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短和音の発展と解体 [ドラム]

扨て、今回はマイナー・コードの可能性を探るべく和声の可能性と応用を語ってみようと思います。


これまで左近治がペレアスの和声について少々力を入れて語っているのは、その和声そのものが2つのメジャー・トライアドが短二度/長七度セパレートしているハイブリッド形式から生じているワケで、ふたつのトライアドはそもそも極めてシンプルな和声の組み合わせで「半音違い」という所が少々違う所なワケです。そこから生じた和声は、五度音を軸とする鏡像形を持つ「マイナー・メジャー9th」というコードを包含しているから、これまたとても可能性を感じるワケですな。


というのも、和声の高次な発展というのは上方に位置する倍音を求めて高次倍音に行き着いて和声的発展の根拠の礎となっているのではなく、和声の高次的な発展の真相は、「下方」にノン・ダイアトニック(調性は無関係)の方角へ3度の根音バスを求めていき、その牽引力を上方倍音として存在する既存の音に力を貸してもらっているというモノでありまして、上方の倍音列でしかも高次な倍音は和声の発展の大きな力を注いではいないものの、十二分に背中を後押ししてくれている牽引力として成立しているワケであります。低次の倍音というのはあくまでも音が律するためのゆるぎない基準として成立しているのでありまして、高次倍音が微分音に位置する所に成立しようとも、それは構わないのであります。寧ろ存在した方が良いとも言えるでしょう。


そういった下方の牽引力というのは短和音の「構造」そのものにヒントがあったワケでありますが、低次の響きだけで厳格な作法で作られていた音楽というのは、音律そのものも「ゆるぎない」ほど低次倍音を意識した構造であったため、この呪縛から解き放たれると、すぐに下方の牽引力と高次倍音への「僅かな力」が合わさることで、それまでとは違う別の強固な力が生まれ、それが和声の発展となったワケです。奇しくも下方の牽引力というのは上方倍音を下方への「鏡像」とみなす力があるということでこれが下方倍音列として知られているコトでオカルトでもなんでもないコトなんですね。3度の音程を頼りに和声を探った経験がある人ならばより実感し得るシーンではないかと思うのです。


普段見かけないような和声の「型」から目にしてしまえば、それ自身に不慣れな物であるためについついやり過ごしてしまいかねないかもしれませんが、多様な和声感を持つ世界というのは実は特別なモノではなく、ハイパーな和声感だけではない通常の一般的なシーンにおいても入り口は見せてくれているモノであります。


そういえば、前回のブログ記事において最も重要視していただきたかった語句というのは「DbメジャーとC#マイナーうんぬんかんぬん」と述べている所でありまして、まあ、単純に理解していただければそれは「同主調」の事を述べているのだろうな、という事を先ずは念頭に置いていただきたいコトなのでありまして、それが重要なのであります。

通常の音世界においても同主調というのはありふれたシーンとして遭遇することがあるとは思いますが、その「同主調」が重要なのはどーゆーコトなのか!?という事から先ずは語って行きましょうかね、と。


じゃあ、ハ長調とハ短調という同主調の例を見てみましょうか。CメジャーとCマイナーってぇこってすな。主音は同じでも長・短という調性が違うのでありますが、今回重要視していただきたいのは、通常の音世界においても転調という大掛かりな物ではなく経過的にメジャーとマイナーを行ったり来たりするような音楽に遭遇した経験がある人というのは、ソコソコ音楽を聴く人であれば誰もが意識するコトだと思います。そのメジャーとマイナーの行ったり来たり、というプロセスには実は結構深いモノがありましてですね、その辺を紐解くコトにしましょう。


同主調と呼ばれるにはそこにはふたつの調性が成立するはずです。Cを主音とする同主調は先述にも在る通り、CメジャーとCマイナーです。更に、それらの各調性に対して平行調を見てみるコトにしましょうか。

Cメジャーの平行調=Aマイナー
Cマイナーの平行調=Ebメジャー


という風になります。重要視していただきたいのは各々の平行調の音程関係が「対蹠点」という増四度/減五度というある意味「ウラ」の関係を忌憚なく呼び込んでいる状況と考えていただきたいワケです。


ある音程において対蹠点を呼び込むというのは二重導音のシーン然りでもありますが、この対蹠点を呼び込むということは半音階の入り口でもあるワケですな。故に多様な音世界の呼び込みで用いられる旋法というのは大概対蹠点を含む音列として成立していたりするモノでもあります。


同主調という関係は、実はそうした重要な「対蹠点」としての在り方をベールに包みながら調的な重心をもうひとつの「平行調」に持たせているコトで暈しているだけとも言えるかもしれません。ですので、マイナーとメジャーの行ったり来たりする様というのは対蹠点を呼び込むコトにもなり、ひいては多様になるワケであります。


例えば、延々とソロを取るような時に呼ばれる「一発系」のコードというのはドミナント7th系がマイナー・コード系が多いと思いますが、そのフレーズにはおそらく「対蹠点」の音程、概ねブルーノートと呼ばれるような音を使うコトも往々にしてあるのではないかと思います。


左近治が批判したい部分は、対蹠点の音を総じて易々と「ブルーノート」という類で片付けてしまうコトでして、こーゆー理解だけは絶対しないでいただきたいワケですよ(笑)。ブルーノートとしてしか理解していないと、その音の扱いはとても安っぽいモノにしかならないのが常なので(笑)。


マイナー・コード上でも対蹠点の音を使うコトがあっても、今度はそれを和声的に導入して例えば「Cm9(#11)」なんていう変わったコードを導入する人は非常に少なくなってくると思います。だって、こんなコード正直一般的じゃないですもんね(笑)。


過去にも述べましたが、マイナー・コードで「#11th」が発生している時は、そのコードの短三度上のマイナー・トライアドが併存している状況という風にも見立てるコトが可能です。ですから先の場合だとCマイナーとEbマイナーが併存している状況という風にも考えることも可能ですし、先のコードが「Cm9(#11、13)」と変化してくると、これはウェザー・リポート(ウェイン・ショーター作曲)の「Three Clowns」に用いられている「あの」コードでもありますし、ペレアスの和声を包含している和声でもあるワケですね。


まあ、こうしたハイパーな和声を、マイナー・コード一発だと単調だからと今度は和声的な方面で大胆な進行感は無いけれども和声に少しメリハリを付けるコトは可能でもあるので、

Cm9 → Cm9(#11) → Cm9(#11、13)という風に進行させたとしましょうか。これはあくまでも「メリハリ」のための意図ですよ。


でも、コード進行そのものは「ほとんど」体を保っているようなモンですから、少し手を入れたんならもう少し変えてみっか!と考えてみてイイんじゃないかなーと思うワケですな。

するとCm9(#11) は「EbmとCm」というハイブリッドの形として解釈することもできますし、 Cm9(#11、13)は「Eb△とD△」にベースがCというペレアスの和声を包含している(さらにペレアスの和声から下方へ根音バスを発展して求めた形)として解釈することもできます。


もっとシンプルに考えると「EbmとCm」というマイナー・トライアドを得つつ、他では「Eb△とD△」というメジャー・トライアドを生んでおります。EbマイナーとEbメジャーをよびつつ、CmからD△という動きやEbmからD△という動きを持たせることで、最初のCナンタラに依存しきっきりの音よりもよっぽどメリハリのある解釈が可能になると思えるワケです。

ポピュラーなコード形式ばかりに慣れてしまっていると、いくらマイナー・コード上に#11thが現れるシーンがレアなケースだとしてもコード形式の型が何たるか!?というコトは伝わるかと思うんですが、そればかりに注視してしまって、次のコードでナチュラル13thを追加しただけのようなコード解釈だととても味気ないワケですな。私自身、この手の人達には数多く遭遇して来たのでこうして語っているワケですが、よっぽど気の利いた人や、私の方もよっぽど思慮深い説明をしない限り殆どのケースでは出て来るソロのフレージングなど実に味気ないモノとなってしまう事が多いワケですよ(笑)。


もっと言えば、マイナー・コード上の#11th音を大事に扱ってくれない人もとても多くてですね(笑)、ただ単に経過音程度のそれこそ「ブルーノート」的解釈で、コード解釈が「Cマイナー」側にやたらと重きを置いてしまって、包含しているはずのペレアスの和声の響きなど頓着するコトもないような皮相的な人間にどれだけ遭遇してきたコトか(笑)。でも、大体はこんなモンだと思うんですよ。だって「一般的」なシーンなワケですからね。


そういう皮相的な和声の扱いしかできない連中とて、理論的な方面の知識の獲得は貪欲ですし、聴いている音楽だって我々と似ている所を聴いていたりする人たちなんですが、「違う」ワケです。おそらくは、和声的な方角への耳の向き方が我々よりも「鈍感」であったりするコトに加え、どちらかというとテクニカル・フレーズを好むような人間が多いのが共通する特徴でもあったでしょうか。自分の楽器パートのテクニカル・フレーズばかり鏤められた音楽ばかりを嗜好する傾向にあると言いますか。だから重要な和声の曲とか聴いているはずなのにテクニカルなフレーズがなければおそらく最初に聴いた時以外は殆ど聴いたコトはないのではないだろうか!?という感じですなー。

故にテクニカルな方面一辺倒なギタリストやベーシスト、実は音楽理論方面の知識獲得にも貪欲であるはずなのに先の「Three Clowns」の重要性を声高に説いても全く通じることがないのでありまして、無論、和声的な感覚も非常に鈍かったりするワケですよ(笑)。先のコードを例に挙げれば「Cm9」の所だけ注力してしまって、それこそCharさんの「Smoky」そのまんま移調して弾いているだけのようなプレイのボキャブラリーを見せ付けられてしまったりとか。「Smoky」が悪いのではないんですよ。ソコは誤解しないでくださいね。強烈な曲の楽節を持って来ているだけの応用の利かないプレイしかできないとでも言えば判りやすいでしょうか。


ですので、ハイパーなコード表記というのは時としてコチラが道化を装って選別するための危険な道具でもありますし(笑)、コチラも思慮深くハイブリッド形式であらゆる方面で注釈を付けたりとか、そういう風に持って行くコトはあるんですよ。底意地の悪い左近治ですが、人間的な方面を責められては困るので、その辺は巧いコト凌いでやって来ているつもりです(笑)。


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とまあ、自分の周囲においてもハイパーな世界観という物を第三者に伝えるという事は難儀する所がこれまで幾度となく経験したものですが、ブログにするとさらに複雑化しているように思えるかもしれません(笑)。とはいえこの手の取っ付きづらかろうな音やらも一旦デモにしてしまえば少しは判りやすくなるだろうと思って一応今回はデモと譜例も用意していたりするのです。まあ今回のデモは別の意図で作っていたモノなんですけど、それにコードを付けてみたっていうデモなんですけどね。



時は安田記念の頃なんでかれこれ2ヶ月くらい経とうとしているのでありますが、知人が所有するドラム音源でMIDI入力を手伝ってもらいたいという所から端を発して出向くワケですが、音源がBFD2だったので、その音源を元に色々とMIDI編集をしていたワケですな。その時のデモを渡されて来たのを流用して作ったのと、ドラムのみのデモを折角だからこの際披露してみようという事も相まって取り上げるコトにしてみました。



まず1つ目のデモですが、安直な白玉コードを後からくっつけたワケですが(ドラムがBFD2)、折角なので今回注目していただきたいのは次の部分であります。


・2小節目の「Caug/Daug」
・3小節目の「Dm7(b5)」
・4小節目の「Fm9(#11)」


「Caug/Daug」はC or E or G#ホールトーン・スケールの総和音ってぇコトになります。まあ、ホールトーンが当てはまるという風に捉えるのは早計で、上下に全音違いの増三和音が併存しているという風に捉えていただきたいのであります。ここに上下に増三和音があるとなるとですね、例えば前後のコードがハイブリッドの体だとしても上下が長三和音の形の事が多いハイブリッドな和声(たまには短和音もあります)が存在することで、コード進行としての進行感にメリハリを付けるコトにも繋がりますし、突飛な和声だとしても前後のつながりがスムーズな跳躍になることで和声的な響きの厳しさをなるべく回避しているコトにも繋がるワケでして、故にただ単にホールトーン・スケールを当て嵌めてしまうような事は避けたい所なのであります。トゥーランガリラ交響曲の第3楽章のピアノによる上下増三和音の混合和音も決してホールトーン・スケールを示唆しているワケではないのはお判りでありましょう。


次の「Dm7(b5)」は、更に次の「Fm9(#11)」をヒントにして発展させたいハーフ・ディミニッシュなのでありますが、ヒントにしていただきたい「Fm9(#11)」の方を語ってみようかと思います。


譜例のex2にもある通り、「Fm9(#11)」を譜例の通りに「解体」しております。上声部に「Eaug」、下声部に「Faug」、その更に下にベースがD音という風に。Dをルートする単一のコードとして無理矢理見れば、Dm△9に増六度と増四度が入るカタチとなりますね。通常なら「短七」と見える音はあくまでも増六なのでその辺りはとても扱いとして重要となってきます。増六と長七や短九や増九と長三の扱い(=使い分け)に慣れていないと、いずれ遭遇するであろう「謎の音階」の取り扱いやらに難儀するコトとなりますので、この辺りの取り扱いはとても重要なコトなので違いを認識することは絶対必要なコトです。


つまり、「Fm9(#11)」が有している完全五度音を省略さえしてしまえばナチュラル9th音を使えるハーフ・ディミニッシュの構造としても用いることのできる近似性を持つマイナー・コードなワケですが、先述にもある通り、さらに短三度上のG#マイナーをスーパー・インポーズさせることも可能です(増三和音として見立てるのではなく)。


和声的な進行で言えば、全音違いの増三和音を配置させつつ、その後で半音違いの増三和音を配置させているという風にメリハリを付けていると考えていただいても差し支えありません。仮に此処で完全五度音を省略して「Fm9(b5)」の形が許されるとすれば、この形のハーフ・ディミニッシュト9thは概ねメロディック・マイナー・モードを強く示唆するコードでもありますし、この用法を先の3小節目の「Dm7(b5)」の所においてナチュラル9thを使えるタイプとして想起すれば、同様のアプローチを採るコトも可能となるワケです。


いずれにしても、ただ単に「b5th音」を経過的に用いるような音ではなく、とても和声を構成する特徴を捉えた、おいそれと無視できにくい音のように扱うコトができるのではないかと私は信じてやみません。ですからこうしたハイブリッドな形式に拘るワケですな(笑)。


例えばハイブリッド・コードというカタチにおいて上声部や下声部のいずれかがメジャー・トライアドから増三和音に姿を変えたカタチとして進行するとしてみましょうか。オーギュメント・トライアドとメジャー・トライアドが併存するカタチとしては最近では「謎の音階」を示唆するドナルド・フェイゲンの「Tomorrow's Girls」のド頭のコードとか
つい最近例に挙げたコトなので覚えておられる方もいらっしゃるでしょうが、要はこうした前後のハイブリッドの姿のメリとハリ、というのも大事なコトなワケでして、決してハイブリッド・コードとしての姿がオーギュメンテッドの組み合わせとかメジャー・トライアドでなければいけないとかそーゆー事ではありませんのでご注意ください。




まあ、このデモはそもそも次に披露すドラム・サウンドだけの音を作っていた事に端を発していたワケでして、友人が所有するBFD2において「この音源ならどう打ち込むかやってみて」と依頼されたので、幾つかキットを聴いて「この音、なんとなく311の"Life in the Mergin"みたいやん!」と思って打ち込んでいたのをキッカケに作っていたワケなんですな。その時のドラム・リフが次の通りで、そのオーディオを書き出してもらってこうして流用しているワケであります。そうして幾つか打ち込んだオーディオ・トラックを今回用いているというワケでして、ドラムの音作り部分は私がやったモノではなく私が弄っているのはあくまでもMIDI編集ですので他の部分の詳細は今回は語るコトができません(笑)。
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打ち込んでいるのは私なんでどういう符割なのかはきちんと認識しておりますので、こうして譜例として扱うコトは可能なワケです(笑)。テンポは結構遅い方なのでロール関連の使い分けは判りやすくなっているのではないかな、と思います。

あんまり目にしない細かい符割(64分5連)とか目にするでしょうが、これはスティックの先とケツでやる(ゲイリー・ハズバンドとか)ヤツです。この場合リムを叩いているワケですけどね。最後の方でフェイク・ビートにしておりますが、リピートさせる意図は、その後に戻る拍のタイミングを先ずは感覚的に掴んでほしいからですね。ただ単にテンポを速めただけのように聴こえないようにするために一旦リピートさせて当初のテンポ感覚に戻す、みたいな。まあ慣れれば何てコトないでしょう(笑)。


ってなワケで、和声的にもドラム方面においても一寸工夫したデモを用意してみたってこってす。楽理的な方面でも疑問やら質問は受け付けて随時受け付けてはおりますので何かあった際は左近治まで。