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Popper's MTVという番組がありましたね [スティーリー・ダン]

まあ、こういうブログタイトルから予測しづらい方面の話題にしていくのが左近治流なのですが、例えば、スティーリー・ダンやシンクラヴィアの話題にまで引っ張ってみようかな、と(笑)。


時は1985年だったでしょうか。前年の夏にPropagandaの「Das Testaments Des Mabuse」の12インチを愛聴盤(三菱ギャランのCMにもなっていました)としつつも、心のどこかでは「デジデジ」していない音を求めていた左近治が居たんですなー。

Propaganda_Mabuse_Front.jpg


「デジデジ」という形容はとりあえずは「過剰なデジタル系な音」と思ってもらえれば差し支えないとは思うんですが(笑)、いかんせん世の音楽シーンはサンプリングの魔法のような魅力に取り憑かれ始めたような時期。シンセだってDX7大ブーム。今まで耳にしたことのないような、「存在し得ぬ音」をいとも簡単に表現してしまうシンセの音!という時代真っ盛りの時でありますよ。そんな私の当時などとうにベースにドップリ浸かっている。シンベの音は席巻し、スネアの音などゲートリバーブ全盛(笑)。

もうちっとギミックの少ないバンド・アンサンブルの音聴きてーなー、と思っていた時もありました。とはいえそんな「デジデジ」の魔力というのは私も一部は魅了されていた部分もあるんですが、暖かみのある音を欲していたけれども時代がソレを許さない!という風潮はあったように思えます。

まあ、そんな頃TBS系列では深夜にポッパーズMTVという、ピーター・バラカン司会の番組が放送されていて、ピーター・バラカンは一度だけではなく数回ほどプロパガンダの「Dr.マブーセ」のPVを取り上げていたことがあったと記憶しております。

そうして左近治はPropagandaはPVもイイ作りしてんなー、などと思っていたら、番組中、PVとは別にBGMを流す時間帯というのがありまして、こういう時はバラカン氏が色んな解説を繰り広げているわけですがBGMの解説をしているワケではないんですな。ただ、BGM使用曲はきちんと画面隅にアルバム・ジャケットを映すという配慮が行き届いておりました。

で、そんなBGMが流れていた時に出会うことになったのがウェイン・ショーターの「アトランティス」というアルバムだったんですな。

当時の左近治はウェザー・リポートのアルバムは当然のように所有していたものの(アナログで)ショーター御大名義のアルバムはまだ持っていなかったんですな。デジデジな音に感化されていた左近治であってもウェザー・リポートの「Palladium」という曲は非常に好きだった左近治(今でもベスト20には入ります)のもあって気に入って買うことにしたのであります。

アルバムを入手する前に得た情報はというと、このアルバムはなんと!シンクラヴィアが使われているというコトが判明。とはいえ「Endangered Species」という曲だけなんですけどね。

シンクラヴィアの広告、まあいとも簡単に11度の音程弾いてる写真の手がデカいこと!なんていう記憶が蘇ってくるワケですが、「Endangered Species」のシンクラヴィアのベース・ラインのそれはいかにも鍵盤チックなフレーズなのでありますが、FM変調させているのかどうかは判りませんがとりあえずエレベとDXベース系の両者の音をミックスさせたようなダイナミクスは備えている、なんとも不思議なメカニカルなフレーズで衝撃を受けたことがあります。

例えばジェフ・ベックの「Star Cycle」のシンベのフレーズをスラップでやるにしてもチョット原曲のイメージをブッ壊しすぎるワケですが、ああいうフレージングをシンクラヴィアの「奇妙な魅力」を持つ音の前には不思議な自然さを感じたものであります。まあ、それを実際にスラップで再現しようとするとムリがあるような感じになるのも否めないのが現実だったりするんですが、後にマーカス・ミラーが「Teen Town」のフレーズをスラップで再現するようなモノに近い、ベースのフレーズであるということを原曲をご存じ無い方にはイメージ掴みやすいのではないかと思います。

で、ショーター先生のアルバム「アトランティス」を手に入れて良かったと思ったのは、アルバム収録2曲目の「3人のマリア」という曲に出会えたコトですな。

先の「Endangered Species」以外はシンクラヴィアは導入していないので、こちらは生のエレベとなるワケですが、この曲で弾いているのはラリー・クラインなワケですな。

チョット前には左近治が散々語ってきたウォルター・ベッカーの「サーカス・マネー」については記憶に新しいことでしょうが、ラリー・クラインについては殆ど触れておりませんでしたっけ(笑)。

当時購入したウェイン・ショーターの「アトランティス」のライナーには、心憎い演出とばかりに「The Three Marias」のスコアの一部が写真になっていたりするんですな。6拍子の。ところが15年ほど経過してこのアルバムはようやくCD化(悲しいことに紙ジャケ)されるワケですが、ライナーの譜面までは再現されていないのですよ(笑)。

とはいえそのスコアが無ければ耳コピなんぞできねぇ!というような左近治ではないので、こちとら音採れるんで別に構わないのでありますが、こういう所に配慮が行き届かない再発というのはついついお冠になってしまう左近治なんですなー(笑)。まあ、スティーリー・ダンの「Aja」は、バンスコなんか無くとも耳コピできる人なら「3人のマリア」も楽譜起こせると思うので、原曲を知らない方にイメージ掴んでもらうにはこういう例えの方が伝わりやすいかなー、と。

そのラリー・クラインのベースというのは、クレジットには「Fender」という風には書かれているだけ。まあ、ジャズベには間違いないだろーという音なのでありますが、85年というのはフュージョン界のベースの音などスラップ大全盛(しかもマーカス・ミラー系)の時代。そんな時代で「あーゆー」ジャズベの音で指弾きしたような音ではなく、結構コシのある、両ピックアップのブレンド具合が絶妙ながらもファットなJBの音だったりするんですよ。Walを弾いているような粘りとコシ、みたいな(笑)。

こういう風にベースの話題にしてみたのは、ジャズベの音がスラップ用セッティングがデフォルトとなってしまっているような時期にも、そんな姑息なマネしないでコシのあるJBサウンドを堪能できる曲に出会った事が喜びだったワケですな。楽曲の和声構造もスティーリー・ダン好きな方なら先ず間違いなく気に入るだろうという名曲。

ホントならプレベの音に酔えるような作品を個人的には例に挙げたいのでありますが、ジャズベ弾きに陥りやすい「チョッパー主体」な音から目を醒してほしいというキモチの表れからついつい語ってしまった今回の左近治であります(笑)。

そんなセッティングを仮にしていても指を弦にヒットさせる角度によって骨のある音を得られるコトが可能でもあるんですが、コレをしない人が最近多いんだよなー(笑)。

細野晴臣、伊藤広規、エイブラハム・ラボリエルという人達の時折見せるゴリ感。コレがジャズベにおいては最高のヒントとなるでしょうな。ラリー・クラインの音はそのフェーズにありながらも汗臭くない所がまたカッコイイんですな。