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CD販売のオモテとウラ [クロスオーバー]

 CDが売れなくなったと言われるようになって久しいものです。とはいえそれまでがバブルだったのだろうと私は見込んでおりますが、私自身は音楽を聴くメディアとしては、レコード、CD、SACDなど特に頓着していないため耳にふれあう機会さえあるのなら、高音質が維持されていれば充分満足しているユーザーのひとり。


 売れるor売れないという側面から国内におけるCD販売というモノを見るのではなく、日本という固有の土壌においてCDまたはレコードというのはどういう扱いを受けて販売されてきたのかを知る上で、ダブルスタンダードを生じてしまっている事をあらためて語りたいので今回はそういう話題を語るコトに。

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 ソニーさんの通販サイトにて渡辺香津美のレアなアルバムMermaid Boulevardが再発されました。私自身は知るのが遅すぎたのか今回は・・・(笑)。昨年の朝比奈マリアのCDとかもそうなんですが、売ったとしてもあまり多くの枚数は望めないであろう、それこそコア・ユーザーにしか売れないようなモノというのは、幾つかそうした類のコンテンツを集めることで訴求力を高めていったりして販売するという方が効率的だったりするものです。勿論数少ないユーザーに対してもきちんと目を向けながら自社のコンテンツを活かす、というスタンスで企画が現実に遂行されているワケであります。

 この手のことを物理的なCDショップで販売コンテンツとして推進させた場合、大概の場合は「いちいちこの手のCDを置くことで在庫を増やしたくない」というお店の判断に埋没してしまい、日本全体の声ではある程度の枚数をさばけそうなんだけれども、工場ラインを稼動させるまでの数に至らなかったりとか、またこういう企画があるという声の吸い上げに伴う宣伝物の印刷やら通信費など、そういう所で償却できずに陽の目を見るコトが少ないのが現実であります。だからこそマイナー商品は売り方から変えていかないとなかなか商品化されないという背景がお判りになるかと思います。

 大した枚数を捌けないのであるからある程度多くのコンテンツを揃えても、街のCDショップの売り上げを圧迫するワケではない。だけれども心中穏やかではない小売店も実際にはあったりするようで、その声はどういうコトを言っているのかというと、いわば、卸業者が小売業に手を出して儲けるようなコトをするな!と言っているワケですな。


 小売業者ができないことを小売店に迷惑をかけない程度に「小売店に配慮しながら」売っているのでありますが、日本の場合、小売店に配慮すると再販価格によって値段が決まっているため、小売店での小売価格に併せる必要性が自ずと生じます。小売店価格を配慮せずに小売店よりも安い値段(それでも利益は確保できる)で出すと、それこそ小売店から叩かれるワケですし再販制度を根幹から揺るがす公正取引にも抵触してしまうでありましょう。

 小売店のヤッカミはこうです。1000円の商品を700円でA社から仕入れていたとしましょう。その内A社が小売店を始めることになりました。700円の内何割かは儲けることができます。A社は小売店に配慮して1000円で売りますが儲け分は少なくとも小売店よりも多く生み出す。

 ココに問題があるワケですね。再販価格というものがあるから、卸業者が小売店に配慮せざるを得なくなり結果的に小売店よりも儲かる仕組みになってしまう。iTunes Storeというのは小売店が販売しているワケではありません。卸業者が販売しているのとほぼ同じ。小売店でCDを買ってほしいから高くするとCDが売れず、iTunes Storeでの200円という価格設定が忌避される。それでもなんだかんだで売り上げが見込めてしまうモノだから価格を変えようとはしない。

 事実というものは数年繰り返されると予算化のためのプランが成立するので、利益を生むための構造を自ずと生じます。200円だったのを150円にしても減額分よりも売り上げが見込める状況を予想できない限りそういうプランを推進させることはしないワケです。

 また、書籍の分野では中古を取り扱う会社の株を出版社が買占め株主となって中古市場の価格を下落させないようにしていたり、再販価格制度で保護されている所には逃げ道すら許さないように二重取りの構造が憚ることなく蔓延してしまっている今だからこそ再販価格制度の見直しの議論は今一度進めるべきではないかなーと思うワケですね。まあTPPの議論にも似たようなモノを感じます。車検制度だってなくなるかもしれないのに利権が絡むと圧力があるんですかねー(笑)。