SSブログ

生々しいハイピッチ・スネア [ドラム]

ココん所、ウォルター・ベッカーのCircus Money収録の某曲を制作していたので、たまにはダブ風レゲエタッチの曲でもヒマつぶしに作ってみようと思い、今回のサンプルはレゲエ。



この手のスネアの音だと、実際にはかなりEQやらでも弄っているワケですが、余韻を切りきれていないとコンプのセッティングが非情に難しくなってコンプのスレッショルド設定などかなり厳密に設定してもチャタリングを起こしかねず、概ね破綻しやすい音になっちまうワケですな。

ゲートで追い込んでSCフィルターも追い込んだり、複数のニー・カーブで追い込んだりして「カラッ」とした音(原音として)に仕上げるのがまず第一の作業。

そこからコンプで追い込んでいく、というやり方なのでありますな。コンプのセッティングなど同じセッティングなど存在しないかのようにソースによってはまるっきり発想すら変えないといけないくらい奥の深いモノ。たったひとつのソースで満足のいくコンプの設定をするだけで数時間くらい時間が費やされることなど日常茶飯事。

まあ、その過程では辿り着けない音への迷走ばかりではなく、ひとつのソースから音を仕上げるだけでもその過程で色々な音に出会うことがあって、ついつい回り道をしてしまったり、そういう出会いが多いからこそゲートやコンプの作業においては常に新しい発見があったりすることが多いので、それを苦労と思わず楽しんでいるからこそ余計に時間を費やしてしまうという裏事情なのでありますな。

例えばキックの音ひとつ作るにしても、ひとたびコンプを弄って低域とは別に中低域や中域に注力してアレコレ編集していると、コンプ独特のカーブによって低域のエンベロープの動きとは少し違う「ハミ出た」音に出会うことがあると思います。このハミ出し加減とやらが実に心地よいモノだったりするわけですが、空気のうごめきと高域までには及ばないオイシイ倍音成分の集合体のソレは、低域の動きとは若干違うそれをいかに操るかでもかなりキャラクターは変わってきますよね。

それとは別にアタック/リリース・タイムを極端に変えてしまうと今度は高周波を「逃がす」ようなセッティングもあります。急にベチベチ感が出たりなど。キックにおけるこういう音が実は今回のようなスネアの音作りには結構マッチングしたりもします。その後段の薄いリミッティング程度のダイナミクス加減が難しかったりするワケですが。

アコースティックという呼称はエレクトリックの対義語のように思われているかもしれませんが、実は違います。

その音本来の持つ部分音が僅かに間接音とも合わさっている状態がアコースティックとやらの本来の意味であって、アコベのボディの共鳴やらピアノの反響なども「アコースティック」なワケですね。自然界の間接音を利用した「箱鳴り」と思っていただければ(笑)。

無響室でピアノやらアコベ鳴らした日にゃ、とても本来のソレとは思えぬほどのペラい音になっちまいますんで、不要な残響や間接音やらを削ぎ落とつつも、重要な共鳴感だけは失ってほしくない。いくら弄くり倒しても生々しさが失われてしまうようではマズイので。そういう音作りが、今回のようなスネアの音になると思っていただければ夏休み中のヒントになるかな、と。