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あらためてウォルター・ベッカー御大に感服 [スティーリー・ダン]

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ウォルター・ベッカーの新譜リリースが待ち遠しい左近治。ふとオフィシャル・ページ覗いてみたら視聴曲がラインナップされている!

早速左近治、氏の楽曲群を拝聴させていただきました。とりあえず絶対CD2枚買います(笑)。

御大、やはり凄いです。スティーリー・ダンの音(和声)ですぜ、ホントに。全体の楽曲クオリティの高さからしても、正直SDの「Everything Must Go」は凌駕しています。

全体的な「一般的」な印象としては、アンディ・サマーズやスティングを想起する人も居るかもしれません。しかし、あらゆる所に鏤められたコードワークのそれは、かねがね左近治が語ってきたメロディック・マイナー・モードに関する小技がごくごく自然に咀嚼されて活かされていると来たモンだ。

「今までウォルター・ベッカー軽視していた奴等、出てこい!」と言いたくなってしまうくらい(笑)。Hail to the king, babyってな位、なぜか左近治は左団扇状態(笑)。

ま、前作「11tracks of whack」は確かに、アンサンブルはチープでシンプルだし(Studio Visionと初代ProToolsにハワイの自宅で録音)、モード感覚が疎かな人は和声に乏しいアンサンブルにおいて耳が付いていくのは困難なモノもあった感は否めません。しかしSDフリークならコレくらいやっても付いてくるだろうと本人が思っていたかどうかは知りませんが、今回は実にハーモニー豊かに、万人にもわかり易く、自然に、且つ「あっちの世界」をさりげなく鏤めております。

左近治が熱くなってついつい楽理面で語っていたことが、こういう判りやすい例を聴いてもらえれば、スティーリー・ダンの新たな魅力またはベッカーへの新たな魅力があらためて理解できるのではないかと信じてやみません(笑)。

視聴できる曲目を列挙すると後述のようになりますが、CDの曲順通りなのかどうかは知るよしもありません(笑)。

ただ、視聴曲各曲を拝聴させていただき、左近治流に各曲のコメント語らないと気が治まらないので(笑)、つらつらと書いてみることに。


「Door Number Two」
Gマイナー感を漂わせながら実はGフリジアンを想起!?途中ではGマイナーではなく、Gメジャーを想起させつつも、全体ではGマイナーで♭6thを強調するようなフランスやスペイン辺りの叙情性を漂わせるような曲。凄いですね。「Surf or Die」や「Hat Too Flat」「Medical Science」的楽曲を多彩なモード・チェンジで彩り、女性コーラスのそれがなんとなくSavath&Savalasっぽかったり、古くはデイヴ・ヴァレンティンのアルバム「Hawk」収録のB面頭の曲「We‘ll Make Love」のLatinな叙情性タップリの世界を思い起こさせます。ただ、曲全体聴くまではどういう構造なのか想像がつきませんが、解析に数日~数ヶ月は必要なほど聴き応えありそうな曲であることは間違いなさそうです。

なんと言っても女性コーラスが入ってきて4つ目のコード(2拍ずつモードチェンジ)、ベースがE♭弾いてアッパーがG、F、E、C音ですか(笑)。ベッカーさん、コレ、Aハンガリアン・マイナー・モード導入してますよね、ココ!?(←※本来Aハンガリアン・マイナーを想起するなら、G#音(A♭)が含まれないとこの場合の実際のモードは違うことになります。つまり左近治は、「他に半音が2回以上続くモード」を苦悩して、この曲には何のモードを当てはめるべきなのかという姿を投影しているという意味ですので御理解ください)不協和を感じさせずに実はスンゴイ世界繰り広げてます。40sジャズをベッカー流に咀嚼してこういう風にしているんでしょうか。スティーリー・ダンの作品と比較した場合、「Green Earrings」や「Babylon Sisters」の世界感はこういう提示例でもあったんだろうなと思います。

モード・チェンジがこれだけ激しいのに不協和を感じさせないのは、モードの選択がそれだけ叙情性を持つものを選びながら成立させているからでありましょう。この曲でまた勉強させられるでありましょう。アルバム発売が待ち遠しいです。


「Downtown Canon」
イントロから所々御大の色気を感じるモーダルな音選びにワクワクさせてくれますが、歌入ってからの、SDファンなら耳どころか海馬まで刺激されるコード出てきましたね(笑)。私のヘッポコ英語リスニングで聴き取らせていただければ、おそらく「We found a loft on green street、swept hand~」という部分。正直歌詞の「swept hand~ブラブラブラ」の部分は更に自信ありません(笑)。こんなんじゃTOEIC650点なんて取れねえぞ左近治っ!一応家族ン中じゃ私が一番英語ができるんですが、ヘッポコ家族バレバレ(笑)。アルバムリリース後には、まーた左近治恥かいてんだろーなーと自覚はしているものの、どうしても呼応してしまうので仕方がありません(笑)。

いわくつきの「swept hand」のアッパー部だけを聴けばC7augのサウンドに聴こえるかもしれません。実は「We found swept hand~」からD♭m△7(13)の3度ベースなんです。それでFmに解決するという、まあ、V7aug/VI♭と思っていただければな、と。「Almost Gothic」にもこういう使い方が出てきますね(向こうはD7/E♭)。

まあ、3度ベースで強調しておいて、D♭音に行っていると。マイナー・メジャー7thのさりげない使い方、ドミナントをドミナント感強めないで自然に旋律的に動かせる手法で、この用法はベッカー特有ではないものの、こういうベースの運びがスティーリー・ダン・フリークだけに限らず、もっと多くの人に判りやすさを提示しているような優しさが伺えます。勿論、ちょっとした毒っ気はあるんですけど、歳を重ねると丸くなるんだなーと痛感(笑)。私など丸いどころかこのトシでもウニのように尖ってますよ。

個人的にはこの曲「Black Cow」に似た感じという風に想起しております。アンサンブル全体でも判りやすいため、いつでもリリースできるように左近治、この部分、喜び勇んでもう作ってしまいました(笑)。


「Bob Is Not Your Uncle」
上モノはVI♭→V→Imという風に動きますが、ベースはトニックで♭6th音を強調するように弾いています。スティングやらポリスの世界感と言いましょうか、でも視聴できる部分だけでは終わらず、なんかもっと凄い展開が隠されているだろうなとワクワクしています。ボーカルマイクがMSステレオなんでしょうか、帯域を極端に落とした部分と、それを補う形の2本のマイクで微妙な距離感や位相の変化を楽しんでいるような感じです。エンジニアは今回エリオット・シャイナーらしいですが、MSステレオのステレオ感を強めず、マイクで色々遊んでそうですね。

フェイゲンの「Morph the Cat」辺りから、SD界隈の人達はADDA換えたのではないか?と思うんですが、いわゆる某標準系の音だと低域中心のソースで下から高域まで倍音が潤沢な音の強い音量時って高域をひきずるような独特の「演出」があるじゃないですか!?逆にいうとハットやプレートリバーブにイヤミが出てきたり(笑)。その手の音が「Morph the Cat」や今作では感じないんですよね。イヤミの無いプレゼンスに中域がファット。サンレコ辺りで詳しくエクイップメントを確認したいモンですな。ベッカー御大表紙にする価値あると思いますよ。今作でようやくベッカーの世界感が理解できる人多いと思いますので(笑)。

「Upside Looking Down」
いやあ、「Third World Man」を思い出しました。一般的な層には結構佳曲として受け入れられるんじゃあないでしょうか。この曲の前の「Bob is~」のスネア周りの音、非常に好きです。

「Paging Audrey」
SDファンなら間違いなくこの曲もマストな曲となるでありましょう。曲名通りの「Paging Audrey~」と入ってくる所は、こういうベースや旋律は実はクリムゾンの世界を感じました。フリップ先生の叙情性(笑)。でも、普通に極上AORとして成立させておりますね。

ベードラの13kHz付近の音の出方。これが左近治の言う高域の「引きずり」感を感じる音で、オーバーヘッドやら他の音のカブリをSC(サイドチェイン)で切りながらの音とも少し違うクセを若干感じるんですね。もしかしたら、この曲は違うADDA(いわゆる旧来タイプ)なのでは?と思わせるクセを感じるんですが、後々赤っ恥かかないためにもこれくらいにとどめておこっかな、と(笑)。マイクのせいなのか、マイクプリのせいなのか?ドラムの音は確実に違うことはお判りいただけるかな、と。

「Circus Money」
アルバムタイトル同名曲。やっぱり凄味を感じますな。やっぱり今回はVI♭thの使い方を「優しく」提示しているんでしょうな。「I Got News」「What A Shame about Me」とか、前作の「Hard Up Case」ではなかなか馴染めなかった方には、ベッカーの提示しようとした世界感がこの曲にて再確認できるのではないかと思いますよ。こうやって聴くと、ドラムの高域引きずり感は無いですよね!?だから「Paging Audrey」は少しエクイップメント類違うんじゃないかと思うのはソコなんです(笑)。

「Selfish Gene」
多分、多くの人にはコレが看板曲でなるであろう、SDサウンド、ビシビシ感じます(笑)。「Gaucho」と「Josie」を足したような世界感。前作の「This Moody Bastard」で伝えたかった世界感があるように思えます。この曲、たぶん一番受けがイイと思います。全体的には「My Waterloo」で表現したかった世界感をベッカーの世界に全部持ち込んで判り易く提示している、というのが今回のアルバムなんでしょうが、この曲にて「完全に」理解できるというか理解が進むでありましょう。

「Do You Remember The Name」
サイケな世界ですなー、コレ。呼んでますね(笑)。歌入る直前のコードへ持っていくさりげなさで、このトレモロ、イッちゃってる人に聴かせたら波動腹から頭まで止まらなくなっちゃうでしょ!(笑)と言いたくなるような茶目っ気タップリの曲ですな。落とそうとしてますなー、コレ。ドーパミン出てきますよー(笑)。

ボーカルのマイクのコンディションはおそらく少々古いタイプのもの使っているんでしょうが、ディエッシングは強く掛けていないのか高域は目立つものの、バタつきの少ない音のマイクですな。エージングされたマイクの音というか、他でも同じの使ってたらまーた左近治赤っ恥だぞ、と。判ってはいるんですが、素直に違いを感じたままに書いているだけで実際はどうなのか本人じゃあないのだから仕方あんめえ(笑)。Drives you high、me tooってな感じでちょっとゴキゲンになる曲ですな。

「Somebody‘s Saturday Night」
イナタいなー、こんなにイナタくてブルージィーなの!?と思わせながら毒ッ気やっぱり鏤められておりました(笑)。これもクセになりそうな曲ですなー。でも、この曲のアプローチはフェイゲンっぽいコード・プログレッションだと思うんで、おそらくフェイゲン流の人へ提示した曲なんでしょうね。ピアノのヴォイシングが堪らなくイイんですが、それにしても今作全体通じてベースの音がファットで好きな音です。まさかサドウスキーとは(失礼)。サドウスキーのベースって細っせえイメージしか抱いていなかったので、まあ、プリのベースの山メッチャ広いし、パッシブの方が使いやすかったりする音なんですけど、ベッカーの使うベースが全曲サドウスキーなのであるとしたら、ちょっと見直さないといけないかも(笑)。たぶん、アクティブON時の高域の抜けすぎる音と細めフレットとのマッチングを私は嫌っていたんでしょうなー。サドウスキーのピックアップの飽和感がたぶん好きになれないんでしょうな(あくまでも従来色んな人のを弾かせてもらった印象)。ミドルカット前提にするならそれもアリですけどね。だから、たぶんサドウスキーを左近治が弾くならフレットレス(笑)。ネックシェイプは結構個体差あるようですが(私が弾いた限り)、ローポジは若干Vになっているようなものが多くて、そういう面では好きなんですけどね(笑)。イイ音で録れてますね、しかし。

「Darkling Down」
往年の、ディーン・パークスの居るSDサウンドが好きな人には堪らないんじゃないでしょうか、この曲。ハモンドも冴えていますね。Nastyです(笑)。それにしても視聴用でのっけから出てくるギターがイナタいこと(笑)。この曲もフェイゲンっぽいというか、一緒にやることを念頭に置いたものなのか、スンナリ入ってきてくれるんでツカミ用の曲でしょうな。

「God‘s Eye View」
ベッカー先生が備えているオルタナ感。今作ではこの曲だったのか!(笑)。この曲、ダブ風にしてみたいなー(笑)。しかもどこかニューロマンティックな香りすら漂いますぞ、コレ。こういうkinkyな感じも左近治、脳幹直撃されました(笑)。「うそつきケイティ」や「幻想の摩天楼」時代のアルバムが好きな人にはハマるかもしれません。

「Three Picture Deal」
やってくれました。歌メロが終わった所のギターのオブリフレーズ部。E♭△7(♭13)という「♭13thぶつけ」です(笑)。♭13th音強めたら一気にG△/E♭(コードとしてはE♭△7+5という感じで、ナチュラル5th音を希薄にします)感を強めて→A♭△7に行く、と。

「あっちの世界」が好きな人には堪らんですな(笑)。エエ、左近治、脳幹ブチ抜かれて持っていかれました。10のマイナス30乗秒ほどの電磁波出して素粒子であることすらも確認できぬ時間内に葬られたような気分です。

また、このオブリがエリオット・ランドールを彷彿させるというか、「Green Earrings」のギター・ソロをも思わせると言いましょうか、ベッカー節、本当に炸裂してます。これまで左近治が語ってきたメロディック・マイナー・モードやらマイナー・メジャー7thコードが出現する代表的なモード群に関する楽理面を読まれた方、或いはそんな説明も要らぬほど熟知しておられる方なら、メジャー7thコードにおける♭13th音については語る必要もないと思いますので、ここでは割愛します(笑)。

ホール&オーツ聴いてもオーツにゃあ見向きもしないファンは多いものでして、スティーリー・ダンが好きなのにSDサウンドを熟知していないファン、私の周囲にもおります。これくらいは理解してあげないとベッカー師匠可哀想すぎます(笑)。


まあ、ざっと視聴可能な全曲語りましたが、楽曲クオリティの高さといい、少なくとも「KAMAKIRIAD」「Two Against Nature」「Everything Must Go」「Morph the Cat」でも、アルバムの中でも最も高いレベルにあると思います。それくらい聴き応えあると思いますし、本領発揮を判り易くアピールしてきたな、と感じます。

それらの4枚のアルバムで「もう少し毛色の違うSDサウンドっぽさが欲しい」と思っていた方は、ベッカー先生のこの「世界観」こそがSDなのだということをお気付きになられるのではないかと。「11の心象」においてその魅力を知った方なら「なにをいまさら」と思うかもしれませんが。

少なくとも「Negative Girl」や「Almost Gothic」や「Green Book」の世界観の魅力はどういうものなのか、このアルバムでまざまざと知ることが出来ると思います。「KAMAKIRIAD」よりも売れてイイと思いますね。少なくとも「Nightfly」よりも必聴アルバムになることは間違いないです。

余談ですが、「11の心象」は本当にレーザーピックアップの寿命が尽きるくらい聴いた左近治です。それくらいベッカーさん好きだってぇこってすわ(笑)。それでは今回はこの辺で。