SSブログ

Finaleトレモロ表記備忘録 [おバカ]

 先日、2012年衆院選後に私のフォロワーさんとの間で「日本をトレモロす」というギャグのやり取りがありまして、私のつい調子に乗って譜例まで用意してしまった事があったのですが、私自身が演奏する音楽のタイプではトレモロ表記をする事が無く、そういう依頼も来る事なども無い為、譜面上におけるトレモロ表記というのはとても不慣れなモノであったのです。


 Finaleというソフトはとても独特です。譜面の見たままに音を再現するという側面も兼ね揃えているのでもありますが、大半のケースは、音などどうでもイイから譜面としての見てくれを重要視する事で見てくれ部分の編集に柔軟性を持たせよ!という考えが殆どのFinaleオーナーが抱えていらっしゃるキモチだと思います。

 Finaleに於ける「トレモロ表記」というのは大別してふたつの機能がありまして、Finaleに一任させた「簡易表記」か、現代の主流に則した表記で小難しい編集をするか!?というやり方に分類させる事ができまして、12/16拍子という拍子構造に於いて主流の表記に倣うと次の様なトレモロ表記が適切なのでありますね。
04.jpg


 先日の衆院選後に私が施したものは前者の簡易トレモロ表記でありまして、唯単にやっつけ仕事的に簡易トレモロ表記を選択したのではなく、Finale内での整合性を保ち乍らトレモロ表記を進める事がとても難しくなってしまう為、簡易トレモロ表記を選択せざるを得なかった舞台裏を今回語ってみようと思ったワケでありまして、その難儀する側面とFinaleというソフトの独特な仕様に伴う「クセ」とやらを知っておいていただくのも宜しいかな、と思いまして、私自身久方ぶりにFinaleの編集に頭を痛めたモノでもあったので備忘録程度にこうしたブログにするのも宜しいかな、と思いお付き合いいただこうかな、と。
00.jpg


 先のギャグに用いた譜例は下記の通りなのですが、ポイントとしては・・・??


◇12/16拍子は2012年12月16日衆院選投票日とかけたモノ
◇A音とB♭音は、よくあるドイツ語読み音名「アー」と「ベー」=安倍とかけたモノ
◇ディミヌエンド等のアーティキュレーションの類はそのまんまの意味


 という風に用いているのでありますが、拍子を12/16拍子とした所がその後のトレモロ表記を難しくしてしまった所でもあるのです。

 Finaleでは、五線上の表記の拍子と実際の符割とは異なる「見てくれ」だけにこだわった拍子に設定する事は可能です。例えば1小節内に4/4拍子の符割が入っておかしくない所に拍子は12/16拍子として表記させる、とか。


 抑も12/16拍子というのは、全体の音価の総数としては3/4拍子と同じではありますが、16分音符×3が1拍として機能する為の拍子構造なので、付点8分の括りが1拍として表記される類の拍子なのであります。つまり16分音符×3の4拍子。このリズムに等しい拍節感は3連符(=シャッフル)表記が同様なのでありますが、通常ポピュラー音楽に於いては12/16拍子よりもシャッフル表記の方が馴染みが深いと思います。
00.jpg


 音価の総数が3/4拍子に等しいのでありますから、細かく定義すると3拍子の全音符は付点二分音符と同様という理解なのですが、付点二分音符で表記する事が殆どだと思います。すると、12/16拍子において「白玉」を表現する際は、4つの付点8分をタイで連結させるよりも(これはある意味親切)付点二分音符で表すコトとなるワケでして、1小節内を目一杯使ったA音とB♭音のトレモロというのは、「付点二分音符をベースとした表記」にせざるを得なくなるワケでして、拍子構造が4/4拍子のデフォルトのまま「見てくれ」だけを12/16拍子としてしまうと、付点二分音符として白玉が反映されなくなり、4拍子を埋め尽くすための他の休符を非表示にしたりしても小節内のスペーシングが巧く揃わなかったりするので、付点二分音符を再現するには拍子の表記をきちんと遵守しなくてはならなくなるのです。


 トレモロ表記とは無関係に、シャッフル表記よりも12/16拍子にするメリットとしては次の様な例も挙げられるのですがその例として、通常3連表記かスウィング表記を併記してシャッフルの音符は表現されるのでありますが、例えば2拍3連が強拍から開始されている場合は問題ありませんが、弱拍から2拍3連が開始されている時の「2拍3連」という音符表記が齎す「拍節感」というのは少々奇を衒うかのように映るモノでありまして、リズム感がスポイルされてしまうかのような印象を受けたりする事があるのです(各人の読譜能力に依りますが)。
05_1.jpg


05_2.jpg




 次の譜例の最初の小節がその弱拍開始の2拍3連でして、この「スポイル感」というのは、次の小節の様に2拍3連をシンコペーションで表記した方が見やすく(リズムに乗りやすく)なっているのはお判りだと思います。つまり、弱拍から開始した時の2拍3連の拍節感のスポイル感というのはこういうシーンを表現したモノでして、奏者としてはどちらの表記に於いてもニュアンスが変わるコトなく順応しなくてはならない、読譜の各人のクセを無くした上で読譜を会得しなくてはならないのですが、弱拍から2拍3連というのは本当は奏者の事を思えば少々意地の悪い表記なのであります(笑)。
06.jpg


 これと同様の演出を12/16拍子で再現するのが次の譜例でして、やはり2小節目の様にシンコペーションとしてタイで連結させた方が拍節感を得やすいのは明らかですが、この譜例の1小節目の弱拍からの連桁の連結でも、先の弱拍からの2拍3連よりかは拍節感を得やすい表記だと思います。
07.jpg

 つまり、3連符をベースとする表記は時として拍節感を逸してしまうモノにもなりかねないので、その辺りを考慮した時12/16拍子というハチロク系の表記も視野に入れておくと楽譜の読み方のレパートリーは増えるのでありまして、クセを軽減したりという方面にも役立つモノものであります。曲中で拍子変更が多い曲などは五線譜内に拍子の表記を置かずに五線譜の上にはみ出して表記する事がある様に、それは「拍節感」をなるべく阻害せずに譜読みに注力する配慮から行われたりするモノです。奏者に依っては変拍子に不慣れな人も居るため、変拍子というモノに対して偏ったクセを逸するために小節線を排除して譜読みに徹して読んでもらうだけで対応できる事もあったりします。


 という事もシャッフルと12/16拍子という双方の側面としてこの際知っておいていただけると有り難いのでありますが、今回の12/16拍子というのは、そういう拍節感とやらは全く無視していただいて構わない、衆院選投票日の当てこすりなワケですから(笑)、この後はFinale独特の仕様について語るコトとなりますのでよろしくお願いします。


 Finaleに於いて12/16拍子を付点8分の音価を1拍ずつ連桁が繋がれたりと認識させるには、拍子記号の設定での「混合拍子」を設定する事となり、次の通りとなります。
01_1.jpg

 拍子記号ペインの上部にある「混合拍子」を開いて先ずは「1小節内の拍数」に「3+3+3+3」と入力して、「拍の音符の種類」で「16」を入力します。すると先の例の様に拍子記号が「3+3+3+3/16拍子」と表記されてしまいますので、この表記を「12/16」として表記するには、ペイン下の「表示専用に別の拍子記号を使う」にチェックを入れて12/16という風にする必要があります。
01_2.jpg

 先ほど、4/4拍子であろうとも、見てくれだけを別の拍子に設定できると言ったのは、この「表示専用に別の拍子記号を使う」という機能を使えば反映される事なのですが、混合拍子に於いて連桁を一定の括りで繋げたい場合は、先の通り混合拍子にて設定する必要があるワケですね。


 トレモロ表記をするとなると、今度は全音符が付点2分音符状態となっている12/16拍子ですからココが大変です。トレモロ表記を先の私の簡易トレモロ表記としてのプラグインを使えば用は済むモノの、現代の主流表記に倣った場合、例えばトレモロそのものが32分音符に匹敵する音価である場合、8分の連桁が付点2分音符で連結し、16&32分の連桁の両端が分断される表記にする必要があるのですが、これは次の様に設定します。

02.jpg

 トレモロを「あたかも2連符」として設定するので、「付点32分音符2つを二分音符2つ分に入れる」として設定する事になります。そうすると付点32分音符の二つが三本線の連桁として括られ「二分音符×2つの音価」に収まる様に楽譜にスペーシングされるのですが、先ほども申した様に12/16拍子の音価=3/4拍子ですので、本来なら全音符2個分や付点2分音符に入れる、と設定しないと巧く反映されないのではないか!?と思われるでしょうが、Finaleにはそれが実装されていないので、「二分音符2つ分に入れる」と設定して、本来なら音価は余分に飛び越えているのですが、見てくれを保つ為にこのように設定しなくてはならないのです。

 そこで今度は付点32分音符の符頭を「白玉」に変更して、その後16&32分の符鉤(=連桁)のみを左右それぞれ伸縮させて「あたかも」トレモロを表記させるのでありますね。
03.jpg

 私はSibeliusを使った事がないのでよく判りませんが、こうしたフレキシブルな対応が出来るのかどうかは不明です。Logicで楽譜のこうした作業は使いたいとも思っていないので完全に放置しているのですが(笑)、Logicのずんぐりとした符頭は読みやすくて実は好きだったりしますがフォントが専用なので他のソフトで使えないのが残念な所ですね。

 まあ、こうした譜面に於ける小難しい舞台裏を知っていただければ幸いでございます(笑)。安倍さんの「日本をトレモロす」というのも楽譜にしてみると「あー、やんなきゃ良かった!!」という作業の苦悩を感じていただければそれもまた面白いかな、と(笑)。