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Finaleで連符を編集 [プログレ]

 Finaleを扱う人ならば初歩中の初歩の事でもあるワケですが、今回取り上げたいテーマは、連符を扱う際に「鈎」を必要とする表記におけるデフォルトのズレてしまう鈎の位置の編集についてであります。


 例えば次の様な譜例を見ていただくと、各符頭の符尾の延長上に連符の鈎が来ていないのが判ります。これはデフォルト設定のままの連符の鈎の括り方なワケですが、この連符の鈎の側に立って見てみると、鈎は符尾に倣おうとしているのではなく符頭の端を向いて揃えようとしているのが判ります。故にこのデフォルトの設定のままだと拍頭の符尾からは鈎が必ずズレた設定となるのです。
Remp01_prefix.jpg


 更に言えば、このデフォルト設定だと各連符の「ケツ」の音符の符尾の延長からもほんの僅かにズレるのでありまして、DTP的な目線で見ると「美しくない」状態なワケです。


 コレらを揃えるには、私の場合は次の様に連符定義の中の右下の方の「左側への延長:28EVPU」「右側への延長:-2EVPU」と設定します。ただここで「初期値として設定」とやってしまっても未来永劫この設定がどんな編集においても活きるワケではないので、こういう編集をする際はライブラリとして保存するのをオススメします。Finaleを扱うと、曲用のファイルよりもライブラリの方が増えて行くと思われるので、こまめに色んなシーンのライブラリを保存するのを私はオススメします。
REMP_TEIGI.jpg


 とはいえ元の拍子が4/4拍子とは異なる拍数(音価)に埋め込まれる連符は徐々にそのオーセンティックな姿から遠くなってしまうためか、次の様な譜例における連符の状態だと、連符定義の鈎の編集は「左側への延長:34EVPU、右側への延長:-24EVPU」という風になってきます。しかし、この譜例中に見られる連符は「付点8分音符=16分音符×3の音価に対して5連符として括る」という特殊な連符なので符鉤の位置もかなり大きくズレてくるためこのような設定になってしまうのですが、通常の連符の括りならココまでの編集を強いられる事はないと思われます。
Remp_PrestoVivace.jpg


BigGenerator2.jpg
 余談ではありますが、この譜例の符割はU・Kの「Presto Vivace」の符割ですね(笑)。さらに25/16拍子なんていう例を引き合いに出して3つの音形がどのように収まっているのか!?という事を判断すると、4拍子から大きく逸脱した音価ではありますが、連符の鈎は巧い事表記されております。因みにこれはYesの「ビッグ・ジェネレイター」ですね(笑)。
BigGenerator_tutti.jpg


 扨て、先の連符定義に於ける「左側&右側の延長」の数値ですが、Finaleでは4音以上の括りを連符とする時、「左側への延長」の数値はさらに2EVPU増やした値、つまり「30EVPU」を入力するのを私はオススメします。6/8拍子の8分音符3つ括りを「4連符」として遭遇するシーンもあるでしょうし、それこそ5連・6連符なども頻繁に遭遇すると思いますが、「4連」以上の括りは先の様に修正してあげた方がよろしいかと思います。まあ今更私が言う事ではないのですが、今回はこうしたFinale独特の設定も含めて「連符」の話題について語ろうと思うのでハナシを進めるコトに。



 次の譜例の1番、コレは八分音符が9つで括られているため「通常」コレは「4拍9連」になります。ところが連符というのは時としてジレンマを抱えるモノでして、今回はそうした連符表記に依る矛盾の例を紹介していこうかと思います。先に結論づけてしまいますが正解というのはありません。多く「共通理解」こそが答でありまして、その共通理解の方で柔軟に音楽を捉えていただく事が重要かな、と思いますのでご注意を。
remp.jpg


 扨て、連符表記に於けるジレンマとやらを順序立てて説明していきますので今度は2番の例を見ていただくと、コレは何の変哲も無い「2拍3連」です。2拍3連というのは時として3番の様に、各音符を3分割するという符割になる事も多く、つまりはそれは「2拍9連」としての姿に変化するのでありますが、2拍9連というのは16分音符よりも僅かに細かく、16分3連や16分5連よりも僅かに粗い音価です。コイツが結構厄介なワケですね(笑)。


 2拍3連の各音を三分割にした表記が3番というとても親切な連符の括りです。Finaleではまずこうした括りを行うには8分3連を1拍分作って、それを3倍、つまり3拍分を括らせるようにします。連符定義編集の側から見れば、元の姿が連符であろうがなかろうが関係ありません。1拍3連1拍分というのは四分音符と等しい音価なので「四分音符3つを二分音符1つ」という風に括ると3番の様になります。

 4番ももちろん2拍3連を元に三分割した連符ではありますが、元の細かい方の音符は連桁が全て繋がっているのが特徴です。5番はそうした連桁の連なりが9音として現れると1番と見誤られる可能性が高まってきたので、2拍分という事を強調するために連符表記は更に比率表記としているワケですね。


 扨て、そうなると符鉤が8分音符であるのにそれが9つで括られると、1番の表記なのか6番の表記なのか!?というジレンマが生じます。そもそも2拍9連は16分音符よりも速い(細かい)音符なのだから元の符鉤は16分音符にすべき!としてしまうと、先の2拍3連の細分化の例にある通り、四分音符ベースの2拍3連を倍加して細かくすると次は8分音符の符鉤になるので、こうした矛盾を生じるワケです。これから察すると16分音符の符鉤を基にした9連符は実際は32分音符よりも速い1拍9連となってしまいますが、実際には1拍9連の表記を必要とする際は基とする符鉤は32分音符の符鉤なのが一般的な表記だと思われます。つまり、16分音符を基とする符鉤はドコ行っちゃったの!?というジレンマが生ずるワケですが、これらはあくまでも「共通理解」に基づいて理解するモノであり、目くじら立ててやいのやいのと罵り合う類のテーマでもありません(笑)。

 そもそも楽譜の表記こそが全て!というのも誤った理解です。一部の作曲家は、作曲家とは異なる解釈で演奏されてしまう事を忌避し、読譜すら難解にしてしまうような符割を使ったりして自分の作品を遺したりする人もおりました。ただ言えるのは楽譜は「共通理解の賜物」であるものの、それそのものが全てではない、という事なのです。

 自分が好きな作品というのは一音一音覚えていたりするものです。音の強弱は勿論ビブラートの掛かり具合など。それはクラシック音楽のみならず。カヴァー作品が原曲と異なる印象を受けるのは、原曲を細かい部分まで摸倣していない事が全く別の作風の様にも聴こえてしまう要因ですが、どんな素人の人でも思い入れの強い作品に対しては「違い」に敏感なモノです。その違いと共通理解を研ぎ澄まして解釈し乍ら演奏されているのがクラシック音楽界でもあるでしょう。

 今回私が提示したリズム譜ですら、共通理解は必要な事なのであります。更に重要なのは曲を聴いて知っていればこそ、注釈の必要な所は「ああ、なるほど。あの部分はこういう表記にしたのか」という理解が及びますが、初めて遭遇する人からすれば、その共通理解すらどのように対処すればいいのか判らず、こうした表記に逡巡してしまう事だってあるでしょう。


 一部の作品には、とても符割が細かい64分音符や128分音符をも扱う譜面があったりします。この手の譜面は概ねテンポが遅いものの、テンポの抑揚が余りに大きく逸脱しないために細かな符割がテンポの揺れを少なくさせるための工夫でもあったりするモノでして、決してスピード競争でマキタのドリル使って弦弾いちゃった!という類のモノではありません(笑)。

 音符という「共通理解」は重要ではあるものの、本来多様なフレージングを表記上の制約によって「均されて」表記されてしまっている箇所を見付けることが演奏上ではとても必要な事でありまして、この手の「均質化」はポピュラー音楽にはとても多い悪しき慣習でもあったりするので注意が必要だと思います。故にこうした均された表記に騙されてしまった人達が5連符や7連符の発想と解釈に及ばないのも合点が行くひとつの例だと思います。ポピュラー界隈の悪しき慣習に飲み込まれないように楽曲を解釈するというのがどれほど重要なのか!?という事を語ってみた今回でした!