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毒に慣れるコツ [スティーリー・ダン]

 さ〜て、そろそろ左近治ブログの毒性強まる頃なんで更に強度を増そうと企んでいる左近治であります。なにせウォルター・ベッカー御大の前作「11の心象」収録の「Medical Science」の楽曲分析が控えておりますんで(笑)。


 とりあえず12月5日にリリースしたものはAメロの8小節部分をリリースしたワケなんですけどね、「Medical Science」の主要な部分というのはこれからも続きますんで、あの曲の凄さというものをあらためて感じていってほしいんですな。

 毒には興味はあってもいかんせん使いこなせない、という方は多いと思います。まあ、耳の習熟なんて向こうからやってきてくれるモノでもありませんし、その魅力に気付かないクセして楽理面だきゃぁアタマでっかちになってしまった、なーんて人だって普通に存在するのが音楽の世界でもあるのでそんな所にアタマ痛める必要はないんですな。

 ただ、そんな毒の世界にも「慣れ方」ってぇのはありまして、「習うより慣れろ」じゃあいつまで経っても習熟しないのが耳の現実なのでありますから、普段の音の聴き方ってぇのを少し変えてみるのも手じゃないのか!?と話題を振るコトに(笑)。

 私の周囲で感じたことではあるんですが、耳の習熟度が浅い人というのは、そんな人達でも和声面において興味を抱いているのは多いんです、実は(笑)。もちろんコードネームやらある程度の楽理面において知識のある人間ひしめいているんですが、彼らの共通する部分というのはですね、自分の肥やしになりきれていない和声を聴く時、必ずと言ってイイほど「白玉」で延々と音を伸ばして音を探ろうとするんですな。

正直、これはアウツ(笑)。

 自分の耳が習熟していないというコトは、ある音に対して自分なりのバイアスがかってしまっている「特性」を持ってしまっているためにどっかの音に重心を傾けて聴こうとしてしまうんですな。そんな自分の状況を把握していない所に延々白玉でコード拾って鳴らしても耳はなかなか成長してくれないんですな(笑)。

 取り敢えずベターな方法は、白玉ではなく「スタッカート」で弾け、ってぇコトなんですな。

 んじゃまあ、「Ab△(-13)/Bb」なんてコードあったとします(笑)。構成音は「Ab、C、EbにE音足して、ベースがBbってぇのは理解できているワケですが、これを白玉じゃなくてスタッカートで1拍や2拍ずつスタッカートで弾きなさい、ってコトなんです。

 鳴っている音よりも音がない時間の方が多いワケですね。でも、コレでイイんです。例えばコレが鍵盤であれば、音が無い間の差異感を欲するので前後の自分の打鍵具合はもちろん、自分の「クセ」として持っている所とは違う音に対して差異感を注力することになるんで、特定の和声に対して偏った情緒を偏重するコトなく身に付けるコトができるんですな。

 少なくとも私の周りではそんなヒト見かけたらこういう風に助言をしております。こうすることで毒ッ気が強かろうと、現実に目の当たりにするであろう毒ッ気の強い和声であっても慣れ親しむことへの早道となります。

 ま、そんな毒の世界への扉を開いた所で、今回は左近治がまだまだ解毒しきれていないフグのカラスミでも用意することにしまひょ、と(笑)。

 今回の題材はYMOの「テクノポリス」にしてみましょーか。YMOが生まれて30年。私の世代や私のちょっと下の世代はYMOがメートル原器のようにデフォルトとなっている人は結構多いんですが(笑)、敢えて今回は断腸の思いで「テクノポリス」が題材です。


 原曲の「テクノポリス」の出だしってぇのは、2拍ずつコードが動いているんですよね。「Gm→G△ ×2  Dm→D△ ×2」という風に。このコード進行にシンセリードの旋律で、ピアノの白鍵でいえば「ファーレソーレ ×2 ドーラレーラ×2」と加わってくるんですね。


 今後のベッカー先生の毒に慣れてもらうためにも、このコード進行を今回アレンジしちゃいます。コードチェンジは2拍ずつ、こーゆー風に↓


F♯△7aug/G --> A♭dim△7 --> Gm7(13)/E --> E♭△7aug --> A9/D --> B♭△7aug --> Dm7/E♭ --> A♭△/D△


 私のブログを継続して読まれている方なら、こーゆー風なコードネームから構成音を探ることが出来ると思いますので敢えて構成音までは明示しません。というよりも、コレくらい判ることが最低限のラインともなるのでご容赦を。

※あくまでも先のコード進行は、原曲に対する私の「過剰な」粉飾でありますので原曲のコード進行とは大きく異なります。特に「Dm7/E♭」というコードを私は2ヶ所で用いており、1つ目は原曲の同主調主和音&下属和音同士の「Gm→G△」「Dm→D△」での「D△」で生ずる部分で用いた物。2つ目は、原曲での同主調下屬長和音に依る偽終止の前のブリッジにて生ずる「E♭△9 (♯11)」とする部分の♭Ⅵ度(フラット・サブメディアント)上のコードとする部分であります。私のアレンジでは、この箇所での和音は短調としての原調の姿を大きく予見させてしまうので、それを暈滃させる為に敢えて「Dm7/E♭」と充てたのであります。

 んで、この変奏コードに先の「シンセリード」の旋律をそのまま弾いてください。DAW環境のある人なら打ち込んじゃって下さい(笑)。


 賢明な方なら、ド頭のコードの部分で「オイオイ、シンセリードのF音とバックのコードの長七のF#音ぶつかってんじゃねーか」と思われるコトでしょう。

 ハイ。根音と長七と増六の響きに慣れてもらうためにこうしました(笑)。でも、いくらぶつかっているようでもあまりに酷い不協和として認識されるでしょうか?私はそう思いません(笑)。


 作曲者である坂本龍一がテクノポリスという曲を世に送り出したのは、おそらくサカモトの世界観とやらをエラく判りやすく「噛み砕いた」モノであろうことは推測できるんです。まあ、ハチがとにかく噛み砕いて咀嚼して、幼虫にエサ与えると。あれはテクノポリスならぬプロポリスってか(笑)。まあ、とにかく坂本龍一の世界の噛み砕かれた世界をもう少し尖らせるようにアレンジしてみた結果、今回左近治はこういうコードアレンジにした、というだけのコトです。重要なのは、そのコード進行とシンセリードから生まれるアンサンブルを感じ取ってほしいな、と。

 この変奏アンサンブルから導きだされる響きは、後にベッカー先生を語る上で非常に重要な音になるので、今回は前フリも兼ねてこーゆー風に提示してみたってぇワケであります。