがCDやレコード音源となるとマスター(原盤)を弄ってしまうことになるので、それらを取り扱っていない着うただからこそ元の方に手軽に手を加えてリリースできるのであります。

油の使い方がキモなのが着うたなワケですよ、ハイ。