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こんなに近い所に存在しちゃうんですよ [サウンド解析]

扨て、前回のブログでは「左近治は一体何を語りたかったのか?」と疑問を抱いた方もいらっしゃったのではないかと思います(笑)。あれらの曲にどういう共通項を見出せばいいのかなかなか判らない方もいらっしゃるとは思います。
私からすると、先に列挙した曲は似たコードが使われているというのもありますが、同じフェーズに属するタイプの曲達でして、そこには重要な和声的・調的な世界が隠されているモノばかりであります。

というワケで今回はサンプルを用意したので、そちらを聴いていただきながらお読みいただくと、私が何を語っているのかがお判りになるのではないかと思います。




今回サンプルに用いた曲のキーはEメジャーを想起しております。

まず、4小節間ず~っとエレピはEメジャー・トライアド弾いてますね。まあ、コレじゃあまりにつまらないので、ベースを与えるにあたって少しメリハリを出そうかな、と。

エレピはEメジャー・トライアドなのは変わらないので、ペダルともなるシーンを作り出しますが、そんなこたぁ関係無ぇ!とばかりにまずはベースで彩りを出してみようかと思います。

ソコで、ベースは1小節ずつ「E→A→E→D」と動くコトにしました。

つまり、こうして与えたベースによって、エレピのEトライアドと合体するとコード表記としては次の通りになりますね。


E -> E/A -> E -> E/D


という分数コードがちりばめられたコード進行になるのであります。

エレピが弾いているコード・トーンを選択するという、アッパー部の構成音をベースとする場合は私は分数コード表記ではなくONコード表記にするのでありますが、もっと専門的な語句で言うと、アッパー部のインヴァージョン・ノートをベースに持っていく、というのがONコードの用法ですので余談ではありますが気に留めていただければな、と。


で、そうしてしばらくするとギターが単音フレーズで入ってくるワケですな。少々予期せぬ音が使われているかと思います(笑)。

サブ・ドミナント・マイナー感が演出されているものの、そこの情感だけに耳持って行かれてしまいたくないので注意が必要です。

ギターがC音を弾いた時のコードは「E/A」ではなく「Am△9」のハーモニーを演出している所に注目していただきたいんですな。


さらに、各4小節目は「E/D」という単純な7thベースではなく「I△ / VIIb△」型の6声の「E△ / D△」というハーモニーを形成することとなりました。


少々ロック的なアプローチでこのようにサンプルを作ってみましたが、「いくらなんでもロックにローズの音はそうそうあるワケじゃねーよ」という方もいらっしゃると思います(笑)。

ローズが弾いているようなコードを明示的にそのまま他のパートが弾くことを想起しなくてもイイのでして、実際には2人目のギターだの、コーラスだの、メイン・ボーカルのパートのフレージングでこのようなハーモニーは得られるワケであります。

また、今回敢えて形骸ロック的なアプローチで攻めているのも私の意図したものでして(笑)、打ち込み自体はベタ組みバリバリでギターも何の色気もないベタ打ちですが、いくらツッ込んでもらっても構いませんが、重要な点はソコではありませんのできちんとご理解願いたいな、と。


ロックでもVIb使ったり、サブドミ・マイナー使うコトなんか普通にあります。

パートごとに見れば単純なコード使っているかもしれませんが、アンサンブル全体で生み出された和声が実は多様な世界を構築していた、という曲だってロック界には普通にあります。

ただ、それが局所的で経過的であったり、または倚音とも言えるようなアプローチであることで明示的なコードを演出していないことも多いため、「感覚的」に覚えてしまうこともあるかと思います。

倚音と、そうでないアプローチの導入については濱瀬元彦著の「ブルーノートと調性」の184頁にて語られておりますので、興味のある方はお読みいだけれると更に深く理解できると思います。「ブルーノートと調性」がさらに応用として力が入るのもこの辺りのsus4について語る時ですので、非常に役立つのではないかと思います。

まあ、そういうロックの側面を「好意的」に用いることで、耳が習熟しきれていない人にとっても、こういうアプローチの方が判りやすいだろうという配慮があってのコトなんですが(笑)、こうして今回取り上げた和声的な世界は、一体どういうモノなのか!?というコトがあらためて理解できたのではないかと思います。

サブ・ドミナント・マイナーとしてAメロディック・マイナー・モードを想起したり(トニック・マイナーで使うだけがメロディック・マイナーではない)、最後の6声のポリ・コードは、表記する編集者や出版社によってはドミナント7thに9thとナチュラル11th付加したりするような表記したりもするワケですよ(笑)。洋書に多かったりしますけどね。

よもやそのコードが属七系に聴こえてしまう人はまず居ないと思うんですが(笑)、コード表記に誤魔化されてしまうことで誤った理解をする人は必ずしや存在してしまうのではないかと思うんですな。

結果的に迷いが生じて狭い世界の形骸化された音にしか興味を示さなくなってしまうようでは、せっかく器楽的な心得があるのに実に勿体無いとも言えるワケです。

多くの学生さんが満足してしまうような和声感覚というのは、実は、今回のようなサブドミ・マイナーはおろかマイナー・メジャー9thにも気付かない、ポリ・コードの和声感覚も気付かずに、自分で手一杯で、学校のお友達が一緒に乗ってくれることでのぼせあがって勘違いしたまま根拠も探らず手なりで弾いているだけの連中が殆どなんですよ。気付いている人も勿論居ますけどね。

先のブログで列挙した曲というのは、今回用いたアプローチというものが判りやすい順で列挙しておりますので、興味のある方は今一度原曲を耳にしていただければな、と。

今回のサンプルの最後の4小節において、エレピが敢えて和声を明示的に弾いてきます。それまではずーっとEメジャーのペダルだったワケですからね(笑)。

ただ、どうでしょう・・・!?おそらくや、こーゆー風に明示的に弾くと、チョットいやらしいというか(笑)、どギツい感じに聴こえるかもしれません。少なくとも私には、「やらしー」感じに聴こえます。

和声感を探るには確かにこういう明示的なヴォイシングの方がメリハリあって聴く事は可能ですが、ちょっとエレピに頼りすぎで、ハーモニー全体で見るとアンバランスな感じは否めません。むしろ、無理矢理歪んだギターが入って来ているかのようにも聴こえます。

さりげなく、通常の和声感を持つ世界とは異なるモノを見せてナンボだと思いますんで、一番最後のエレピのヴォイシングは今回避けた方がイイかな、と。但し、和声を探る上で「わざと」用いておりますので、その辺りの意図を感じ取っていただければ幸いでございます。