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レコメン系について [アルバム紹介]

扨て、今回はレコメンディッド・レーベル(=ReR)通称「レコメン」について少々語らせていただこうかな、と。とはいえレコメン系全てを網羅するようなものではなくてですね、個人的にチト喜ばしいコトがあったので、それに伴ってついでに語らせていただこうかな、という非常に単純なスタンスでありますのでご注意を(笑)。レコメン系について根掘り葉掘り知りたい方は、ソレ系の情報引っ張っていただければ幸いでございます(笑)。




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まあ、私個人にとって「喜ばしいコト」というのはですね、COSというアーティストの「Babel」というアルバムが近日リリースになるというニュースなんですな、コレが。とはいえCOSというアーティストというのは一般的にはかなり知名度は低いと思いますし、COSを既に知っている方ならプログレ系のアルバムも恐らくや相当数聴いていたりする人だったりするのではないかと思うワケでして、平たく言えばプログレ中毒者の多くが知っているであろうという、とても狭い世界で知られているアーティストだという風に思っていただいても構いません(笑)。事前になんの情報もなくCOSのCDを手にしたという方は非常に少ないのではないかと思います。


レコメン系というモノを大雑把に語ると初期ヴァージン・レーベルに遡る事ができると思うワケですが、後のプログレ界全般において初期ヴァージン・レーベルというポジションは「マスト的」なポジションに位置していたといっても過言ではありません。有名どころのプログレ・バンドばかりでなくモンドでアヴァンギャルドであり、楽理的側面においても裏打ちされたような作品が多く、一方では楽理的側面の裏付けなど全く無くとも音そのものがカッコ良かったり、など先進性とともに先鋭的であり、そんな楽曲を構築するアーティストがある、というのが初期ヴァージン・レーベルのポジションだったのではないかと思います。


ところがそのヴァージン・レーベルもある程度商業的なスタンスを強化せざるを得なくなったという時代の流れと商業面での現実的な問題もあったのか、それまで契約していたヘンリー・カウというバンドは切り捨てられてしまうワケです。そこでヘンリー・カウの主要メンバーであるフレッド・フリスとクリス・カトラーが自分たちのレーベルを立ち上げるコトとなり、商業面ではアレだけれども世界中の先鋭的で良質なアーティストを発信するレーベルにしようと設立されたのが「レコメンディッド・レーベル」の走りなワケであります。


COSというバンドはレコメン設立前から存在するベルギーのアヴァン・ポップ系カンタベリー・フォロワーのひとつとされるバンドであったワケですな。ヘンリー・カウとの合体前のスラップ・ハッピーやゴング、ザッパ系の音を連想していただければCOSを知らない人でもある程度イメージしやすいのではないかと思うワケですが、カンタベリー的な視点で見れば、ソフト・マシーンやケヴィン・エアーズやデヴィッド・アレン色が朧げにありながらもキャラヴァンとスラップ・ハッピーとマッチング・モールを足したような方のカンタベリー系サウンドと形容した方が伝わりやすいでしょうか。まあ、この手のジャンルの中でも一般的には聴きやすい音ではないかと思うんですな。今の時代で形容するならZero7とか好きな人ならドンピシャとまでは言わずともかなりマッチするのではないかと思います。


不謹慎ながら左近治は、当時初音ミクのキャラクターを知った時に初音ミクに唄わせてみたいと思ったのがCOSの曲だったので(笑)、概ね声のキャラクターなどはかなりポップでキャッチーだと思っていただければ宜しいかもしれませんが、初音ミクと一緒に語ってしまってはあまりに非礼な部分があると思うのでこの辺でとどめておきましょう(笑)。まあしかしながらこの辺のアーティストのファン層や初音ミクを愛でる層の方双方に対して悪意を持ったコメントをしようとしているワケでもないので、その辺はご理解願いたいな、と(笑)。あくまでもCOSというバンドを知らない方にも決して敷居の高い取っ付きにくい類のバンドではないというコトを「レコメン」したいが故の形容でして決して他意はございません。


COSというバンドを全く知らない人でもYMOなら少々知っているという方なら次のような例を取り上げるとおそらく身近に感じてくれるかもしれません。


私の記憶では、YMOのアルバム「テクノデリック」がリリースされた当時、ベルギーのバンドで「TELEX」というバンドから賞賛された、というハナシを見聞きした方がいらっしゃると思います。おそらく「テクノデリック」に収録される「灰色の階段」(細野晴臣作)を賞賛されたコトだと思います。

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この「TELEX」というバンドに関わっていた人でマルク・ムーランという人が居ます。この人がCOSの2ndアルバム「Viva Boma」をプロデュースした人で、COSには欠かせない鍵盤奏者マルク・オランデルというジャズやミニマルやら現代音楽にも通ずるようないわば坂本龍一系の人が関わっていて、この人は後に「アクサク・マブール」というバンドを結成してレコメンディッド・レーベルからアルバムをリリースしていたワケですな。

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アクサク・マブールの1stにもクリス・カトラーが関わっていたり、特に2ndのフレッド・フリスが参加しているアルバムは名作中の名作です。まあ、ゴングやザッパを好む人であればそれらを少々柔らかいテイストにしたようなモノとイメージしていただければ取っ付きやすいかもしれません。


フランスやベルギー界隈というのはアヴァン・ポップの産地でもありまして、アルベール・マルクールなども候補に挙げることができるかもしれません。少なくともレコメン系におけるこれらの音楽的な特徴というのは器楽的な心得と独特の高次な音楽性が伴って多くの音楽ジャンルを包含しているような世界観があるワケです。いわゆるチェンバー・ロックといわれる室内楽系の要素を採り入れても、ベタなチェンバー系アンサンブルに固執するのではなく、そんな要素をエレクトリック楽器にも昇華しているようなものと思っていただければよいでしょうか。

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素人耳にもクラシカルな風合いという形骸的な様式に収まるものとはまた異質なものでして、クラシカルでアカデミックな響きを重視するような多くのチェンバー・ロック系統ともまた音は違うワケであります。人によってはアレアやニュー・トロルスというバンドを好む人もいるでしょう(私自身嫌いではありません)。端的に室内楽の風合いを味わいたいのであればペンギン・カフェ・オーケストラを聴いた方がよっぽど判りやすいかもしれませんが、モンドな要素とアヴァンギャルドなポップな要素を含んでいるというのも重要な要素なのではないかと思いまして、そういう違いがレコメン系の中には多い見受けられるモノであります。


他の多くのいわゆる有名どころのプログレ・ファンには女性はかなり少ないものの、意外にもレコメン系を嗜好する人というのは器楽的な心得がある人には比較的多いものでもあります。肌触りみたいな所も女性には取っ付きやすいのかもしれません。とはいえごく少数ではあるとは思いますが、私の認識としてはこれまでレコメン系を好む女性は意外に多かったかな、と思います。


こういうモンド感覚とアヴァン・ポップの両立となると日本では小西康陽周辺の感覚を筆頭に上げることができるかもしれませんが、国内では例えばホンダのCR-XのCMにも使われたサロン・ミュージックや99.99(=フォーナイン)なんかも、日本における独特のアヴァン・ポップ感覚を形容していて興味深いモノだとも思います。概ね80年代前半辺りを振り返ることになるわけですけどね。但し前述の、私の知るレコメン系を好む女性の方々というのはファッション感覚で聴いているワケではなく(少しはあるかもしれませんが)、ある程度の器楽的な心得がある人が嗜好していたりするのが特徴でもあったりするので、そういう意味では普段ポップス系統しか聴かない人がいきなりレコメン系に興味を抱くと、少し面食らうかもしれません(笑)。しかしながらやはり肌触りはソフトで聴きやすさをどこかに備えているとは思いますので食わず嫌いせずに耳にしていただきたいな、と。


「Viva Boma」に収録の「Nog Verder」は今で言えばZero7を彷彿とさせる名曲。このアルバムが前作よりもアヴァン・ポップの度を強め、COSとしての良さが出ている曲のひとつではないかと。一般的にも聴きやすい馴染みやすいフレーズから引き込まれているといつの間にかハードなタッチの側のHF&Nやマッチング・モールっぽい世界に持って行かれてしまう深みのある曲であります。

「L'Idiot Leon」もHF&N好きには堪らん世界でしょうな(笑)。先述の「Nog Verder」と「Reime de La Vallee」は今で言うZero7を感じさせる曲で非常に聴かせてくれる曲なので特にオススメしたい曲であります。まあ不謹慎ながらも初音ミクが登場した時に、私が初音ミクに唄わせてみたいと感じた曲は実はこれらの2曲なんですな(笑)。こういう所からもお察ししていただけるかと思うんですがキュートさを持っているのがアヴァン・ポップの重要な所ではないかと思うワケであります。無論キュートというキャラクターのそれを総じて「初音ミク」に結び付けてしまうのではなく(笑)、プログレの「プ」の字も知らない、或いはこの手のジャンルに全く無関係な人でも聴きやすさを備えていて、それでいて音は「モノホン」の音を聴かせてくれるアーティストであるからこそ是非耳にしてもらいたいな、と(笑)。そういう意味で初音ミクを引き合いに出しているだけでありまして、初音ミクに陶酔したオタクが戯れ言抜かしているという風に捉えてほしくはないんですな。まあ初音ミクを引き合いに出すことで本人達には非礼なモノではあるんですが(笑)。


でまあ、取っ付きやすそうなアヴァン・ポップ系統のCOSですが、アクサク・マブールとなると少しマニア色を強めて来ます(笑)。しかしながら敷居の高い難解な曲という風に感じさせることはなく、強固な叙情性の中で高次な作品が多いものです。とはいえアクサク・マブールの1stはYMO関連に例えれば細野晴臣のコインシデンタル・ミュージックや坂本龍一の音楽図鑑のように聴けてしまうようなキャッチーさも備えております。チェンバー・サウンドやミニマルから世俗的な後のオルタナ系と呼ばれるような音というのがレコメン系の特徴でしょうな。チェンバー系に欠かせない音が私にとってはファゴットの音なんですけどね(笑)。「Mastoul Akakefak」という曲は私がローズ・サウンドを作る際にお手本にしている曲なんですが、ミニマル・フレーズを駆使したエレピの展開は実に絶妙ですので一度お聴きになっていただければな、と思うトコロ。


アクサク・マブールの2ndはこれこそ真骨頂と呼べるに相応しい作品なんですが、ラーガ風な曲もあればオルタナ感のあるフレッド・フリスのギターが冴え渡っておりまして名作中の名作だと思います。いずれにしてもレコメン系というと少したじろいでしまうような敷居の高さを感じてしまっている人が多いかもしれませんが、実は非常に聴きやすいソフトな側面を持っているモノでして、騙されたと思って手に取って聴いていただけると色んな発見(特に楽理的側面)があると思いますので私としてはオススメしちゃいます(笑)。

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