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Walter Becker 「God's Eye View」 解説 [スティーリー・ダン]

しかし凄いベース・ラインです・・・。このライン聴いているだけでも心地よい・・・。

いやまあ、音符をなぞる程度でしたらベースの初心者だって軽く弾くことはできるラインですけどね、これにノリやメリハリを出しつつこのラインを弾くというのは、相当腕達者なヒトではないと弾きこなせないという意味でして。

ベーシストってぇのも色んなタイプが居るもので、ソツなく「棒弾き」タイプのヒトが受けるシーンだってありますが、私はそういうタイプはあまり好きではないのであります。名前は出しませんが、とある9文字カタカナの芸名でフォデラ使ってる日本人の方とか顕著な例だと思います。

正直、リンカーン・ゴーインズもこっち系なんですね。デイヴ・ヴァレンティンでは必須のベーシストですが、日本ではこの人の名前がある程度知られるようになったのは90年代に入ってからでありましょう。フォデラを使うベーシストとして。ベーシストとしてはかなり古い、それこそ70年代後半から活躍している人ですけどね。

なにはともあれ、棒弾きタイプのベーシストでは決してこのベース・ラインを操ることはムリであろうと思われるんですが、あらためて、ベーシストとしてのウォルター・ベッカーの腕の確かさを確認することができる曲でありましょう。

そんなベッカー自身、これほど判りやすいリフで構成している曲においても毒味をちりばめるコトは忘れません(笑)。あまりの叙情性に感覚マヒして毒に気付かない方だっているかもしれませんが、この毒ッ気をスンナリ聞き流せてしまう時はすっかり毒に冒されているという証であるかもしれません(笑)。

曲ド頭のアルペジオのフレーズはBbM7(+5)を示唆する響きです。ベッカー先生お得意のコードでもありますし、どんなモードを想起するのかということはこれまで散々語って来たので今更説明の必要は無いかと思います(笑)。

この曲の特徴的なギミックは、そのアルペジオのフレーズは8分食って入る。

すなわち8分音符ひとつ分弱起(シンコペ)で入るので、拍のカウントに騙されてはいけません(笑)。

しかしその後、キース・カーロックが1拍12連のロールで入るのは8分裏から入るようになるので、このダブル・ストロークの入りは意外に難しいタイム感になるので注意が必要です。

何故かというと、1拍12連のダブル・ストロークの動作は片手がそれぞれ1拍3連の動作で、片手の意識が強いと8分裏からのタイム感は非常に取りづらくなるので、1拍6連の感覚を持ちつつ半拍3連で入るように叩かないとキレイに決まらないだろうな、という難しさの意味であります。

ちなみに今回の左近治のベース・パートはJB系の音ではなく他の音に置き換えました(笑)。音をひとたび聴けばお気付きの方も居るとは思うんですが、この音はチャップマン・スティックですね(笑)。

ただのスティックの音ではなくて、この音はクリムゾンの「ディシプリン」に収録の「Indiscipline」っぽい音にしているという所に気付いていただくと、制作冥利に尽きるってぇモンです(笑)。

クリムゾンのあの音はおそらくエレハモのMicro Synthesizerを通した音だと思っておりますので、GuitarRigと他のエフェクトをパラ出ししながら音作りをしました。

和声的な意味でも実は重要な毒ッ気はさりげなくちりばめられておりまして、流石ベッカー先生、その辺りは抜かり無し!

私の着信音は歌メロに入る直前の所までで留めたループにしておりますが、歌メロに入る直前の小節の3&4拍目では上モノ(おそらくウーリ)は、

Eb△ → D△と動くんですが、ベースも視野に入れると実はそう単純な和声ではないことに気付かされるワケで、これがチョットしたワナであり、毒ッ気なのでもありますな(笑)。

まあ、Eb△の所はFマイナー・フレーズから移行したと考えてイイんですが、4拍目にベッカー先生は8分でEb音→F音と動かしておりますんで

D△/Eb → D△/F

という風に動いているコトと等しくなりまして、和声的には実はこの動き全体で

「EbmM9」で、ベッカー先生はルートと9th音を選択していることになるんですな(笑)。

こういうベースの音選びをソツなくこなす(それも自然に)のもベッカー先生のセンスの良さが一層際立つワケですが、あまりに叙情性にハマっているのでスンナリ受け止めてしまってその毒ッ気すら気付かせないようなさりげなさがポイントですね(笑)。

アンサンブル全体で「EbmM9」の音を欲張るワケでもなく、和声を巧みに「解体」しているというワケですな。

ただ単にマイナー・メジャー7th系の音にようやく慣れたとか(笑)、メロディック・マイナーの使い方がようやく掴めて来た、というような類の人達とはセンスがまるで違うんですな(笑)。一朝一夕ではそうそう会得できぬ彼岸にベッカー先生は存在しているのでありますが、あまりにも自然なため、こういう音にすら気付かぬ輩は他の部分の自分の好き嫌いを基準にしか物事語れなくなってしまって、しまいにはダメ出しまでしようとする始末(笑)。

悲しいかな、スティーリー・ダンのファンの中には、こういう重要な音にすら気付いていないクセして屁理屈だけは立派にボヤこうとする輩がいるのが残念なんですな。

だからこそ「11の心象」にダメ出しする輩が多かったと思うんですがね(笑)。

こんなにシンプルなアンサンブルや判り易いリフにしてくれているにも関わらず、重要な音を見落としているようではSDなど聴かずにTKでも聴いていて欲しいと願うばかりです(笑)。

ちなみに左近治は、この曲のビートはハーフ・タイムで取っているため、最後のウーリのコードの動きこそが8分の動きに聴いてしまう方もいるかもしれませんが、私はそれを四分音符の動きと聴いているので「3拍&4拍目」と述べているので、その辺りはご注意を。

仮に、非常に遅いテンポとして聴いていた人が居たとすると、あのカーロックのロールはどういう音価に聴こえているのか別の意味で興味が沸いている左近治ですが、まあ、細かいこと抜きにして曲の深部を味わっていただければな、と。