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アブドゥーラ・ザ・ブッシャー [YMO関連]

扨て、「Sweet Illusion」の楽曲解説の続きを語ることにします。

前回のブログでは渡辺香津美のギター・ソロの38小節目に見られる特異な音列について語ったのでありますが、とりあえず今回は曲の一連の9小節単位のコード進行を大局的に見ることとなりますが、少々重要な点があるのでそれについて述べておこうかな、と。
ココの所左近治が語っていた、「便宜的な」ドミナント7thコード表記におけるナチュラル11th音の扱いについて熱く語っていた部分があるんですが、簡単に言えばsus4の拡大解釈と捉えても間違いございません(笑)。概ね1961年辺りからジャズ・シーンではもはやこういう音を得ているのであります。

ブルーノートで言えば4100番台、特に4200番台からはかなり顕著になってくると思いますが、ツーファイヴを多用するジャズシーンであってもドミナント・モーションの拡大解釈や逸脱、というのは散々行われていたワケですな。

ある意味では「属和音、うぜーんだよ!」と感じる人もおそらく存在したでありましょう(笑)。

ま、それらの当時のジャズ・シーンと今回の「Sweet Illusion」とどんな関係があるのか、と言いますとですね、次のようになります。

9小節単位で繰り返されるギター・ソロでありますが、その各verseの5小節目に注目です。

私は確信犯的に「Bm7(9、11、13)」と表記しておりますが、場合によってはコレを「B7(#9)系」のとりこぼしと思われている方もおられるかもしれません。コレには意図がありましてですね、山下達郎のコーラスが入っている部分は紛れもなく「Bm7系」なのでありますが、渡辺香津美のギター・ソロ部では、セカンド・ベースとしての扱いのアプローチでソロを取っているのであります。

つまるところ「A△7/B」というアプローチですな。

ココ(←ギター・ソロ)で渡辺香津美はアッパーのメジャー7thにリディアンを想定しているのであります。

原曲通りに語るならば、渡辺香津美のギター・ソロの6thパターンまでは「A△7/B」と対応して、6thパターン(49小節目)では「A△/B△」、そしてバックのシンセやヴォコーダーのバッキングを強めてくる55小節目以降は本来の「Bm7(9、11、13)」となりまして、ギター・ソロ部の一連のそれはセカンド・ベースでアッパーはリディアンで対処している、というトコロが少々注意すべき点であると思います。

なにゆえ「B7(#9)」系で固めなかったのか!?

それにはやはり坂本龍一としてのコダワリがあるのだと思いますし、B7系として用いた時のM3rd音が「ジャマ」なのかもしれませんし、ナチュラル11th音を用いたいキモチの表れかもしれません(笑)。

故にシャープ9thは回避しながらも、ソロ中においてセカンド・ベースとメジャー・トライアドのポリ・コードを使い分けているのでしょう。ポリ・コードとして用いる時はドミナント7thにナチュラル11thが加わるかのように見えるかもしれませんが、機能的には全く別物ですので、この辺りは耳で聴いて違いを体得してもらいたい部分でもあります。

まあ、楽理面で注意すべき部分を語りましたが、今回このギター・ソロで活躍したのはNIのKontakt3でありまして、Kontaktオンリーの音作りではないもののKontaktのスクリプトがあってこそ、というモノでもありました。

そろそろKontakt3もヴァージョンアップされる予定だそうですが、どういう風になってくれるのか興味深いトコロではあります。ココ最近DAW関連の大きいネタは少ないですし(笑)、話題に華を咲かせてくれればと思ってはいるのでありますが、まあ、おそらく左近治のスタンスは楽理面が中心になってくると思いますので(笑)、その辺覚悟してもらいたいな、と(笑)。

なんにせよ、30年以上も前の名演をこうして今も取り上げて話題を繰り広げるコトができるというのは実にイイものでありまして、30年以上も前じゃあ生まれてもいなかったであろう世代の人達にあらためて音楽の深みを感じ取ってもらえればと思う次第であります。

前にも語ったコトですが、楽理面を学ぶことなど器楽的な習熟と比較すれば百万倍カンタンなコトですので、器楽的な心得のある方はやはり楽器を手に腕を磨いてほしいと思わんばかりです。まあ、渡辺香津美をフルコピしろ!とまでは言いませんが。そのプレイたるや、こういうコード進行をバックにどれだけ語彙の豊富なフレージングを持ってして披露することが出来るのか!?

ということを認識すれば、どれだけ素晴らしい感性を備えた演奏なのかというコトがお判りになるのではないかと思うワケでございます。