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YMOの「NEUE TANZ」(=新舞踊)にヒントがあったリバーブ設定 [YMO関連]

え〜、リチャード・アルダーソンのミックス関連の続きをば。

先のグローヴァー・ワシントンJrのソロ・アルバム「Come Morning」収録の「Making Love To You」を中心に語りたいと思いますが、私がこのアルバムに入れ込むのはその音もさることながら、ミックスにおいて非常に興味深いワザを確認することができたからなのであります。

例えば、リチャード・ティーの弾くローズのパートひとつ聴いても、ローズの実像ではなくリバーブ音が音場を包み込むようにして、ステレオ感のあるリバーブが施されております。これはコーラスやらでのステレオ感とは違います。

この手の「包み込むようなリバーブ音」というのは、EW&Fのアルバム「I Am」(邦題:黙示録)の歌パート類に使われているリバーブと似たようなイメージを当時抱いていたモノです。このアルバム「黙示録」も私自身はミックスを学ぶためのマスト・アイテムなんですが、特にドラムのタイトなゲートのセッティングは非常に勉強になったものであります。雄大な長岡秀星のイラストレーションをそのまんま音としてイメージできるような、包み込むようなリバーブ感、ここに共通点を見いだしていたのが当時の左近治。

とはいえミックスにおいてアレコレ覚えるようになるのはそれから4年経過してからのコトだったのでありますが、色々試行錯誤しながら、気が付けばレキシコンの480Lを弄れたりしたという時代になっていたんですな(笑)。

例えばリバーブをBUSにアサインして各トラックのセンド量で送り量を決めていきますね。リバーブの基本でもありますが。ただ、リバーブがフル帯域鳴っているというのもこれまたお風呂場エコーを具現化する程度にしかならず(笑)、ましてや「音のサステインを伸長させる」ようなプリディレイのつかみ方というのは、教えてもらわない限りなかなか身に付かないワザだと思います。

しかしながらリバーブの奥深さとはその先のフェーズにあるもので、例えば広めのBPFを噛まして低域と高域をロールオフさせます。で、リバーブの後段にEQをステレオで、例えばLchの1.7kHzを+0.2dBほどブーストしたらRchの同じ帯域を-0.2dB下げてステレオ感をより演出したりとかですね、「その先にある」フェーズでのエディットというのは色々な道が用意されているモノであります。

但し、こーゆーコト施しても現在はデジタル・ミックスの世界。音像のセンターがかち合うワケですな。実像の音とリバーブの間接音のセンターが。

アナログ・ミックスですらセンターが強く現れるのに、デジタルでやったらもっと厚ぼったくなってしまうというジレンマ。

それを解決してくれたのがYMOのアルバム「テクノデリック」収録の「NEUE TANZ」のリバーブだったんですなあ。左近治が20才頃というのは、この曲聴いて目から角膜が落ちたモンです(笑)。

例えば、「NEUE TANZ」のケチャを模したボイスSE、「ザッザザザッザ!」というサンプリング音。曲中盤ではわざとセンターをキャンセルさせたようにしてバストラックのみのリバーブ音だけでボイスSEを鳴らしている所ありますね。これが最大のヒントだったというワケです。

奇しくも今回取り上げた3枚のアルバムのリリース年代などほぼ同時期です。それでいて全く異端とも思えるYMOからまさかヒントを得ようとは思いもよらなかったというのが左近治の当時の心境でありました。YMOのこのアルバムに収録の「Light in Darkness」という曲などブランドXっぽくて興味深い曲ですが、飛び道具的な音に耳奪われて大事なところを聞き逃してしまっていたというところが当時はもどかしかったというのもありました。「今まで何聴いてたんだ!?」と自責の念にかられたことも(そこまではオーバーですが)。

楽理面に無我夢中になっていた時代に、ミックス面だけを探れと言われてもムリだったろうなぁとは思うんですが、楽理も知らないリスナー的視点での音楽を聴く心地よさという視点を忘れてしまうと、ミックスは疎かになるものなのだろうなあ、とこれに関しては今でも注意している部分でもあります。

小難しいネタばかり取り上げるような左近治でありますが(笑)、五感だけが頼りの、コトバも知らぬ生まれたままの姿でオムツしてるかのような純朴な姿勢というのは必要なのかもしれませんな。小難しい方向ばかりからモノ見てると見失っていたり聞き逃していたりすることがあるんだと。そこに気付くには両面を知らないといけないので結局は回り道をしているような「模索の時代」というのは必要なのかもしれませんけどね。