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序破急を心得よ [テレビ関連]

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 見ているだけでもボーッとしてしまいついつい見入ってしまう幻惑性の高いビジュアル・エフェクトであるFlowFazerは、嘗てトッド・ラングレン率いる連中がMacで動作するスクリーン・セーバとしてリリースされていたモノであり、丁度System7に移行する辺りの時代ですので結構昔のコトなのですが、私も過去のブログ記事でFlowFazerのiOS版が出ないモノかとこぼしていたら、いつの間にかリリースされていたんですね。コレはとても驚きでした。


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 用途としてはiPhoneよりもiPadの方が効果が大きそうではありますが、それほどバッテリーを消費するというワケでもありませんし、画面をキャプチャしてそのまま壁紙に使ってみたりと色々用途はあるんですが、iPhoneでFlowFazerをアクティブに動作させていれば自動ロックはせずに延々と画面のビジュアル・エフェクトを楽しむ事ができるのでオススメです。

 扨て、そんな視覚的な効果の話題の次には「聴覚」方面の話題に移ろうかと思いまして取り上げたい題材が「序破急」と記事タイトルにある通り、つまりリズム方面の序破急について語ろうかと思っているワケであります。


 現在ツイッター上にて私個人が非常に盛り上がっている題材がありまして、それが仙波清彦氏に依る先のテレ朝さん系列「題名のない音楽会」に出演時の「変態的」ドラミングのプレーがそれなんです。有り難い事に氏ご本人からツイートを頂戴したのでありますが、そもそも私が番組内でのプレイ内容はどのような符割なのかというコトだったのでありまして、私なりに考えに考えて採譜したのですが、自身に備わっていないリズムというのはなかなか解析が及ばないものです。しかも私自身が未熟というコトもファクターに加わると、氏の境地からはツッコミ入れたくなるくらいの場所であーでもないこーでもない、と頭を痛めているのではないかと自覚はしているものの(笑)、あらためて自分自身の未熟さに反省しきりです。

 因みに氏のご回答も、番組本編未確認ということとインプロヴィゼーションなので確認できないとのコトでしたのですが、こうしてお言葉を頂けるだけでも有り難いモノであり、就中リズムの高みを目指す者であるならば、確認を取ることなく目の前のあらゆるリズムの体現を採譜できない様ではいけないと痛切に感じ取ったワケでもあります。全く頓珍漢な解析をしてしまった私に無碍に否定をしない氏のご配慮もあったのではないかと色々察するコトではあるんですが、いずれにしてもリズムというのは聴き方ひとつで、先のヴィジュアル・エフェクトにも勝るとも劣らない同様の「効果」というものがあったりするモノです。

 例えば、ある言葉が16文字でワンセットとなる様な言葉があったとして、それを繰り返し読んだとしましょう。一部では最後の16文字を読まずに頭に戻ったりして読んだとしましょう。この場合「拍子」としての視点で見ると、4拍子という概念は一定で自分一人だけが15/16拍子でずれていく、という効果を演じたとも言う事ができます。このように順列をほんの少し変化させたりして「ズレ」のように認識させるのをpermutationというワケですね。


 リズムというのは不思議なモノで、アクセントの置き方一つで聴こえ方は大きく変化しますし、テンポの差によっても全く違います。カリプソの演奏かと思いきや譜面がアラ・ブレーヴェだったというコトを見逃してしまい、譜面通りに倍テンポで叩いてみたらサンバっぽいリズムに変容したりなど、同じ玉なのにテンポだけでもそれだけ違いますし、聴取者の耳を騙すような音として、特に速い音価のものだとスネアのロールを鏤めたパラディドルに依る演奏など、他にタム類やハットを刻み乍らでもスネアロールのシズル感が常に鳴り続けているかのような聴覚の錯覚に陥るモノでもあります。


 で、先の仙波氏のドラミングがどういうモノであるのか!?というコトを私なりに解析したのが次の通りなワケでして、ホントはもっと違う事をされている可能性もあります。いずれにしてもそれが回答要らずで自分の解析が全て!という語法を身に付けない限りは、氏の領域になど到底近付けるモノではありません。私が2拍7連としている所ももしかすると1拍3連の4つ括りの可能性だってありますし、もっと多様なリズムを駆使されている可能性もあります。全く分析できない人も居れば、テンポが落ちただけの16分音符のフレーズとして認識してしまう人だっているかもしれません。私の解釈が今回はこうだった、というコトでありまして、これが正解ではないのも確かですが、分析するという探求の方面だけは重要な欲求であるので皆さんも興味がありましたら是非分析していただきたいと思います。
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 そういうコトで私の分析を前提に話を進めていきますが、今回はさらに氏のフレーズの一部をテンポを落としたモノと氏のプレイを採譜通りにサンプル音源に再生させたモノを用意しておりますのでそちらを聴いていただきたいと思います。但しこのMIDIフレーズは殆ど編集を施しておらず、スネアの半拍32分フレーズの部分と、最後のタム2つの音以外は完全にベタ打ちです。なにせ採譜が先にあったモノですからFinaleのそれをそのままSMFに書き出してLogicで再生させたというモノですからね(笑)。

 最初に「ほぼ半分」のテンポに落とした物を再生してみますが、こうして聴くとあらためて元のフレーズの全容がお判りになるかと思いますが、全く雰囲気が異なるのがお判りいただけるだけでも充分かと思います(笑)。

 私はそれほどラテン音楽の歴史に明るい方ではないのでハナシ半分に聞いてほしいのですが(笑)、そもそもサンバのリズムとは、今日知られているサンバのリズムは「アラ・ブレーヴェ」として変化したモノである、と。つまりその原型は、今日知られているサンバのリズムの半テンポでありフォルクローレに端を発すると云われている様です。

 こういう事前知識があれば、今回の様な異なるテンポに依る再生を深く読み取る事が可能だと思われますので、今度はあらためて私が「分析」した譜例の方を確認していただく事に。


 冒頭の3小節目半ばまでの右手のシングル・ストロークに驚かされます。これはおそらく、重力とスティックの重心を活かした最初の「落とす」ストロークの次に、人差し指の親指を支点にしつつ小指&薬指を「握る」アクションを交互に繰り返す事で16分音符をキープしている物と思われますが、ハットの跳ね返りを利用して「支点」を僅かに打点に傾けるように注力するコトの交互の繰り返しかもしれません。いずれにしても目を見張るべきプレイがのっけから現れますが、5小節目に15/16拍子が現れます。

 この音形は、次の6小節目の1音目と足すことで合計16音の「音形」を得る事ができますが、この音形こそがその後の2拍7連でもキープされており、この音形のひとつ「ズレた」形として入って来ている所が「パーミュテイション」たる所以でもあるワケです。で、しばらくこの音形が続き、9小節目の最初の2拍7連にてタム2つが鳴って「辻褄」が合うワケです。

 それは至極当然なワケでして、2拍を1セットとして見た場合7セットで辻褄が合うワケですから4拍子3小節+2拍で辻褄が合うワケです。然し乍ら「元の音形」というのは16ヶの音から構成されているワケでして、16音を「8+8」という風に見ると、7連符にそれをあてがっているので音形がひとつずつズレて行っているのがあらためてお判りになると思います。しかも15/16拍子というズラしから入って、ド頭はキックから入ってくれればイイものをフロアタムから入って音形をズラされて入って来ているという二重三重のフェイクにはまさしく超絶的な「変態的プレイ」と呼ぶに相応しいモノかもしれません(笑)。でも、ご本人が実際にどうやっているかは判りませんよ!

 で、譜例の最後の9小節目で2拍分しか記譜していないのは、3拍目からは「元の姿」としての16分音符を刻む対応が可能な場所でもあるんですが、先の氏のプレイではまだ2拍7連を刻み続けて、最後のフィル近くでテンポが上がった様に聴こえる箇所があるんですが、おそらくまだ2拍7連をキープしていると思われます(笑)。但し、私の分析は譜例通りの部分の所までですので、辻褄が合う部分までの分析として私個人の勝手な思い込みもあるかもしれませんが、このようにリズムを聴いていただくのも面白いと思います。

 幸いにも2012年8月12日のBS朝日にて題名のない音楽会の再放送があるので、興味のある方は番組の再放送と共に私の分析結果を照らし合わせていただき、皆さんにご判断を仰ごうかな、と(笑)。
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