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グリーンスリーヴスをふりかえる [クロスオーバー]

扨て、3月20日リリースの曲はThe Sectionの2ndアルバム「Forward Motion」収録の「A Kind of Albatross」という曲であります。

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この曲は、セクションのキーボードであるクレイグ・ダージの曲なのでありますが、楽理面において少々興味深い和声を聴くことのできる作品なので今回とりあげることに。

その前にセクションについて語りますが、セクションの全3作品の中において「Forward Motion」というアルバムは、結構玄人受けするような敷居の高さがあったりするんですが、ライナーノーツにも書かれているようにジャズ・ロック系の音が色濃いアルバムであります。

ギルガメッシュやらハットフィールド&ザ・ノースが好きな方なら間違いなく受け入れてしまうアルバムだと思います。で、さらに言うと、カンタベリー系が好きな方なら普通に受け入れられると思います(セクションの場合、良くも悪くもアメリカ臭さはありますけどね)。

当時の「イナタさ」があった西海岸の人達なのに、なにゆえこうもジャズ・ロック風なのか!?というのは、やはりジャズ・ロック界隈やカンタベリー系なども含む、当時の真の意味での「クロスオーバー」が起こっていたからでありましょう。

英国発の有名プログレバンドの数々というのはカンタベリー系ではないものの、カンタベリー系というジャンルのオイシイ所というのはクリムゾンを除けば、ほとんどのバンドはかいつまんでヒントを得ているのではないかと思うワケでありますが(笑)、アメリカという国において「プログレ」と形容できるほどのプログレ・バンドが無かったのは、当時の音楽界隈で影響・伝播される硬質な音楽の追求というのはスタジオ系やらジャズ系の人達を中心に広がって、その音がバンド・アンサンブルとして練り上げられていくものが少なく、個人としてのプレイの集合体(すなわちスタジオ系)で多く波及していたからこそアメリカでは英国プログレバンドのようなものが育たなかったのではないかと思う所があります。

BS&T(=Blood, Sweat & Tears)は概ね「ブラス・ロック」としてカテゴライズされるでしょうが、一応はプログレ耳でも聴けるバンドではあるもののプログレではないですよね。カンサス然り(笑)。

後期のジェントル・ジャイアントはアメリカの市場を意識して、かなりカンサス風の音にしちゃったりしていますが(笑)、まあ、アメリカという下地では形骸的なスタイルの上で個性を出す方が好まれる土壌なためか、アメリカの人達が「咀嚼」した考えというのは多少姿形を変えてきてはいるものの、和声面で見れば当時のビッチェズ・ブリューやらRTFやらカンタベリー系などの影響とやらを感じ取ることができると思うんですな。

ただ、セクションの「Forward Motion」においても、それまでのスワンプ・サウンドを好む層に向けて期待を裏切らないようなリフを演出していたりはするので、そこはやはりセクションの音になっているのではありますが、全体的にリバーブを深くした音響効果を狙って作っている部分もあるので(シンセの導入もありますし)、エレピやハモンドは許容できてもシンセだけは許せないという類の人達だと「やっぱり1stがイイよね」という声もありましょう(笑)。

ただ、クレイグ・ダージの色(毒ッ気の部分)というのは2ndアルバムが一番色濃かったりするので、そういう「毒ッ気」の部分で聴いても価値あるアルバムということを認識することができると思うワケでありますな。まあでも、このアルバム「Forward Motion」のリリースというのは1973年のコト。

巷じゃ「ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか!?ニ・ニ・ニーチェかサルトリか!?」

なんて野坂昭如のサントリーのCMやってた頃で、左近治もうわさのチャンネル(=デストロイヤー、和田アキ子など)見入っていた時ではあるものの、まだまだそんな時にセクションを耳にしていたのではありません(笑)。クーピー・ペンシルが発売されたのもこの頃ではなかったかな、と記憶しております。

ビッチェズ・ブリュー以降、1974年までというのはたった数年間といえど、音楽界においては非常に色濃い凝縮された時代であるので、この時代に感化された人が77年〜79年くらいに二次的な潮流を生むことになるんでしょうなあ。日本でも同様に。

ま、本題に入るとですね、「A Kind of Albatross」というのは、作品の仕上がり的な側面で言えばバンド・アンサンブルとしてのアレンジの余地は残されているのではないかと思うんですな。だからといってクオリティが低いどころか非常に高いモノであります。

クレイグ・ダージのほぼソロ演奏に他のパートを軽く付随させただけのような音でもありますが、クレイグ・ダージの和声感覚というか、これほどソフィスティケイトされたように用いている和声などは、後のクロスオーバー・ブームを見ればホントに先取りしていたかのようにも思えます。なにせのっけからのマイナー11thからのコードなど、70年代後半飛び越えて80年代前半の音にすら感じます。

たぶん、この世界観をいじりようがないと判断したので、他のパートは抑え気味にアレンジしたんでしょうけどね。それくらいピアノひとつでこれだけ洗練されていた音を表現していたというコトでもあるのかもしれません(実際にはどうか判りませんよ)。

まあ、原曲を聴いていただければ自ずとお判りになるとは思うんですが、C△9上で「一風変わった音」を聴くことが出来ると思うんですね。今回はココこそがキモなんですが(笑)。

普通に聴いていれば予期せぬアボイドの音が入り交じり、非常に「不協和」に聴こえるかもしれませんけど(笑)、おそらくこのアプローチはジョージ・ラッセルの有名なリディアン・クロマティックに則ったアウトサイド・アプローチだと左近治は思っております。

クレイグ・ダージはこのC△9上において「Db、Ab、Bb」という音を「ぶつけて」来るワケですが、全体的なハーモニーとしては、過去に左近治がグリーンスリーヴスのジャズ・アレンジで用いた「Bm△7/C△」というハイブリッドコードとほぼ変わらぬアプローチだと思っていただければよいかな、と思います。クレイグ・ダージのそれは「C△トライアド上でBm△9を見ている」という風に受け取っても差し支えないと思います。

過去の左近治のアレンジはクレイグ・ダージのパクリだと思っていただいても困るのですが(笑)、私がセクションの2ndアルバムを入手できたのは2年ほど前のことなので、この作品に出会う前から一応こういう和声感覚は身に付けていたのでありまして(笑)。とはいえグリーンスリーヴスのリリースが昨秋というのは説得力に欠けるかもしれませんが(笑)、パクりではない所は強調しておかなければならないと思っております。

私がガツンとハイブリッド・コードを弾いて、ロウワー部拝借のG音をメロディに置いているソレと、クレイグ・ダージのC△9上での「ぶつける」聴かせ方はまるっきり違いますが、得られる和声としては似たモノになってしまうので致し方ないのでありますが(笑)、いずれにしてもどこの馬の骨かも判らぬ左近治とて毒ッ気魂はいくらか備えておりまして(笑)、ある程度見えないモン見えちゃってる、という世界観を有しているので「いつでもあっちの世界は見ることができます」みたいなモノなので、同様に「あっちの世界」を見せてくれる人と音は酷似してしまうことでもあるんですが、クレイグ・ダージとどこの馬の骨かも判らぬ左近治と比較するのは非礼だと思いますのでアレですが、この辺は強調しておかなくてはならないと思っております(笑)。

まあ、両者のアプローチの違いが判らぬ人が左近治をパクリ扱いしようがそんなこたぁ眼中にありませんが(笑)。

私の今回のアレンジでは、後半の一部を割愛してループさせていますが、コード進行のそれはスムーズになるような箇所を抜粋して一応作っております。原曲の方だと迂回路がちょっと長目なようなので(笑)。

さらに付け加えておきますと、原曲はアコピ(セクションはアコピのオーバー・ダブが多いものの殆どはローズ主体です)なのでありますが、今回左近治はローズにしております。

ドラムに関してはハットとキック、わずかに金物入れてますが、キックに関してはジェフ・ベックのアルバム「Wired」収録の「Come Dancing」の音を作っていた時のチャンネル・ストリップ設定からエディットした音にしております(笑)。音源はXLN AudioのAddictive Drums(=AD)です。