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ブッ飛びヴォイシング解説 [スティーリー・ダン]

扨て、先週リリースした「EFX35」における楽理的な話題でもしよっかな、と。

ギターのカッティング・フレーズのみ抜き出せば、最初は

「B♭△7 (on C)」を弾かせて、これを半音ずつ上げ下げして


B♭△7 (on C)→A△7 (on B)→A♭△7 (on B♭)→A△7 (on B)→くりかえし


というモチーフではあるんですが、クラビ、エレピ、クワイヤーが絡んでくると実はこういうコードではありません(笑)。

とりあえずチラッと語っていたのは、「マイナー・メジャー7th」と「メジャー7th(♭13)」を随所に使って、ベッカー先生に触発されて・・・うんぬんというクダリで語っておりました。では、それらのモチーフが一体どういう風になっているのか!?ということを赤裸々に語ろうかな、と(笑)。

実際のギターのヴォイシングはメジャー7thの5th音をオミットこそしてはおりますが、B♭△7 (on C)というのは疑いありません(笑)。

ただ、エレピが入ってくるとセンタートーナルであるG(ここではGmもっといえばGドリアン)音を用いているのですが、コード表記は「Gm7 (on C)」という4度ベースには絶対したくないんですな(笑)。

リリースしているのは実際にド頭からエレピ入ってますんで、この解説は無関係かもしれませんが、コード表記としては「B♭△7(13) (on C)」という意図なのです。

アッパーにGm7なんて提示した日にゃあ、大概のヒトはGを強く意識して、ただでさえフラついたアッパーストラクチャーの響きの中において、あからさまにGを弾かれたら、もぉ~、左近治はプルプル右京さんのように激高しちゃいます。そんなトラブルを極力回避するためにも13th音として提示しているワケです(笑)。

「黙ってそうやって弾いてろ!」みたいな(笑)。

Gに帰結しようと安易に弾いたら、掌底の1発や2発、人中に(じんちゅう=鼻と口の間)かましてやりたくなるってモンでさぁ(笑)。

というのも、4度ベースってぇのは左近治の場合はアッパーがペダルになっているシーンにおいてじゃないとそういう表記は避けているのです。

Gm7がアッパーでC音ベースなら、E♭音かE音で、C音をルートとしたコードを想定されやすいために、安易な音選びをして欲しくないからこその配慮なんですな。

無論、こういうコードでソロ取るシーンであらば、モードを提示します。結局はGドリアンのトーナリティーを意識させているのだからE音使えば、確かにC7系ではあるんですよ(実際にはB♭△/C△です。C7における11thはアボイドノートなので。)。まあ、感覚的にアタマのどこかでGドリアンとFドリアンの行ったり来たり程度でもとりあえずはオッケーではあるんですが。

但し、C11(=C7(9、11))として響かされた日にゃあプルプル右京になってもやむなし(笑)。スプラッシュ抜き取ってフリスビーのように投げつけてやりたくなるってぇモンです。いや、ライドかな(笑)。


ちなみに、コード表記のそれを理解されている方は説明不要とは思うんですが、

C11やらCm11というのは、7thと9th音も含んでいるので御注意ください。ご丁寧にCm7(9,11)と表記してあるような楽譜も目にするとは思うんですが。C7(9、11)というのは11th音がアボイドになるけれどB♭△/C△だとアリ、というコトに納得がいかない人は別方面の楽理を学んでください(笑)。


では、リリースした楽曲の1小節目は「B♭△7(13) (on C)」。2小節目は1拍半+1拍半+1拍という風に3つのコードがありますが、2小節目の最初の1拍半は1小節目と同様です。

2つ目の1拍半の部分は
「B♭△7 (♭13) (on C)」

で、2小節目の4拍目が
Dm△7 (#11、13) (on C) というマイナー・メジャー7thコードの2ndベース。

で、3~4小節目は
A♭△7(13) (on B♭)となって、4小節目の4拍目がA△7(13) (on B)と、フツーに半音ずつ上昇させているのが一連の4小節のフレーズ。そうしてクワイアー系の音が入ってきて、ブッ飛びな4小節のブリッジに移行するワケですね。視聴部分では次のブリッジ部は聴けませんが(笑)。

で、ブリッジ部4小節の各コードは、

前半2小節
Gm11
B♭△/E♭/D♭
Gm△7 (on D)
F#m△9 (on B)

後半2小節
E♭m9
B♭6/C
D△9(♭13)
E♭m7(13) (on F)


前半2小節の2つ目のコードは見慣れないかもしれません(笑)。分数コードの分数ですからね(笑)。アッパーのB♭△をのぞけば後は全て単音ですから誤解のないように。構成音を見ればD♭、D、E♭と半音が続くのに、こんな響きアリなの!?と思われるかもしれませんが、曲の方を聴いていただければ不協和の度合いはそれほど強くないと思いますし、ある程度耳の習熟されている方なら普通に聞き流せるくらい自然だと思うんですが(笑)。私のベースラインはこのコードで普通に5度音程跳躍してA♭音も弾いてます。9度を完全5度で分割して遊んでます(笑)。

鍵盤オンリーで見れば、左手9度のこういうコード、左近治はよく使います。

で、続く2つのマイナー・メジャー7thコードにおいては5度ベースと4度ベースを使い分けています。マイナー・メジャー7thコードの4度ベースは左近治は非常に多用します。おそらく単体のマイナー・メジャー7thよりも一般的に「使える」音だと思います。私はここで次のコードに行く前に「E音」ぶつけてますけどね(笑)。

その意図は、アッパーでルートと長七弾いてんだからダブルクロマチックで増6使って、さらにE♭m9へのクロマチック・アプローチというのもありますが、4度ベースとの協和音程ということも重なって下と上の浮遊感が一瞬凝固するような響きになるので実は用いたというワケです。

で、後半の2小節には3つ目のコードで出てきましたね。メジャー7th(♭13)が(笑)。他はそんなに物珍しいものはないと思います。

こうした見慣れないようなブッ飛んだコード表記に見えるかもしれませんが、不協和な音を極力「聴かせる」というか、左近治の中で想起しているモードはそれほど突飛ではないのだから(この辺りはスティーリー・ダン関連やら楽理面の記事読んでいただいている方ならお判りかと)、ヴォイシングに注意を払えば普通に聴こえてしまう(であろう)という音を提示したワケです。

スティーリー・ダン関連なら、ウォルター・ベッカーのアルバム「11の心象」収録の「Medical Science」辺りが良い教材となるのではないかと思います(今回の私のリリースしたのはパクリじゃないですよ)。


そういえばウォルター・ベッカーの新アルバム「Circus Money」の各曲詳細についてはどうなったのかというと、チョコチョコと書き連ねて溜め込んでおります(笑)。

一挙に語るにはおこがましい、ましてや耳にして1曲を除けばまだ1週間ほど。曲が耳や頭に馴染むまで、とは言いません。一回聴けばツボにはまってくれる類の曲はすぐに覚えるものですし、何度も聴きこまなければ感想を述べられないというわけではないのです。

楽理面で多くを語れる曲、あるいはミックス的な視点で語れるものなど、前作も引き合いに出しながらアレコレ述べているとついつい細部をみつけたくなってしまうのであります。「聞き逃している所はないだろうか?」と。

前作の「11の心象」からベッカーのコード感を深く知るにも半年くらいはかかりましたでしょうか。音そのものの魅力については初めて聴いた時からゾッコンだったんですが、私自身の拙い音楽的ボキャブラリーの上でどうにか知ろうとする。だからこそ時間を要するというわけですね(笑)。

まあ、「11の心象」のリリース期において私が幸運だったのは、既にそのような音の魅力に私自身が目覚めていて貪欲であり、半ばその手の毒ッ気がないような音楽には見向きもしないほど偏向していたせいもあったのかもしれません(笑)。

とはいえ、そんな私のような拙い音楽的な了見を他人の、それも世界に名だたる人の音楽的志向を勝手に投影しては無礼千万極まりない(笑)。

この時期辺りは既にデジタルシンセの音はすっかり衰退して、ヴィンテージな音がもてはやされた時代にあり、私もアナログ・シンセやらローズの回帰という嗜好性の変化が顕著な時でした。それと同時にMacを既に有していたのもあって、鍵盤に対する思い入れが一層強くなっていた時でもあったんですね。なにせ弦楽器のそれと比較すれば鍵盤などモードチェンジの発想が実にスムーズ。弦楽器のような幾多もの異弦同音などありませんし(笑)。

鍵盤に対しては朴訥な姿勢でありながらも、既に備わっている「どこか違う音」への欲望が重なって、デイヴ・ステュアートに酔いしれていた(且つ、自分には弾きやすかった)頃だったんですね。そんな時に「11の心象」に出会った、と。

坂本龍一がローズを弾いていた時代の音を聴くと、その特徴的な音選びが、たまたまデイヴ・ステュアートのそれやハンコック、またはウォルター・ベッカーの特徴と妙に共通したという偶然も重なってついつい肩入れしたくなってしまったんですな(笑)。

もちろん、たまたま自分が知れた「程度」の音を、勝手に他人に投影するというのはココでもあてはまるんですが、その「妙」というのが彼らの「毒」であり、「色」なんですねー、私にとっては。坂本龍一については楽曲面以外詳しく知らないものの、シンセ的なプレーではなくて、スタジオ期の氏のそれは「この人、キャラヴァン好きなんじゃないの?」と、私がキャラヴァン好きだからついついそう思っているだけなんでしょうが、共通する音への嗜好性がどうしてもそのように思わせてしまう。

だからこそ似たフェーズにある人は、ジャンルを問わずして受け入れてしまうんですね。

「Warterloo Lily」
「My Waterloo」
「りりィ」(バイバイ・セッション・バンド)

とまあ、こんなコトを勝手にシンクロニシティ感じちゃったりはしませんけどね(笑)。

90s回帰もそろそろチラホラと見えるようになってきたんで(=60~70s回帰とも言えますが)、今年はそういう楽理面で共通する音をテーマにしてきているので、ついつい結びつけてしまうんですが、安易に自分の好みを同じテーブルに乗っけているワケではないので、説明もついつい長くなってしまう、と(笑)。

それでは今回はこの辺で。