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オルタードとスーパー・ロクリアンの違い つづき [スティーリー・ダン]

扨て、今回も前回の話題同様、スーパー・ロクリアンとオルタードの違いとやらについて語ろうかな、と思います。ただ、過去の左近治のブログを読むと「オルタードと明記すべき部分でスーパー・ロクリアンなどと述べていて矛盾してんじゃねーの?」と思われる方もいらっしゃるとは思います(笑)。

例えば、昨年発売されたウォルター・ベッカーの2ndソロ・アルバム「Circus Money」収録の「Selfish Gene」のコードについて語っている記事など顕著ですね。その辺の過去の記事群やらにもあらためて言及していこうかな、と思っております。


まず率直な所、「Selfish Gene」のブログ記事だけを読んで完結されてしまった方には誤解を与えないような配慮、すなわちスーパー・ロクリアンではなく「オルタード・スケール」と記述した方が適切だっとは感じております。


というワケでその辺りの解説も兼ねて、関連する過去のブログなど今一度再読していただければあらためてご理解いただけるのではないかと思うのでそれらもリンクを載せておきます。


Walter Becker 「Selfish Gene」解説


結局、メロディック・マイナーはどう使う?


和声的に見るメロディック・マイナー・モード

ハーフ・ディミニッシュト9th


とりあえず本題に入るとしますが、過去の記事との矛盾点を指摘される方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら私にも意図がありましてですね、例えば中盤の女声コーラスの「skyline down〜」と終わるギターのオブリ(ソロ)のド頭 のコードは、先述にもある通りBbmM9の3度ベース(=BbmM9 (on Db))なのでありまして、これはBbメロディック・マイナー・モードを示唆するコードが背景にあるワケです。

で、その後のFm7 --> C7aug(#11)という進行は四度進行ではなく五度進行、つまりこのコード進行の過程にはC7に持っていくための道筋というのは色んな可能性を含んでおりまして、ベッカー御大はC7aug(#11)の所で出だしのメロディック・マイナー・モードとの「旋律的な」整合性を保とうとしているのか、ここにて「Cオルタード・スケール」をBb音から弾き始める(=5度抜き)ワケであります。


前回のブログで語っているように、ドミナント7th上で「オルタード・スケール」を選択しているワケではないので、ベッカー御大もスーパー・ロクリアンではなくオルタード・スケールを弾いている、という解説が適切ではあるものの、基本的に唄モノの曲というコトもあるのか、曲の前後(各パターン=楽節の前後)の釣り合い感覚を保たせようとしている狙いがあって「ドミナント7th上でのオルタード」と「ソロ出だしのコードでBbメロディック・マイナー・スケールを示唆することによる旋律」と釣り合いを保ちながら背景のコードを変えて多様な演出をしているのだと思います。

また、当時はその後触れていくであろうオルタードとスーパー・ロクリアンの明確な違いについてのこともあり、私は敢えて「スーパー・ロクリアン」と語っているだけなので、誤解や矛盾を抱かないよう、あらためてご注意願いたいな、と。


当時、スーパー・ロクリアンとオルタードとの明確な違いを先に述べてしまうと、メロディック・マイナーの世界の方に話題を振るのが足枷になりかねなかったのもあって、私はあまり配慮せずに語ってしまったとも言えますが(笑)、背景にあるコードはともかく、旋法面ではメロディック・マイナーの世界と釣り合い取ろうとしてんだぜ!みたいに語りたかったキモチの表れだったのでありますな。


「Selfish Gene」で補足しておきますと「C7aug(#11)」という風に明記していて「C7(#11、b13)」ではない理由は、後者だと5th音を包含してしまいますが、aug表記だと5th音は自ずと「増五度」になるのがお判りだと思いますが、ココでは次のコード「C7(#11)」に行くまでナチュラル5th音を使用してほしくないがための配慮ある表記なのであります(笑)。

無論、「C7(#11)」上ではナチュラル5th音は包含しているコードでありますが、ギター・ソロの時のもう一本のギターはテナー音域で「F#音=#11音」を弾いているのが心憎く(笑)、バッキングのファルフィサっぽいオルガンの音の5th音と絶妙に絡むワケですな。コレもオイシイ所ではあります。


何より、仮に「C7aug(#11)」の所が「C7(#11、b13)」でもイイんだよ、というベッカー御大からのお許しがあるとすれば、この場合Cジプシー・マイナー・スケールを当てはめることも可能でして、実はハンガリアン・マイナー・スケールの7th音をフラットさせたこのスケールというのはベッカー先生は結構好むものでして、顕著な例だとアルバム「11の心象」収録の「Medical Science」で出てきたりもします。しかしながら「Selfish Gene」においては私の耳コピの限りだと、「C7aug(#11)」のところはやはりナチュラル5th音は聴こえてこないので、このように厳格に表記しているのであります(笑)。


こういうシーンにおいて、仮に悪名高きジャズ屋さんが手なりでフレーズ弾いちゃって「C7(#11、b13)」だと解釈しちゃってナチュラル5th音も包含してしまう音選びをして弾いてしまうと、折角明示的に避けているであろうG音を弾いちゃうコトになりまして、コレだと出だしのBbメロディック・マイナー・モードとの「旋律的な」整合性を反故にしてしまうんですな。つまるところ、そこまで厳格に音を選ぶ必要があるのは、それだけ和声にコダワリがあるからとも言えまして、こーゆーのをサラリとこなせる和声感覚がベッカー御大の素晴らしいトコロなんですな。


つまるところ、当初のメロディック・マイナー・モードの世界忘れんなよ!と厳格に指示したい様が目に浮かぶのでありますよ(笑)。


無責任なジャズ屋さんとは違って、気の利くジャズの方々のコード表記など実はこういう気配りのあるコード表記を厳格に指示している例も結構ありましてですね、コード表記としては7th音があって例えば「C7(#9、13)」とかあっても実際には7th音を誰も弾いていない例など結構あります。アンサンブルとしてこういう響きを要求されるような例がある時というのは、きちんと「玉」(=音符)で指示して併記するコトもあるでしょう。

オルタード・テンションが水を得た魚のようになれると猛進してしまっている初心者の方というのは、こういう所で要らぬ解釈(=自身の都合良い解釈)してしまって、お決まりのバップ・フレーズ弾きだした日にゃあ、ウチのバンドじゃあ、左近治による腓骨とハムストリングへ上足、人中に掌底、鼻骨に頭突き、キメ手にドラゴン・ロケット食らわすと思います(笑)。気の利かないヤツにはコレくらいお見舞いしないと判らないんですよ。

ドラマ「ゴンゾウ」で内野聖陽が飛び降りるシーンのような、ドラゴン・ロケットを彷彿させる古いテレ朝ファンを納得させてくれる、あの名シーンのようなモンですな。リハーサル・スタジオをこのような血塗られた世界にだけはしたくないという穏健派の左近治、こういう風に自分を変えてしまいたくはないという思いを常々抱きながら「厳格に」指示を出している左近治であります(笑)。


まあ、私の周りの連中も私に「探り」入れてみたくなるのか、鍵盤のヤツがわざと左手で5th音補足して弾いていたりする時もあるんですよ(笑)。その途端、私の怒号で演奏を止めるのもしばしばです(笑)。まあ、楽しいモンですよ(笑)。まあ、こんな風に厳格に音楽に集中して、それをガチガチにならずとも厳格な世界をサラリとこなせるようにする、というのが本来の目的でもありますけどね。


自分自身の乏しいボキャブラリーの世界でサラリとこなせて音歪んでりゃ多少なりともサクラのようなオーディエンスが狂喜乱舞してくれるようなチヤホヤされた世界のぬるま湯ロックともジャズ屋の音とも違う音を出さなくては行けないのであります。これはどんな音楽ジャンルにも通じるコトだと思いますけどね。ジャズだから、ロックだからという言葉が免罪符になるってぇコトなど皆無なんですな、実際は。