SSブログ

Walter Becker 「Medical Science」 Analysis [スティーリー・ダン]

最初のギターでのサイレンSEは3分20秒付近に現れますが、上記のコード群にあてはめるとパターンCの4小節目に相当します。
F音とDb音でのサイレンSEを2拍目から3拍8連のタイミングで弾きます。すなわち、アッパーのF9においてルートとb13th音でのサイレン。そして次の小節に行く時に「ドップラー効果」的に長3度音程を半音ずつ下降していくので、戻った時にはCm11上から

E音とC音、これが半音ずつ下げていきます。E→C→Eb→B→D→Bbという風に。このドップラー効果的な半音下降フレーズ過程の「Eb→B」が出現した瞬間、以前私が「Green Sleeves」をリリースした時のリハーモナイズ・アレンジで「BmM7/C△」という、チェレプニン・モードを想定したコードを使ったことがありましたが、「Medical Science」のこの部分はまさにそれに置き換えられることができます。D音出現以降の下降フレーズは元のCマイナー系(Cドリアン)を示唆する音でクロマチック・アプローチしていく、と。細かなモード・チェンジを示唆しているワケですが、元はBチェレプニンを想起してフレーズを開始しております。

チェレプニン・モードに慣れると、この手の瞬間的なアプローチも見逃す事なく耳に入ってくると思います。

その後のサイレン音はやはりCm11上ではBチェレプニンを想起したフレーズで、長三度→短三度→長三度・・・という風に巧みに下降していきます。サイレンフレーズ全てがチェレプニン・モード内にあてはまるワケではなく、フレーズ中でモード・チェンジが行われているという所に注目してもらいたいワケです。

私が「Green Sleeves」で用いたアプローチは「和声欲張り型」と思っていただいて差し支えありませんが、ああいう響きを浮かべることができるようになったのは「Medical Science」がかなりのヒントとなっているのは疑いの余地はありません。

ベッカーの「11の心象」が発売された時、私は濱瀬元彦著の「ブルー・ノートと調性」において、チェレプニン音階については知ってはいたものの、全く使いこなすことなく、ただ単に「特殊な音階」としての知識にとどまっていたものでした。

私は濱瀬氏の音楽への真摯な取り組みに敬意を表していたので、初版本を予約して購入したものでした。そのリスペクトの念を抱いていたのは他でもなく、氏が「Performer Perfect Reference」というMOTU社のPerformerの解説本でのPerformerのみならず繰り広げられる解説に心うたれたからです。今でこそコンピュータ・ソフトの解説本など珍しくありませんが、音楽業界においてまだまだコンピュータという環境に全幅の信頼など寄せることなどできず、シーケンサー的な動作なら導入してやってもいいか程度の時代に出版された「Performer Perfect Reference」のような内容を凌駕するような解説本はいまだかつて存在しないのではないかと思えるぐらい評価されて然るべき本でありましょう。

濱瀬氏のそれらの2冊が大体2年程度のスパンで出版されて、その後「11の心象」リリースとなって、ある意味私の音楽の理解度とタイミングが合ったのが幸運でもありました。


Pattern A (1-8)
1小節目・・・・Fdim7(9)/Ab --> Fm9(-5、13)/Ab --> F7(+9) --> F7(+9)/G
2小節目・・・・GbmM7(+11)/A --> B7(-9、+11) --> B7(-9、+11)/A --> B7(-9、+11)/G
3小節目・・・・Dm9 --> E7(-9,+11,-13)/C
4小節目・・・・Dm69 --> FM7 --> E△/G --> Ebm9 --> EbmM9/Gb
5小節目・・・・Fm9(-5)/G --> G7(-9) -->FmM9(13)/G --> D7sus4/G
6小節目・・・・CmM9(11) --> Em7/A
7小節目・・・・Ebm11
8小節目・・・・Ebm9 --> Ebm11

Pattern A (9-16)
1小節目・・・・Fdim7(9) --> Db7(+9、+11)
2小節目・・・・Gbdim△7/A --> GbmM7 --> B7(-9,+11)/G --> B7(-9,+11)/A --> B7(-9,+11)/G
3小節目・・・・Dm9 --> G7(+9、13)
4小節目・・・・Dm69/G --> Fm9(-5) --> Ebm9/Ab --> EbmM9/F
5小節目・・・・E7(-9)/D --> Dm7(-5) --> D7sus4/G
6小節目・・・・CmM9(11) --> Em7/F
7小節目・・・・EbmM9/Gb --> C7(+11)/Bb --> Fm7
8小節目・・・・EbmM9 --> Eb7

Pattern B
1小節目・・・・DdM9(+11)
2小節目・・・・Fm7(11)/G --> Fm9
3小節目・・・・Bbm9
4小節目・・・・GbM9/Bb --> B7(-13) --> Bbm

Bridge
1小節目・・・・GbM7(+11、-13)/Bb --> Bb69
2小節目・・・・DbM7(+5)/A --> A7(+9、+11、-13) --> F#mM7(+5) --> G7(+11)

Pattern C
1小節目・・・・Cm11
2小節目・・・・F7(13)/C
3小節目・・・・AbM7(+11、13)/C
4小節目・・・・F9/C