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アナログ時代の録音から学ぶ [DAW]

まあ、私の場合はバリバリのカセット・テープ&オープン・リール世代の人間なんですが、極論すればガキの頃の家の車のカーステは8トラのガチャンコだったぞ、と(笑)。つまり、カセット・テープよりもさらに前という時代。

まあ、そういう時代を経験しながらカセット・デッキとやらを手にするようになって自分でレコードから録音する際のレベル合わせってぇのが、ある意味現在の礎になっているのかもしれませんが、その頃多く見ることのできたメーターはVUメーターだったんですな。

で、時代がLCDなどに推移してくると視覚的にもデジタルな視認性が増えてきてピーキング・メーター隆盛となってくるようになったワケであります。

当時の色んなオーディオ雑誌などでもTips的に繰り広げられていた録音のピーク合わせというのがありまして、例えばVUメーターにおいてある曲のピークの最高点を探って0dBに合わせようモノなら、ピーキング・メーターでは+6dB〜8dBくらい平気で超えていたりするんですな(笑)。それでもテープそのものが保持力あったりすると飽和せずに耐えてくれたのがアナログ録音の世界。当時はVUメーター読みで-10dBくらいに合わせて録音していたモンでした。

テープが安物だとすぐに音が割れてくるんで、結果的にメタル・テープが視野に入ってくるワケでありますが、高級機くらいにまで手を出さないとヘッド周りの耐久性に難があったりして、密着度の高いメタル・テープは摩耗が激しくなったりするんで大変だったんですな、コレが。

摩耗もしていないのに、ペンライトとデンタル・ミラーでヘッド周辺の光の湾曲が有無を探っていたら、変なトコ触ってアジマス微妙に狂わせてしまったとかですね(笑)、まあ、色々苦労が伴ったモノでありました。

しかし、そういう時代を経験しているから現在のデジタル録音においてもピーク合わせというのは非常に役立っていると思いますし、過剰な音圧上げにせず、ソコソコの音圧を保ちながら調整するというのは本当によく役立っていると思います。

DAW環境で手軽にVUメーターの特性を読めるのは、SonalksisのFreeGというモノがあったりするんですが、他にもロジャー・ニコルスのInspectorなどは2種類のアベレージ表示が可能だったり(ピーキングも同様)というものがあったりします。FreeGはフリーのプラグインであるにも関わらず、メーターの特性が多く用意されているのでかなり便利だったりするワケでして、使っている方も多いと思います。

先のブログ記事でも、最近の某ドラム音源のマルチ・バンド・コンプによる超高域のイジり具合のいやらしさについてチラッと触れたと思うんですが(笑)、こーゆーのを探るのにはInspectorのAVGでのFast表示が功を奏したりするんですな(笑)。F社のドラム音源「B」とかのスネアの音とかチラ見してやって下さい(笑)。同一ベロシティで連続させても可変するのはマルチ・バンド処理の部分だったりするのが判ると思いますよ、って意地悪な左近治、今日も健在!

ドラムだけではなく、アンサンブル全体としてミックスが出来上がった時のレベルはどんなモノなのか?というと、私の場合は特別な意図が無ければVU読みで-9〜-11dBに合わせることが多く、近年よくある音圧上げのモノと比べると低い方であると思います。というか、VU読みの-6dBから上っていうのは、そこから先は全体のレベルを相当上げない限りなかなか上がってこないとも思うので(笑)、凄い世界を想像できるんですが、ドラムやベースのリズム隊だけのオケでも、音圧上げ系好きな人はそれ近くレベルが行っているコトも多いと思います。

とはいえ他のアンサンブル混ぜてきたってそこから先がすぐに跳ね上がるワケでもないのもVUの特徴的な部分ですけどね。歌モノならばボーカルの処理によってかなり変わってくることもあるでしょうし一概には言えなかったりもしますが。

通常、DAWでのプロジェクトはサンプルレート周波数は人それぞれでしょうが、16ビット環境でやる人はかなり少ないと思うんで24ビットがスタンダードだと思うんですが、16ビットのプロジェクトで先述みたいなことやると音圧上げこそがアウトだったりするんで注意が必要です(笑)。

BTW、ドラム音源における「細心の注意」とやらも、近年のドラム音源のデータ容量やベロシティ・レイヤーなど多岐に渡る高度なサンプル編集から見れば、「PCMシンセ」などと言われたデジタルシンセ黎明期の頃の音と比較すれば、そのリアルさ加減など雲泥の差でありましょう(笑)。MIDIレベルでは打ち込み方すら異質といえるほど別次元かもしれません。

それほど贅沢になったドラム音源とやらも、単体で聴く分にはキャラクターも立っていて、音質面においても耳に抜けてくる触感を活かしたアプローチでリリースしているようですが、いざアンサンブルに溶け込ませると、当初描いていたドラムの音とはどんどん違ってくるように感じられるという疑問というのが少なくとも私の周囲ではよく耳にするコトなんですな。

そんな細部や主観の領域にまで持ち込めるであろう疑問を私などが解決できるわけではないのでありますが(笑)、彼らの疑問に共通することは、MIDIレベルの編集においてもベタで組むワケでもなく、グルーヴィーなズレを率先して導入していたり、ベロシティの編集具合なども凝っているのに、アンサンブル全体として聴いた時に音が引っ込むような印象を抱いている、というワケです。

m_Waveform_ds.jpg


今回画像で用意したのは、ある曲のアンサンブル全体を抜粋した波形エディタ上での画像なんですが、最初の強いアタックというのはキックなんですが、その直前にキックとは相対的に前にある音が僅かに速く鳴っているという音だということが確認できると思います。

一方、次の強いアタック部分は立ち上がり鋭く、前ぶれが無いかのように波形としてはペッタンコ状態でアタックが立ち上がっています。コレはリム・ショットの音だからこうなっているんですが、とりあえずドラムというのはアンサンブル上においても視覚的にメーターで見ても音的に占めている割合というのは非常に高く、音量的にも音圧的にも存在感があり、ましてやキックなどは相当なエネルギーを備えているというワケであります。

しかしながら、それほどのエネルギーを備えているはずのソースが引っ込む!?というのは別な所に問題があるのではないのか?と私は思って提示したことがコンプの扱いなんですな、キックの。

因みに、彼らが言う「引っ込み加減」というのはあくまでも彼らの主観なので、どういう音を基準または理想としているのかまでは把握しておりませんが(笑)、とりあえずはそんな彼らの主観に「変化」を与えようと思って、キックのコンプから設定を変えてみることにしてみたんですな。

コンプやらEQというのは、そのヒトのクセとやらが非常に出るタイプのエフェクトだと思っているんですが、コンプなどのダイナミクス系のエフェクトに関しては、どんなに個人のクセを備えようとも懐がデカくないと対応しきれねえ!という向きがあるように思えますので、画一的な設定だけは避けようと私自身注意を払っていたりするんですが、その彼のキックに掛かるコンプのパラメータを確認してみると、私が思い描くセッティングとは違っていて(当然)、特に顕著だったのがスロー・リリースだったのであります。

コンプの前段にはサイド・チェインド・フィルターによるゲートで余分な余韻はカットしてあるというタイトな音で、その上でコンプの「ズシリ」感を得ようとする音を狙っているというのは単体で聴けばその思いは伝わってくるのでありますが、コンプのリリース・タイムというのが他の楽器でも非常に大味なセッティングなため、メリハリが無かったように感じたので、とりあえずキックのコンプのリリース・タイムだけ短くしてみたら、その彼は納得してくれたというコトがあったんですな。

重要なのは、この件でのコンプのリリース・タイムはたまたまキックを弄っただけで変化を感じ取れただけのことで、多くの曲で活かせるモノではないよ、ということを念押しした上で、他の楽器類にも使用していたコンプ類のセッティングに変化が少ないために(悪く言えば似たようなセッティング)招いているコトだと思うよ、と伝えたワケですな。

アンサンブル全体においてもそれほど楽器のパートが多いモノではないのに、ドラム音源そのものだって音が「立つ」ようにデフォルトで味付けしているというにも関わらず、現実はこういう風になってしまいかねないという悪い見本のようなモノですな(笑)。

MIDI環境の管理や編集大全盛でO2RやDAT直録り全盛という一昔ほど前の時だと、積極的にコンプを扱おうとするコトすら少なかったように思います。掛けなくて済むならできるだけ掛けたくないというような風潮すらあったモンですが時代は変わったモノですな。

多くの楽器で「大味な」コンプを掛けてしまっているものだから音像を平滑化させてしまっているようなモノでメリハリが付かずに埋没させてしまうという結果を招きかねないという例だったのだと思うんですな。ましてや自分の知らない間にマルチバンド・コンプの処理がされていたりすればアンサンブルに溶け込んだ時に立ってほしい帯域とやらは、元から作られたキャラクターの音の狙っている所とは全く違う帯域だったりするんで結果的に引っ込んでしまうという(笑)。