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ロンドン五輪開会式にマイク・オールドフィールドが [プログレ]

 マイク・オールドフィールドの姿がありましたねー。エクソシストのテーマが余りにも有名すぎるため、アルバム「チューブラー・ベルズ」のイメージだけが「今もなお」色濃いとは思うんですが、実はカンタベリー・シーンに括られているのもあまり知られていなかったりもします。今回は音楽的なお堅いハナシは抜きにして、ほんの少しだけ興味深くレコメンド出来ればよろしいのではないかと思いハナシを進めるコトに。


 人脈相関関係ならもっと詳しく語っている所があるでしょうが、マイク・オールドフィールドはデヴィッド・ベッドフォードやケヴィン・エアーズに重用されたワケでありまして、そもそもその人的交流があったのは、レディー・ジューンが持っていたアパートに大層なアーティスト達が棲んでいた事に端を発するのだと思いますが、いずれにしてもそうした「パーティー」が良い方面に作用していた事は間違いないと思うんですな。

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 今年の春先に英Esotericから再発されたデヴィッド・ベッドーフォードの「スターズ・エンド」には全面にマイク・オールドフィールドの巧みなギターとベースが収録された実験的要素の高いアルバムで、どちらかと言えば近・現代風(クラシック音楽界隈での)の手法を得意とするベッドフォードは、楽節の組み立ても希薄なモノで、ロック的な方面の音の「成立」そのものに動機の重きを置いた、かなり先鋭的な音に仕上げております。勿論、ロック的なモチーフの素材となるのは「フレット楽器」が生み出すことの階段状の音並びなワケですが、グリッサンドひとつにも集中を切らさない動機付けを確認したりすることもできまして、こうした非日常的なアンサンブルはドラッグ・ミュージックとしても礼賛されたのではないかと思うことしきりです。


 そうした先のクラシックの素養が十二分に活かされるのがデヴィッド・ベッドフォードなのですが、実はこの人ケヴィン・エアーズとも結構繋がっておりまして、エアーズのアルバム「whatevershebringswesing」では、まるでラヴェルを思わせるような優しげなアンサンブルから入って来るかと思えば、実はその後のハットフィールド&ザ・ノースの在り方にも大きなヒントと成り得る(ハットフィールドのキャラヴァン的要素ではない方の)音空間など特にアルバム冒頭1曲目の組曲「Among Us ~ There Is Loving」は典型的な世界観だと思われ、その後2曲目の「マーガレット」の気だるさと厳しさを仄かに忍ばせた音は素晴らしいモノです。
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 エアーズの音世界というのは英国的独特のオーセンティックな情緒を忍ばせ、それを「日常」として形容させて構築させるコトの多い人物です。カンタベリー系ではなくともピンク・フロイドにおいても親しみやすいフレーズや世俗的で日常的な音を利用してサイケな世界を演出したりしますが、エアーズもそうした「日常」の音空間の語法を持っている人であります。まあ、リチャード・シンクレアの声と比較すると、フレンチ・ホルンとファゴットの様な違いの声でもありますので、リチャード・シンクレア系の声が好きな人は苦手とする人もいるのは確かですが、この人は何を唄ってもロックなコブシを備えている人でもあるのでソコが亦良かったりします(笑)。


 アルバム4曲目の「Song From The Bottom Of A Well」もその後広く認識されるカンタベリー系の音空間(厳しい方の)を持った曲です。この手の世界観はあとはアルバム最後の曲「Lullaby」が代表的なモノでして、他の曲はロバート・ワイアットが唄っていたりもして世俗的で優しい風合いの曲調で「日常」を形容しているけれども音のミックスなど結構際立っているので、怖いくらいにアンサンブルの輪郭が鋭く録音されている所が評価されるべき点でしょうか。


 加えて、レコード時代にはディス・ヒートの同名タイトルアルバムでもあったりしたんですが、レコード溝の最後の縁までも音が刻み込まれているエンドレス・カッティングの手法は、「Lullaby」の水の流れる音で聴くことができて、実は私はエアーズやらディス・ヒートは後年知る事だったのでこうしたエンドレス・カッティングの手法はスネークマン・ショー「ピテカントロプスの逆襲」B面最後で初めて知ったのであり、それを思うと、エアーズ辺りからヒントを得ていたのかなーと今更乍ら思うことしきりであります。巧く刻まれていると、最後が「プツッ」とノイズを立てないで延々ループするんですよね、不思議です(笑)。

 昔のレコードだと、曲のエンディングでやたらと極小ボリューム&フェードアウトのカーヴを長く取って、漸く終わったか!?と思わせると直ぐに内縁の溝に来てプチプチとカセットに録音されてしまったりしたコトもあったモンですが、ある意味でCD録音ではそうした延々とループされる環境音的な情緒を感じ取るコトなく「スパッ!」と終わってしまうのが情け容赦無いと言いますか風情が無いと言いますか(笑)、結構微妙なモノでもあります。

 エアーズはバタ臭い所がありますし、デヴィッド・ベッドフォードは難解でクラシカルな部分があったりしますんでやたらとエレキ楽器に拘る人からは敬遠されたりもする所なんですが、実はカンタベリーの中においても避けて通れぬ「血の匂い」を感じさせる人達の音でもあったりするんですなー。興味があったら是非聴いていただきたいと思います。デイヴ・スチュワートやリチャード・シンクレア方面ばかりがカンタベリー系の音ではないんですよ。