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80年代中期の悩ましいスラップ・ベース・サウンド [ベース]

 時は1985年。私のブログを継続してお読みになられている方なら1985年という年は頻度が多く出現するのでありますが、その大きな理由のひとつに私が人生初のCDプレイヤーを手にした時であるからという物がありまして、カセットテープの再生の様に巻き戻しや早送りをする必要がなく、ましてやカセットの頭出しなど常にヘッドがテープに接して速い回転で巻かれるためヘッドの摩耗は早く進行し、いつもデンタルミラーとペンライトを片手に再生ヘッドを照射し乍ら反射光の湾曲が無いかヘッドの摩耗を探っていた私でしたが(笑)、そんな心配を吹き飛ばしてくれるのがCDプレイヤーの存在だったワケです。そういう選曲の煩わしさから解放された音楽生活というものは、その後のCD/MDプレイヤー持ち歩きから多くのアルバムもひとつに集約できるiPodに置き換わる事すらも利便性が飛躍的に向上した事を鑑みれば如何にカセットテープからCDプレイヤーという転換が重要だったのかという事をお判りいただけるかと思います(笑)。


 私はベースの技術習得の為もあり、器楽的な方面の技術習得の為にはあらゆるフレーズをベースに置き換えて練習に励んだモノでした。そういうワケでCDプレイヤーを手にした事は嬉しい事だったのですが、その反面、聴きたい曲がCDソフト化などまだまだされていない物が多かったのも事実でした(笑)。今でこそ珍しくないCD-Rが実験的にアナウンスされ始めていたのが1988年位の事だったので、よもや自分で録音可能なCDが出るなどとは1985年当時では全くイメージすらしておらず、とにかくCDプレイヤーの便利さを手に入れた事は何よりも嬉しい事でして、レコードの様に針のノイズから解放されるという喜びは二の次でありました。


 品川の倉庫街でせっせとバイトして貯めて買ったCDプレイヤー。昼休み時にはボンドストリートの他の倉庫からグラビア撮影の合間に間食を済ませようとデルモの女の子達が30人位大挙して来店し、私はいつも彼女達に視線を奪われ乍ら彼女達に見向きすらされないような恰好で昼飯食いつつ異性への欲情など音楽への執着心に比ぶればあまりに矮小であったため、その場をやり過ごす事ができたモンでした(笑)。「ネオ・クラシック」とか「ベーセーベージェー(=BCBG)」とか言われていた時代の頃ですね。


 つい先日は80年代アイドルについてツイッターの方で少し呟いていたモノでしたが、私が持っている当時のアイドル関連というのは小泉今日子のEPと松田聖子のCDだったワケですが、もう1枚忘れていたCDがありまして、それが原田知世の「パヴァーヌ」というCDです。

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 ラヴェルの「亡き王女の為のパヴァーヌ」を想起してしまうかもしれませんが、そもそもパヴァーヌというのは優雅な踊りの事を意味するそうでありそれがCDライナーに掲載されているのが心憎い所です。その優雅な踊りの様なイメージを大局的に持たせ乍らアルバムは二面性を持たせており萩野光雄と井上鑑の2人のアレンジャーに分けて作られております。

 そもそもこのようなアルバムの二面性を強調する背景には、私自身はCDパッケージとしてこのアルバムを偶々所有してはいるものの、レコード会社がCBSソニーだからこそCDソフト化が安定供給されていたとはいえ当時はCDの普及はまだまだ進んでおらず、レコードのパッケージングを視野に入れたソフト化がなされていて、CDはレコードよりも長時間記録できる事からCDのみのボーナス曲があったり(このアルバムではそういうボーナスはありません)したモノでして、レコード媒体を第一に考えざるを得ないパッケージングが必要とされた時代であったのです。CDの本格的な普及は1989年辺りから爆発的に拡大した物でしたが、それでもまたショップではカセットメディア(アルバムがカセット録音されたパッケージングのもの)はまだまだ演歌のみならず確認できた時代でもありました。

 このCDの収録されている「ハンカチとサングラス」という曲に高水健司が参加している為私は買ったのですが、メロディアスなフレットレスが絶妙なのです。麗美作曲・井上鑑アレンジなのでありますが、唄テーマ本編はサンプリングのスラップ!?と思しき音なのですが、いやいや実はフレットレスでのサムピングのスラップは実はサンプリング黎明期の様なスラップサウンドに似た音を出したりするモノです。とは言いつつも、あまりにベロシティの揃ったその音にいくらなんでもやはり打ち込みのスラップだろうという見解が圧倒的なのでありますが、フレットレスのサムピングにでチューン・コーラスを薄く掛けた音は「ハンカチとサングラス」の様な音に似る、という事も言いたいのでついついこの際語ってしまうのであります(笑)。



 私がフレットレスでチョッパー(=スラップ)で弾いているのを最初に見た事があるのはやはり1985年の事でして、カシオペアのライヴを観に行っての事でした。

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 1985年にリリースされたカシオペアのアルバム「HALLE」のプロモーションもあって大々的にコンサートを繰り広げていたカシオペアでありまして、そのツアーでのライヴを観に行っていたのが当時の左近治というワケでして、アルバム「HALLE」収録の「Hoshi-Zora」という曲は、フレットレスのヤマハBBでスラップをしていた櫻井哲夫の姿が懐かしくもあります。

 「HALLE」というアルバムは、CDにはレコードに収まりきらない楽曲が1曲ボーナス・トラックとしてリリースされていた為、「Matsuri-Bayashi」という曲をカセットに録音したさに私の家を訪れる友人は多かったモノでした(笑)。それとは全く関係のない話題ですが、本アルバム収録の「After School」という曲は当時のフジテレビの毎週土曜日ゴールデンタイムのバラエティクイズ番組(番組タイトル失念)に使われていたりしていたもので、その番組ではザ・セクションの「Doing the Meatball」が使われていたりしていたりしていたのもtipsとして挙げられ、そしてアルバム「Halle」収録最後の曲の「Paradox March」という曲はとてもジェントル・ジャイアントっぽく聴いたモノでして、コレを聴くと今でもついつい当時の私のGG熱やらを同時に思い出したりもするモノです。


 そういうプレイの実際を見聞きしたが故に、先の原田知世の曲での高水健司のプレイはイントロのフレットレスばかりではなく唄本編の打ち込みの様に聴こえている音も実はフレットレスのスラップなのではないか!?と疑ってしまうのであります。



 高水健司といえばスラップ時は70年代前期と思しきメイプルワンピース・ネックの黒ツブシ70年代JBなのですが、フレットレスというと恐らく62年辺りのJBだと思うのですが、ベロシティが揃い過ぎているためどうしても打ち込みではなかろうかと思う事もあるものの、フレットレスのサムピングはドンシャリにしない限りはああいう昔のサンプリング系スラップの音に似通った音が出るモンなんですよ、と声高に言いたいのであります。

 リミッターを強く掛けてその後に中音ふくよかな音のダイナミクス感を中和させるためにデチューン・コーラスを掛けて、粒の揃ったスラップを施せばああいう音に近くなるのではないかと推察しているのでありますが、ついつい食い付いてしまうのは曲の良さとアレンジの良さでもありますが、今では忌避されてしまいそうな音の類ではあってもエフェクトのテクニックとして学べる所は多いモノです。

 こうして先の回と今回ではベースのエフェクトに関して色々語ってみたのですが、今度ベース・エフェクトに付いて語る時は、ディレイが作用する周波数の増減など話題にしてみようかと思います。いつになるかは判りませんが、やっぱり80年代中期に語る事のできる素材があるモノですから(笑)。