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2010年しょっぱな話題作! [アルバム紹介]

年明けて早々、結構グッドなニュースが飛び込んで参りました!CDリリースのお知らせなんですけどね(笑)。まあ、マーカス・ミラーやオマー・ハキムが好きな人にはイイお知らせになるのではないかと思います(笑)。



まあ、そのグッドなお知らせというのも理由があるワケで、とりあえずはこれまでCD化されていなかったモノがリリースされるよ、という部分で「イイお知らせ」と述べているワケでございまして、それがBobby Broom(ボビー・ブルーム)のデビュー・アルバム「Clean Sweep」がCD化されるぞ、と。まあ、こーゆーコトなんですわ。1月25日が楽しみですな(本国で2009年内のリリースが延期されてこうなったようです)。

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実際には2in1の形式でリリースされるので(Clean Sweep / Livin' for the Beat)、コレクター心としてはココで少々意気消沈してしまうかもしれませんが、私はもう一方の方はこれまで所有してこなかったので、アルバム「Clean Sweep」についてレコメンさせてもらおっかな、と。まあ、2007年にもチラッとマーカス・ミラー絡みで語っていたんですけどね(笑)。


マーカス・ミラーのスラップサウンド ジャズ・ベース編
https://tawauwagotsakonosamu.blog.ss-blog.jp/2007-10-08


当時、GRPレーベルから「弱冠18歳のギタリストデビュー!」ってフレ込みでリリースされていたこの「Clean Sweep」というアルバム。まあ、バックにはマーカス・ミラーとオマー・ハキムが参加しているというアルバムで(殆どのドラムはバディ・ウィリアムスですが)、おそらくはボビー・ブルーム本人よりもマーカス・フリークが手にするアルバムという方がしっくり来るのではないかと思います(笑)。


アルバム自体は1981年リリースではありまして、この頃って確かにマーカス・ミラーは話題になりつつあった時ではあるんですが、参加アルバムを聴いてもまだまだマーカス・サウンドと称される音には結構バラつきがあった時代でした。それでもマーカス・ミラー本人が志向する音というサウンド面の大枠は伝わってくるのでありますが、数多い参加アルバムのそれら全てが、完全にマーカス・サウンドを確立したものであるのか、というとそうでもないのであります。完全に確立したのは82年以降、「As We Speak」辺りからだと私は思っております。


気合入ったクロスオーバーな兄ちゃんやらジャズ兄ちゃん(現ジジイ)に言わせればGRPレーベルというと、「ど」が付くほどの軟弱フュージョン・レーベルの代表格というレッテルを貼っていたりもするワケですが(言い過ぎだとは思いますが左近治もまた敢えて否定はしません)、その辺は色眼鏡抜きにしてマーカス・ミラー周辺の貴重な音源として聴いていただければな、と思うワケですな。


デビュー作がGRPというボビー・ブルーム本人にしてみれば、弱冠18歳という所を差し引いたとしてもこの手の音楽をやりたかったのかというと、その後のスタイルを見れば、正直なところまず受け入れ難いモノではあったのではないかと察します。フルアコを操るギタリストのアルバムとしては本人の良さはあんまり出ていないとは思えるので。

とはいえ、アルバム最後のディジー・ガレスピーの曲「Con Alma」のアレンジを聴けば、ボビー・ブルームがどういう感覚を持っているのかということがようやく確認できますし、その良さをマーカス君はフォデラのフレットレスと思えるベース・ソロで完全に山に遭難してしまったかのようなプレイを聴かせてくれますし、とっても台無しにしているチグハグ感が実に堪らない。

他の曲ではマーカス君のお得意系なリズムやリフで攻められて、そっち方面ばかりが脚光を浴びざるを得ないこのアルバムはボビー・ブルーム本人にしてみれば悲運なモノだったのではないかなーと思うのであります。


とはいえ、当時なんぞマーカス・ミラーという名前がクレジットされているだけで挙って売れた時代でもありますし(笑)、弱冠18歳のデビュー作に「俺様が参加してやってんだぞ!」という圧力があったかどうかは知りませんが、マーカス君聴きたさアルバムになってしまっている感は否めません。


とはいえ、従来CD化されてこなかったこのアルバムは、マーカス・ミラーを語る上でも少々貴重な音源であることは間違いないので、ボビー・ブルーム本人よりもこっち方面で私も語らせていただきたいと思うワケです(笑)。


先述の「Con Alma」のカヴァーというのは著名な所はというと無粋ではありますが、ウェス・モンゴメリーを挙げることができるでありましょうが、ボビー・ブルームのカヴァー・アレンジのハーモナイズの方が曲そのものの雰囲気が良く出ておりますし、その後数十年経過してジェシ・ヴァン・ルーラーとかもやってたりしますが、私は結構この「Con Alma」は好きであります。マーカスのソロは別として(笑)。


余談ではありますが、近年の「Con Alma」で度肝抜かれたのがエリザベス・シェパードのアルバム「Parkdale」収録のヤツ。コレはリハーモナイズといいかなりキテます、ホントに。エリザベス・シェパードはテク面で見れば日本の上原ひろみや山中千尋の方が上かもしれませんが、彼女達にはないハイパーな和声感覚を身に付けている人だと思われますので、近年では類稀な人であると断言しちゃいますんで、先日も00年代に入手したCDで紹介したワケなんですが、「Con Alma」のついでついつい語らせていただきました。


でまあ、本題に戻りますが、なにゆえマーカス・ミラー基準で語るのか!?と言いますと、先にも述べているように、81年辺りのマーカス・サウンドというのは特徴こそ出てはいるものの、まだまだサウンド・キャラクターはバラ付きがあった時代でありまして、81年という年を代表するマーカスのプレイというと、グローヴァー・ワシントンJrの「ワインライト」やらマイルス・デイヴィスの「The Man With The Horn」とかになりますが、どちらかというと「サステイン若干死に気味」でアタッキーなマーカス的サウンドが特徴なんですな。


デヴィッド・サンボーンのアルバム「Voyeur(邦題:夢魔)」に収録の「Run For Cover」が1978年の作品。以降、81年くらい迄というのは、いわゆる艶やかなマーカス・サウンドを象徴するアルバムというのは結構バラつきがあった、というコトを言いたいワケでありまして、当時のマーカス・サウンドとやらを追究する上では他にトム・スコットの「Apple Juice」くらいがお手本でありました。


渡辺香津美の「TO CHI KA」や渡辺貞夫の「Orange Express」辺りも参考にはなりましたが、マーカス・サウンドというキャラクターが良く現れている作品というのは当時はまだまだ少ないモノでありまして、今回のボビー・ブルームの「Clean Sweep」は結構参考になるのではないかな、と思うお勧めのアルバムなのでありますな。


とはいえ「Clean Sweep」のタイトル曲はアルバム1曲目。この曲のみ、なぜかマーカス君はピックアップはリアに振っただけのJBスラップを曲全編で弾いておりまして、マーカス・サウンド聴きたさに聴いていると面食らうのであります(笑)。


ところが、マーカス・サウンドを追究する上ではフロントorリア・ピックアップのどちらかに振った音でJBがどのようなサウンド・キャラクターになっているのか!?という探りを掴みやすいのが最大の特徴でありまして、マーカス・ミラーのサウンド・キャラクターを探る上では、ややもするとリア・ピックアップオンリーの音では通常なら細くなりがちなJBのスラップ・サウンドがどういう風になっているのか、という点で非常に参考になるのでありますな。


まずひとつ言えるのはEQ的視点で見ても中オチは少なく、音程感が明瞭になる300~700Hz付近の音は結構潤沢に備えているというのがひとつの特徴であり、その上でマーカス・サウンドの根幹たるEQポイント(概ね1kHz~3.5kHzの辺り)の細かな音作りが非常に「読みやすい」という点においても、マーカス・サウンドを追究する人にとっては非常に参考になるのが「Clean Sweep」と断言しちゃいます(笑)。


私なんぞ、まだまだベースを弾こうとする前のドラム演ってた時に、知人のベースで「チョッパーの物真似」みたいなコトやってた頃なんて、知人のベースはサンダーバードでしたからねぇ(笑)。サンダーバードでいくら音作りしたってマーカス・サウンドは悪ぃけど絶対手に入れることはできねえ!という発想すら持たぬ朴訥な左近治がおりましたが、結局70年代のJBじゃなければ無理だという結論に行き着くまでに当時の価格でソアラ2台買えるくらいは楽器に投資したんじゃないかと思っております(笑)。ここの投資が幸いムダにはならなかったのでありますが、親のスネかじるどころか骨の髄まで出汁取ってしゃぶり尽くしていたような左近治。あらためて親に感謝しなければならないと思っている次第でございます(笑)。


そんな「Clean Sweep」を参考にしてマーカス・サウンドを読み取ると、次に参考になるのが「Niqui」と「Share My Love」の音なんですな。これこそが当時のマーカス・サウンドの「理想的な」音でもあると断言しちゃいますが、特に「Share My Love」の1弦のプルのツヤと、「Niqui」のツヤやかでコシの効いたスラップはとても音作りに一役買ってくれる格好の材料になるでありましょう。「ンプゥ~、ンプゥ~!」とポルタメントしつけーよ!と横から蹴り入れたくなる部分もありますが(笑)。やはりマーカスのポルタメントはワインライトかトム・ブラウンの「I Know」辺りに留めてもらいたいモノですな(笑)。


同様に、この手の音はデイヴ・ヴァレンティンのCD化されていないGRP作品では特にアルバム「Pied Piper」に収録の「Pied Piper (Man of Song)」、アルバム「Land of the Third Eye」収録の「Sidra’s Dream」(※このアルバムはAstro-Marchが収録されているアレですね)なんかも同様の傾向があるんですが、「Land of the Third Eye」の方は2弦のプルのコシが少々弱い系の音なんですな。

この手のほんのり2弦のプルが若干弱い系の音は同様に、アルバム「In Love’s Time」収録の「I Don’t Wanna Fall in Love」なんかもそうでありまして、こちらも曲冒頭からはリアPUのみのスラップから入ってくるタイプのヤツなんですが、コシがチョット違うんで音を「読み取る」には少々不向きな音源です(笑)。とはいえスラップを聴きたければこの曲は当時は結構楽しませてくれた曲ですが。


とりあえず本題の「Clean Sweep」の方に戻りますが、このアルバムで最も参考になるのは「Niqui」と「Share My Love」辺りになるのではないかと思います。私が一番好きなのは「No Bad Vibes」ですけどね。細かなゴーストのThumpingがとても良く聴き取れるのでプレイ面で非常に参考になると思います。この頃のマーカスはテンポが緩めの曲では結構大き目にゴースト音(実際にはサムの実音もかなり混じっていますが)を多目に取ってリズムを埋めるクセがあるので、この辺りも研究材料として興味深いのではないかと思います。


「Saturday Night」では珍しくマーカスがマイクロ・シンセサイザーを使っておりますが、エフェクト前段にリミッターを噛ませていないためか、マイクロ・シンセサイザー側の1oct Bassa音のスレッショルドに上手く設定があっておらず、オクターヴ音生成の開閉にブリージング現象が起きちゃっているので、マスター・テープのヨレかのように音がしゃくり上がったようなブレ音になっちゃうのがチョット残念なところなんですな。初めて聴く人はマスターテープ起因のヨレか!?と思われかねないので注意が必要です。で、この曲のマーカスの弦はチョット死に気味で、2弦に顕著に現れるこの当時のマーカスの音のベースのセッティングというのはある意味特徴的でもありますね。


とはいえ全体的には、当時のマーカス・サウンドがブームになりつつある頃の貴重な「綺麗な音」として楽しめる音源であることは間違いないと思うので、マーカスのフレットレスやマイクロ・シンセサイザーなど、結構多岐に渡る音が聴くことができるので面白い発見があるのではないかと左近治はオススメしちゃいます。

ハイパーな和声を好む方にはとても苦痛な「どフュージョン」の世界ですけどね(笑)。


余談ですが初期のGRPの嫌悪する部分は、曲の尺を短く収めるためかテープ・カットが凄く多いんですな。つまりテープをチョン切って切り貼りするという(斜め30度くらいに切るアレですね)技法がとても多いんですな。

例えばデイヴ・ヴァレンティンでも「In Love’s Time」の曲アタマから3分1~2秒付近の「In Love’s Time~♪」という唄の部分でも継ぎ目が判りますし、「Sidra’s Dream」の2分14秒付近はヴァレンティンのソロ9小節目ちょうど付近(ソロに入る前に前奏リフが4小節ある所でもオブリフレーズをヴァレンティンは吹いておりますが、その部分は小節数にカウントせず)もテープの継ぎ目が判る所ですね。これは私の所有するレコードの音飛びによるものではないと思いますので、お持ちの方は是非御確認ください。

というワケでDizzy’s Big4が聴きたくなった左近治ですので、この辺りでレコメンやめさせていただきますがマーカス・ミラー・フリークの方々にはお楽しみいただければ幸いでございます(笑)。