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ぱるちど・あると [クロスオーバー]

扨て、今回語る曲は「パルチド・アルト」という曲でありまして、原曲は我らがベルトラーミのバンド、アジムスであります。

収録アルバムはというと、これまた名盤のひとつ「Light As A Feather」でありまして、このアルバムの中にNHK-FMの名盤組「クロスオーバー・イレブン」のオープニング・テーマである「Fly Over the Horizon」が収録されていたのでありまして、ご存知の方は非常に多いと思います。

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BTW、この「パルチド・アルト」なんですが、3月6日リリース予定曲なのでこうして語っているワケなのでありますが、今回の私のアレンジというのはスムース・ジャズ系にしているので、どちらかというとAレイ・フラーのアレンジにかなり近くなっていると思います(笑)。

A. Ray Fuller /The Weeper

Aレイ・フラーの「Partido Alto」はとにかくアコピ・ソロが絶品なので、特にメロディック・マイナーの使い方を学びたい方はかなり参考になる曲なのではないかと信じてやみません。

で、私はこの曲を制作するにあたって権利関係調べるまで知らなかったんですが、作曲者はベルトラーミだとばっかり思っていたんですが、実はアジムスのベーシストであるアレックス・マウエイロと、なんと!フローラ・プリムの共作だったというのが驚きだったんですな。

CDの「Light As A Feather」でクレジットを見てみると、ラテン文字の後に色々とクレジットがネーミングされていて、そこにはフローラ・プリムやスタンリー・クラークの名前もあるんですが、「Partido Alto」にはベルトラーミの名前しか載っていない筈なのに、権利上ではこうなっていたコトに驚きを隠せないんですなあ。とはいえ著作権管理団体の登録情報が違っていたりすることもありますけどね(笑)。

フローラ・プリムってどんな人?と思うかもしれませんが、かのミルトン・ナシメントもフローラ様に「ピザ買ってきて♪」と言われればナシメントが「レッツらゴー♪」してくれると思います(笑)。実際にはどうか判りませんけどね(笑)。まあ、深い関係にあることは間違いありません。

そのフローラ様にお仕えになっていたバック・バンドが「アジムス」だったのでありまして、アジムスの最初は「Azymuth」ではなく「Azimuth」という表記だったのですが、それ以前にZe Bertramiという名前でベルトラーミがアルバムを残しております。エレピじゃなくてバリバリのトーン・ジェネレーター使いとして。まあ、時代が「オルガンをシンセサイズ!」という時ですからね。

Eggにおけるデイヴ・スチュワートとベルトラーミのZe Bertramiの頃というのは結構ダブらせて聴くことができるかもしれませんな。

ビッチェズ・ブリュー以降の72年頃までは、多くのジャンルが垣根を越えて音への欲望が共通している世界がありますので結構好きな左近治なのでありまして、余談ではありますが、セクションの1stアルバムにおいてクレイグ・ダージは「Second Degree」という曲においてエレピにリング・モジュレーションを掛けたソロなどを聴くこともできまして、シンセサイザーもまだ無いような時代で「オルガンをシンセサイズ」するようなエフェクティヴな発想や、そういう発想をエレピにも昇華するなど、あの時代特有の音というのがこの辺りには凝縮されていて結構好きな左近治であります。

そういう成り立ちから日本ではクロスオーバー・ブームが起こり(概ねハロー・ミスター・モンキーとか流行っていた時とかその後)、後にクロスオーバー・イレブンという番組が生まれたという背景を今一度考えていただければ、器楽的・楽理的側面でもかなりモンドな嗜好のある人達が数々のムーヴメントを経て、そんな音楽をレコメンデッドしていた、という背景があったように思います。

今のようにプログレやらロックやらクロスオーバーやらジャズやら区別なく耳にしていた人達の功績というのはあらためて賞賛できるのではないかと思いますな。私の親類やらにも年の差は一回りほど違う者がおりまして、そんな人の影響を多大に受けて育ってきた左近治でもあったんですなあ。ほぼ半泣き状態でYMO聴きたい所にジェントル・ジャイアントの「So Sincere」聴かされていた少年時代を、私は今も忘れません(笑)。

ま、そんなハナシは扨置き、私がアジムスを手にしたのはやはりクロスオーバー・イレブンから入ったクチでして、スタクラ聴いてはいてもフローラ・プリムやらナシメントにはまだまだ手が届かない頃でありました。時代背景としては草刈正雄と渡辺貞男が資生堂のCMで共演していた辺りから私はベースオタクなのでご参考までに。

とまあ、今回「パルチド・アルト」を作ることとなったワケですが、とりあえず2バージョン用意しておりまして、ベースが指弾きとスラップの2パターンなのでありますが、バックの演奏や音質もそれぞれ若干変えております。

ドラムの打ち込みはAD(=Addictive Drums)を使っておりますが、エフェクト類はMetric Haloの+DSPのエフェクト類(特にゲートとコンプ)を多く使っております。ADのハットは中低域をEQでかなり持ち上げているんですが、これだとベロシティが強めの時に持ち上がり方が滑稽になってしまいかねないのでサイドチェインのコンプで帯域狙って押さえ込んであります(笑)。無論、このコンプもMetric Haloのモノです。

本音を言えばフルートにメロ取らせてデイヴ・ヴァレンティンっぽい雰囲気も出したかったのでありますが、オクターヴ奏法のフルアコでやってみても面白そうだなと思ってレイ・フラーのアレンジを参考にしたワケですな(笑)。

曲のキモであるブレイクのトゥッティのリズムは一寸変えておりますが、このブレイク時にはエレピにスラップ・ディレイ(withフィードバック)にディレイ・タイムの異なる(長目の)エコーを掛けている部分があるので、その辺のバス送りの音に耳傾けていただけたらなーと思います。曲のシメに実は、エレピにモジュレーション・ディレイを薄く掛けておりますが、ここでは外部に一旦信号出してTC-2290を用いているんですが、まあこういう裏舞台を書かなければまず気付かないと思います(笑)。2290じゃなければダメだったという場面でもないですが、「たまには通電させるか」という思いから使っただけのコトなので他意は全くありません(笑)。

2バージョンを比較して聴いていただければ判るコトなんですが、スネアの音は若干違うのはEQの施し方に若干手を加えているからであります。指弾きバージョンの方が僅かに生々しい音だと思います。スラップのバージョンでスネアが若干引き締まっている音にしているのは、スラップ・ベースの音との音のかち合いを避ける狙いでもあったので。

スラップ・ベースの音はマーカス・ミラーがF-Bass使っている時の音をイメージしていただければと思うんですが(笑)、フレージング的にはE弦をLow-Dにした時の指使いになるようなフレージングをしているので、その辺に気付いていただければ制作冥利に尽きる左近治であります。

最大の特徴はコーラスのサンプルにApple Loopsの中東のサンプルを用いている所でしょうか。やや中域をサイドチェインのコンプで抑えております。

全体のアンサンブル用のリバーブとして、アンビエンスにはKontakt3用のIRをスペース・デザイナーに用いて、さらにProsoniqの長目のIRをこれまたスペース・デザイナーに持ち込んで使っております。先述のエレピのスラップ・ディレイ&エコーはパラ出ししつつ、その音にアンビエンス用のリバーブへシリーズで掛かるようにしております。

こうして出来上がった全体像は左右それぞれ別にスプリット・ステレオにして各チャンネルに左右僅かに異なるセッティングのリニア・フェイズEQを通した上で最終的な調整をしております。EQはホントに僅かな違いでしかないですが、言わなければ判らないかもしれません(笑)。もちろん指弾きとスラップのそれぞれのバージョンでも違います。