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着うたファイル重要なおしらせ [制作裏舞台]

6月13日にリリース予定の着うたファイルは計6曲。

いずれも悟生楽横町からのリリースなのですが、その内の1曲「Sonic Boom」は、一部のau用のファイルは非常に音質劣化が激しいので、データサイズが130kbのものをダウンロードせざるを得ない端末をお持ちの方はご注意ください。

音質劣化の原因は色々ありますが、最大の要因はビットレートが低いこと。

今までもこのビットレートで変換して他の曲では問題はない程度でしたが、曲のアンサンブル(特にドラムの細かい符割やその周波数特性)、そのような要因が重なりプリエコーと呼ばれる音量差が激しい時に出現する可能性が高まってしまう悪しき音が通常よりも極めて多いのです。

他のauファイルはそれほど目立つことなく再生されます。ステレオファイルなら通常のリリースしている曲のように問題はないと思います。

ドコモ端末においてはビットレートは低いものがあるものの、このような症状は全く起きておりませんのでご安心ください。


この曲のドラムのオカズ類やら、他のアンサンブルとのバランス、アンサンブル全体の周波数特性(スペクトラム構造)、曲のテンポやらが、コーデックの持つアルゴリズムとどうしても相性が悪かったのでしょう。

ただ、変換前には130kbデータ用に特別な処理をして抑制したものの、それでも感度の悪いAMラジオで聴いているような音になってしまっていると思います。処理を施さなければ正直もっと酷かったのであります。

このような音になってしまうのは、変換前のPCMオーディオファイルに若干の音圧稼ぎで用いたマルチバンド・リミッター(L3)で、本来なら減衰してもよかろう高域のソースのダイナミクスを稼ぐために少々均一化してしまって、数ミリあるいは数十ミリ秒ごとに音の間引きを行うコーデックのアルゴリズムがデータ圧縮のためには仕方なく音質劣化にさせてしまうということが原因です。

もちろん当該ファイル用にはこのような音圧稼ぎをすることなく他のファイルと著しい音質変化が起こらないように別ミックスにして変換したのですが、ドラムの音をかなり際立たせ、ドラムキットの一部に用いているエフェクトのキャラクターとの相性がネガティヴな方面で出てしまったのでありましょう。

対象となる端末はおそらく少ないとは思うのですが、一度聴いてみてお試しください。

仮に高域を「ほぼ」ロスさせて変換しても、今回のこの曲とコーデックの相性は芳しくありませんでした。

非常に低いデータサイズの着うたファイルしかダウンロードできないという一部の端末は非常に少ないと思うのですが、念のためにお知らせしておこうと思った次第です。

普通に問題なく聴ける他の端末用のファイルこそが意図している音なんですが、こればかりは本当に難しいものであります。

「特定端末に問題があるならリリースしなければいいじゃん」と思われるかもしれませんが、ビットレートに差はあれど、その曲をリリースするには規定の端末をまんべんなく網羅してリリースすることが決まりとなっているので、「今回はこの端末用のファイルは用意せずにリリースしました」ってことができないのです(笑)。


そういう訳ですので、リリース曲をあらためて紹介することに。


「未来講師めぐるBGM」が計3曲。今回のその内2曲分は、いわゆる番組のテーマ曲のバリエーションのBGMたち。非常に味わいがあって、番組冒頭のテーマ曲よりも私は好きなのですが(笑)、もうひとつのBGMは「未来講師めぐる」にあっては珍しい「マジ曲」といいますか、バカラック風なピアノバラードの曲ですね。

さらには「Plastic Bamboo」の原曲オリジナルに近いアレンジの続き。

それと、EFXシリーズでエレクトロな「うがい」っぽいSE(笑)。口ん中のピチャピチャ感もきちんと演出されております(笑)。スネークマンショーを思い出してくれると幸いです(笑)。その昔、学校のメシ時の校内放送で流して担任から怒られた左近治。生徒達は皆賛同してくれたんですけどねー。

さて、もうひとつの「Sonic Boom」。まさかauの特定端末で今回のような症状が起こるとは思いもよりませんでしたが、とりあえずこの曲の特長はなんと言っても村上ポン太秀一のドラミングでありまして、今回こだわったのは「抜けの良い心地良いスネア」。

もちろんスネアのロール時のスナッピーの鳴り、打点の微妙な違いやらチューニングのコントロール、ロール時には埋もれないような心地良いシズル感、などこだわりました。ヴィニー・カリウタやスティーヴ・スミスの音を参考にしたんですけどね。

このシズル感を演出するためのEQセッティングやら音圧確保、それらに伴うハット類の音や、僅かにまざるオーバーヘッド類のアンビエンス部の音が混ざること、それによりアンサンブル構成の他の楽器とのバランスで高域にエネルギーのあるソースがドラム類に偏る。加えて、目まぐるしくリズミックなのでデータ圧縮させるための検出時間(数十ミリ秒の世界)の量子化アルゴリズムが低ビットレートだと余計に他の帯域に干渉して劣化してしまったんでしょうなあ。

渡辺香津美のAメロのギターにも影響が及ぶのは、高域バランス(EQではなくアンサンブル的な構成)とメロディの中域はコーデックから見れば別の処理をするはずですが、ギターの音そのものの高域レスポンスが伸びているのもあって、スネアやハット類のコンプのスレッショルドを幾分キツくしたセッティングだとマスター出力時にマルチバンドリミッター系のセッティングとが圧縮アルゴリズムとかち合うというワケです。全体的に音圧を稼いでいるのは普段の他の曲の方が強いんですが、これもアンサンブル構成の妙なんでしょう。

まあ、スネアやハットのシズル感を演出したいがために少々深くかけたコンプのセッティングが音量差を均一化させてしまったことで常に耳に付きやすく、圧縮させる部位はココだ!とばかりに圧縮アルゴリズムがそこに過剰に利いてしまうというワケです、簡単に言えば。

それを回避するのに色んなミックスをこれ用に試したんですけどねえ・・・。

ただ、問題のないファイルは心地よく曲を聴いてもらえるのではないかと思います。ドラム類のみならず打ち込みはトコトンこだわりました。

まあ、この曲で非常に感心した部分は、ドラムの「調律」とも呼べるほどの曲に合わせたチューニング。もちろん曲の調性は一定ではなくモードチェンジが多いものの、共通する音やらを加味した上できちんとチューニングされていて、局面におけるコードの構成音に沿った音をきちんと叩いて演出しているという点。つまり「歌心」あるドラムが原曲の姿。故トニー・ウィリアムスのチューニングも「調律」と呼べるくらいのものでしたけどね。あらためて驚かされました。

そんなわけでドラムのチューニング、タム類のセッティングやらは音作りや打ち込み以前にもかなり注力しました。

ドラムのタム類は全部で5つ。しかし6種類の音が鳴るようにしています。

ハイタム、ミッドタム、ロータム、フロアタム、HHの左側に低めのロータム、と。右手側のロータムは2種類の音が鳴るようにしています。それは!?

例えばドラムチューニングの基本ですが、チューニングを「調律」するかのように均一なセッティングにするためには、以前にもブログで述べましたが、ヘッドの中心をハンコ捺印するくらいの力で押さえ込んで軽くミュートします。

んで、ヘッドを時計盤とみなして、チューニングボルトを時間だと想定して、ヘッドのキワから1インチほど内側を、軽く押さえ込んだ指はそのままでスティックで軽くそのキワ部を叩きます。時計の時間の文字部分を叩いているようなモンですね。

ここで注意が必要なのはキワを叩くのはどこでもイイというワケではなく、チューニングボルトを時間と見立てて、そこから中心に向けた延長線上のキワ部分ということです。あるボルトとボルトの間のキワ叩いてもダメってこってす。

で、そうして音を揃えるワケですが、時には時計で例えるなら11時から1時の範囲のボルトだけ全音(=2半音)分緩めたりして、打点を変えることで音程差を生じさせたりします。例えばG音に合わせたらそこだけF音にしたりとかという意味です。実際にはG音の部分音も鳴ってはいますけどね。

ただ、スネアの場合はこういうことをせずにキッチリ揃えた方がよくて、叩く強さで出ている部分音の分布やバランスを調節して叩くという意識の方がスネアにはよろしいでしょう。タム類の場合は特にボトムヘッドが曖昧だと不協和でブーミーな鳴りがウザイほど鳴りますんで、注意が必要なワケです(笑)。

で、私はそうしてロータムのひとつにそういう工夫を施して(サンプラーで)今回の曲を作っているというワケです。単純にベロシティーレイヤー組んだとかそういうアレでもないんですけどね(笑)。音源はヒミツです(笑)。近年なぜか人気のあるBFD2でもありません(笑)。あれより秀でたサンプルはいくらでもあります(笑)。「調律」レベルのサンプルってこってす(笑)。NIでもADでもありませんよ、と。

とまあ、ドラム関係はこの辺にするとして、「Sonic Boom」で驚かされたのは、坂本龍一のアコピ(さらにポリシンセとモノシンセ)と益田幹夫ローズという両者の音域のバランスが非常に計算されているアレンジの妙味をあらためてスゴイと痛感しました。それにしても坂本龍一のこの曲におけるアコピはNastyですね(笑)。

まあ、これの続編も用意しているのでそれに関しては追々語ろうかな、と(笑)。

とりあえず今回の「Sonic Boom」で得た教訓は、マルチバンド「音圧稼ぎ系」リミッターは魔法の道具ではない、というこってす(笑)。

帯域バランスやらのセッティング、或いはドラムの音作りそのものから変えなくてはならないほど、たかだか2ミックスのそんなリミッターのせいで妥協をしたくはないのに、結局は低ビットレート(それも著しく低いビットレート)が犠牲になってしまうというジレンマ。これは実に歯がゆいものでした。

作った私がこうなんだから、対象となる人が買ってくれるワケねえっての(笑)。それらをも包括するような、ザッパのアルバムタイトルのような「One Size Fits All」じゃあありませんけど、このキャラクターを活かしたままのミックスは見つけられませんでした。ドラムキット部のみRIAAカーブの反比例セッティングやらも試してみたんですけどね。それに緩いHPFを低域からかけてみたり。正直悔しいのであります(笑)。呼び水となっているのはスネアなんですけどね(笑)。でも、このスネアをフツーのスネアのサンプルに置き換えたんじゃ、ロールのシズル感なんて全然出ないんですよ(笑)。ロールの粒立ちや音価、音色キャラクターとスナッピーの鳴りというのは低ビットレートにおいては鬼門なのだなあとあらためて痛感しました。

ほとんどの人は問題無いと思いますが、対象となる人がいる以上はアナウンスしておくべきかな、と思いまして今回のこのような記事になったというワケです。

せめて1ファイルが1MBくらい(本来ならこのような障壁すらなくなってほしい)に出来れば音質は相当確保できるんですが今回の130kBの方々には本当に申し訳なく思っております。尺41秒強なので、一体どれほどのビットレートなのか知りたい方は各自計算してみてください(笑)。裏事情を赤裸々に語れない部分もあるので御容赦を(笑)。全部が全部130kBじゃないですよ。他の端末用はもっと確保されています。