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非和声音 エシャペとノータ・カンビアータ [楽理]

 今回は非和声音に括られる「エシャペ échappée」と「ノータ・カンビアータ」について語っておこうと思います。これらの非和声音の取扱いは非常に重要であるのですが、ジャズ/ポピュラー音楽界隈に於てこれらの非和声音を詳らかに語られる事は先ず無いでありましょう。通俗的な音楽を規準に語られる事のない題材だと嘆息混じりに読むのを止めてしまう方も居られるかとは思うのですが、私のブログで取り上げる以上は西洋音楽界隈だけの見渡しで語る事はないのでお付き合い願いたいと思います。

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ディミニッシュ系和音から見るジョージ・ベンソンの「Mimosa」 [楽理]

 今回はジョージ・ベンソンの楽曲「Mimosa」を取り上げる事にしますが、YouTubeには既に「Mimosa」のイントロを挙げているのでお判りの方もご存知かと思います。イントロ部を楽理的に縷述する事になりますが、その前に述べておきたい事が幾つかありますので、先ずは「Mimosa」の別ヴァージョンについて語る事に。

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長短混淆 [楽理]

 今回の記事タイトルは音楽的な意味に於ける「長・短」の世界観が混淆とする世界観の事を表わす物であります。長調と短調と言えば良いでしょうか。

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『関ジャム 完全燃SHOW』について [楽理]

 テレ朝系列で毎週日曜23時台に放送されている『関ジャム 完全燃SHOW』という番組は多くの放送回にて音楽の楽理的な側面を掘り下げているのが特徴的な所であり、そうした側面を音楽的素養の浅い視聴者が目にしても理解される様に作り上げる制作サイドの並々ならぬ努力には相当な労劬を伴うであろうと思い乍ら視聴している私であります。

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マイケル・ブレッカーの四分音運指について(2) [楽理]

 故マイケル・ブレッカーが執るインプロヴィゼーションに於ては頻繁に四分音(=クォーター・トーン)を伴わせるフラジオ奏法が顕著であるのを語るのは今回が初めてではなく、以前にもマイク・マイニエリでの「I'm Sorry」での実例やドナルド・フェイゲンのソロ・アルバム『ナイトフライ』収録の「Maxine」でのソロでも聴ける事を述べて来たのであらためて参考にしてもらいたい所であります。

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メトリック・ストラクチャー [楽理]

 今回のブログ記事タイトルを訳すと「拍節構造」という意味であります。小節線や拍子に括られる事のない特定のリズムの断片でもあります。4/4拍子にて8ビートを3:3:2のパルス構造でリズムを刻む事は多いと思いますが、小節線や拍子構造(=この場合は4拍子)の平滑なパルス構造とは異なる構造が先の3:3:2という拍節構造となっている訳です。

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時効警察のテーマに見る短増和音と和声的対位法のアイデア [楽理]

 2019年の正月を終えて飛び込んで来たビッグニュースのひとつに挙げる事の出来るのがドラマ『時効警察』が復活との報せ。

 警察ドラマを謳うも、血生臭い流血シーンも無ければ人命が失われる事も無いシュールでコミカルな警察の描写。だからといって血も涙もないという人情の欠片もないという訳ではなく、事件を俯瞰する事で淡々と分析されるそれにやたらとユルユルとして描写に挟まれる小ネタの配合が実に素晴らしいドラマだった訳でありますね。

 まあ、こんな感想など私が述べる必要なども無いほどに他のメディアでも書かれている感想に類する物でありましょうが、何れにしても譱い報せに心躍らせ乍らテーマ曲を振り返ってみると、なかなか興味深い事実が忍ばされている訳で、そうした興味深い所を緩々と語って参りましょうか。

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微分音表記におすすめのフリー記譜フォントEkmelosがバージョン2.3に [楽理]

 2019年初となるブログ記事投稿がよもや2018年の話題になろうとは思いもよりませんでしたが、いつもの冗長な記事とはメリハリを付ける意味で、前年(2018年)師走の音楽方面の話題に触れる事ができればと思い立ち、今回は微分音を表現するにあたりうってつけのフリー・フォントのひとつであるEkmelosフォントをレコメンドする事に。


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移調ですと!? 云うほど簡単ではありません [楽理]

 私はかなりの「原調」主義者であります。原理主義者という訳ではありませんけれどもね(笑)。まあなにせ、カラオケで唄うとなればピッチ・コントロールは手放せなくなる物です。勿論相対音感もきちんと身に付けてはいるので、曲がどのようにトランスポーズ(移調)しようとも追随して唄う事は出来るのですが、原調と異なるキーで唄うというのは最早別の曲の情感で唄っている感じとしてしか堪能できない様な感覚に陥るのであります。


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敷衍され迆《ゆ》く微分音 [楽理]

 12等分平均律の世界に於て一定以上の半音階的音楽社会に馴染んで来た頃、嘗て耳にしたジャコ・パストリアスの「トレイシーの肖像」の中盤に用いられる第11次倍音の捉え方に変化が起きた事を今猶思い返す事があります。

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日野皓正の楽曲 [Newborn Swing] に見る調性プラン=Tonal Plot [楽理]

 今回の楽曲解説にて取り上げる曲は1983年に発売された日野皓正のアルバム『New York Times』に収録される「Newborn Swing」という曲でありまして、私にとってこの曲の位置付けというのは《死して猶天国に持って行きたい》楽曲のひとつである物なので個人的な思い入れは大変強い曲であります。とはいえ楽曲解説に於て単に私の主観だけを鏤めるだけでは本曲の凄さは伝わりにくいと思うので、数多ある楽曲の中でも何故こうした曲が普遍的で在り続けられるのか!? という側面を語る事が出来れば好い哉と思っております。
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クロマティシズムが齎す「斥力」について [楽理]

 音楽に於て調的(調性的)世界観は、和声の発展に伴いその力は徐々に弱まって行った物であります。調的な世界が多くの転調を伴って粉飾をされ、そうした借用的世界観が更なる和声の発展を導いたという歴史がそうさせたのであります。


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「Miles Beyond」から垣間見えるセシル・シャープとアニー・ギルクリストの旋法論 [楽理]

 今回は、マハヴィシュヌ・オーケストラの1stアルバム『Birds of Fire(邦題:火の鳥)』収録の「Miles Beyond」のブルース進行を語ろうと思います。YouTubeの方では既に譜例動画をアップロードしているのでお判りかと思いますが、今回作ったデモは本曲の前奏部分の拔萃となる物で、特に顕著なのは、それがヤン・ハマーに依るブルース進行を伴うローズのプレイであるという点であります。
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承服しかねる「分数aug」という表現と三全音代理の真実との間 [楽理]

 ネットを徘徊していると往々にして承服しかねる呼称の類を目にする物であり、またそれが皮相的理解に及ぶ人々の間で解りやすい類の言葉として「バズって」いる事である物です。


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微分音オーバーシュート [楽理]

 今回は、微分音とやらを仰々しく取り上げるのではなく、微分音とは認識してはいない(であろう)、許容範囲となる様な歌の節回しに於ける「装飾的」な衒いとなる側面を取り上げていきたいと思います。


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ザ・セクション3rdアルバム『Fork It Over』収録「L. A. Changes」解説 [楽理]

 ザ・セクションの最後のアルバムとなる『Fork It Over』は現在において最後の未リマスター作品として旧版がCD発売されている物で、近年リマスタリングされた1stと2ndアルバム『Forward Motion』が旧盤CDと比較しても音質向上が顕著に表れている事を鑑みれば少々残念な所であります。

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 『Fork It Over』が最初にCD化された時は、東芝EMI製造のVIVID発売という品番:VSCD-531というプラケース仕様で発売され、その後やはりVIVIDから紙ジャケ仕様:VSCD-531(P)として再発されたものの、これはリマスターではないので旧盤と同じである訳であります。因みに品番が示す "(P)" は、ペーパー(紙ジャケ)を意味している物でありましょう。

 紙ジャケ仕様で称賛される部分は、当時のレコードを準えてインナースリーヴ(紙製のレコード保存用の袋状の物)が復刻となっており、実はこのインナースリーヴに、収録曲の「Bad Shoes」の歌詞が印刷されているというのが素晴らしい点であると言えるのであります。その大きな理由のひとつとして挙げられるのは他ならぬ、ジェイムス・テイラーが本曲に参加してセクションのメンバー達と合唱しているからなのであります。プラケースの方では歌詞もインナースリーヴ部の印刷も無いので、こうした細かな配慮は感謝の意を表したい所でありましょう。


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クロマティシズムへの欲求 [楽理]

 半音階主義。今回扱うクロマティシズムに関しては、嘗てのセリエル(十二音技法)のそれとは異なる、調性を拡大する事で用いられる半音階的変化音の側を取扱います。嘗てのトゥイレ/ルイ共著『和声学』(山根銀二/渡鏡子訳)では、こうした世界観を「半音階的全音階」という風に自著の後半部分にて取扱っている物です。

 音楽的素養が高まると全音階という7つの音を容易く使える事に飽き足らず、次第に人々は基となる7音以外の音への欲求を深めて行く物でもあります。

 その「基」となる7音列を「音組織」呼ぶ訳ですが、この音組織は通常は長調と短調という風にして区別して用いられている物です。勿論機能和声音楽のみならず旋法音楽に於ても基となる音組織が準備される物です。

 体系をご存知の方ならば「ドレミファソラシ」という長音階の音組織を短調(平行短調)では「ラシドレミファソ」という音組織であるに過ぎないのである事は先刻ご承知でありましょう。加えて短調は、その音組織を適宜ムシカ・フィクタと呼ばれる可動的変化音を用いて来ます。平行長調との音組織のままでは居られない状況は可動的な半音の変化を生ずる。すると、短調を曲全体で俯瞰した場合、長調よりも遥かに半音の臨時可動的変化が起こる可能性が高い事は自明であります。

 ディーター・デ・ラ・モッテはこうした調性が備える音組織を「材料音」と呼んだのでありましたが、前述の様に長調と短調の音組織では、材料音の数が短調の可動的変化音の存在があるので異なる事になります。それは長調よりも材料と成る音の数が増えるという事でもあるのです。


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エッティンゲンに見るDクレフ [楽理]

 唐突ですが、今回はエッティンゲンが用いた「Dクレフ」について語る事に。D-clef すなわちニ音記号とでも訳せば良いでしょうか。Arthur Joachim v. Oettingenに依る1905年の論文 'Das duale System der Harmonie in Annalen der Naturphilosophie' 4 - 126頁にて用いられるのでありますが、このDクレフが意図するのは、通常の五線譜がその第3線を中心に採る事で、上下に示される音高が視覚的に対称構造を容易に得られるのが利点とする物であります。嘗てTwitterにて呟いた事もあるのであらためてご参照いただければ幸いです。

Das duale System der Harmonie(和声二元論 関連論文) / Arthur Joachim von Oettingen






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ミック・カーンの微分音演奏表記に伴う諸問題 [楽理]

 茲最近は書評に伴う微分音の話題もあった事に伴いまして、今回はJAPANのベーシスト、ミック・カーン(Mick Karn)の演奏例について語る事に。


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小方厚著『音律と音階の科学』新装版(講談社ブルーバックス)を読んで [楽理]

 音楽書関連の大半は隈なく目を通す私ですが意外にもこうした新書界隈は行き届かない物です。否、この経験があったからこそ今では新書界隈にも目を光らせる様に心掛ける様になったのは小方厚著『音律と音階の科学』の存在があったからこそとも言えるのでありまして、今回〈新装版〉が刊行される事を知ったのもSYZYGYSの冷水ひとみさんがTwitterにて紹介ツイートをしておられた事できっかけとなったのでありました。
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金曜★ロンドンハーツと欽ちゃんの仮装大賞にみる微分音《音効》考察 [楽理]

 今回は話題を変えて《音効》という方面の話題を語る事に。「音効」=SE というのは映画・映像放送・演劇などの界隈では能く用いられる言葉で、「音響効果」という仕事を示す事でありますが、辞書に載る様な語句と言えるまでは瀰漫していないのではないかと思います。ハリウッドでもこうした音効の仕事は専門業として存在しますし、元を辿ればトーキー音楽、歌劇に遡る事が出来るのではないかと思います。


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ディミニッシュト・メジャー7thが見せて呉れるクロマティシズムの脈 [楽理]

 扨て、前回はディミニッシュト・メジャー7thから類推するオルタード・ドミナント7thコードを「多義的」に解釈した上で、多くの音脈の可能性を呼び込むという例を提示したのでありますが、ドミナント7thコードを「多義的」に解釈するというのは抑もどういう意味があるのか!? という側面を語る事にしましょう。


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The Section 2ndアルバム収録「A Kind of Albatross」(クレイグ・ダーギー作)について [楽理]

 今回は、セクションの2ndアルバム収録のクレイグ・ダーギー作「A Kind of Albatross」について語る事に。私が今回制作したYouTubeにアップしている譜例動画はアンサンブルを変えたり尺を縮めたりしておりますが、大枠のハーモニーについては変えておりません。私の勝手な臆断に依ってコード付けしている訳ではないのでその辺りを念頭に置いていただけると助かります。
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サントリー・オールドCM「人間みな兄弟」にみるブルー五度 [楽理]

Cyrus Mosley


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 ブルースを語るに際し、先のブログ記事にも取り上げた「♭Ⅵ7」という部分転調を意味するドミナント7thコードを語った訳でもありますが、今回はあらためて老若男女広く人口に膾炙していると思われる曲を挙げたくなり、唐突乍らもYouTubeの方にてサントリー・オールドのCMで有名な「人間みな兄弟」を取り上げてみたのであります。




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短調が齎した多義的な音楽観に伴うドミナント機能の暈滃 [楽理]

 前回は上屬音と下属音という事も語った事もあり、この機会に「ドミナント」とやらを今一度詳らかに語る事にします。私のブログをお読みいただければ既にお判りいただいているかと思いますが、「ドミナント(D)→トニック(T)」という所謂ドミナント・モーションに於ける不協和音→協和音への「解決」という進行感というそれを、私は能く「卑近」と表現しております。この表現には別段悪意はありません。調性感としての予見が甚だ楽な見通しとなる音楽的状況が、それこそ映画のラストシーンを冒頭から予見可能である様な物が音楽で表現されるとしたら、私にとってそれは苦痛でしかありません。


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セクションの楽曲に非凡な例を学ぶ──Same Old Same Old── [楽理]

「セクション」とはThe Sectionというジェイムス・テイラーのバックバンドを務めるメンバー等が結成したバンドであり、通常は不定冠詞を省いて「セクション」という風に界隈では称される、クロスオーバーの先駆けとも言えるバンドであります。ビートルズやイーグルスやシカゴとかも「ザ」や「ジ」など冠される事は非常に少ない事かと思います。今回「セクション」が意味するのはバンド名の事なのでありまして、彼等の1stアルバムに収録される「Same Old Same Old」の非凡な側面を語っていこうかと思います。
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ウェイン・ショーターの音楽観を見抜く [楽理]

 2018年最初のブログ記事となる今回は、ウェイン・ショーターの楽曲「Shere Khan, The Tiger」の冒頭部分を詳らかに語る事に。
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Calyx / ハットフィールド&ザ・ノース 楽曲解説 [楽理]

 扨て、先日私はYouTubeの方で「Calyx」の譜例動画をアップしたのでありまして、折角の機会なので楽理的な解説をほんの数小節ではありますがあらためて述べておこうと思い、今回はカンタベリー・ミュージック界の雄ハットフィールド&ザ・ノースの名曲のひとつ「Calyx」を語る事に。
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パット・メセニー関連曲解説 [楽理]

 1990年初頭。そのひと月前の80年代最後の師走の始まりは関東に台風接近の時だったかと思いますが、いかんせん古い記憶となるのでもしかすると年月が前後している可能性があるかと思いますが、いずれにしても「平成」という新たな時代を迎える事となった時代。なんとなく新たな時代の到来を予感させる物はありました。私自身は折からのスキー・ブームに乗ったクチで、この頃はまだツナギのウェアが生き残っていた時代でもありまして(嗤)、今を思えば能くもまあ、臆面もなくそんなウェアをゲレンデで着用していた物です。映画『私をスキーに連れてって』の出演者の方々のウェアもツナギですので、スキーに縁の無い方への豆知識として心の片隅にでも置いて遣って下さい。そんな時期に発売されたCDに収録されたパット・メセニーの楽曲の解説です。


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CDレビュー 『Cardington』/ Lifesigns [楽理]

1. N

 B♭sus4コード上にて7/16拍子 [2+2+3] という拍節の基本構造は、「ライトモチーフ」たる示唆を伴う 'implied structure' として展開されていく様になります。B♭sus4というコードに於ても、四度の響きの直後に長三度音の隣接音を伴わせたリニアなラインが附与されている為サウンド的には「B♭add4」的な音として耳に届きます。それはまるで、目映い光を直視できぬ時に手で目を覆い乍ら視線を送るという状況を感じ取れるかの様です。


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