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極超低音 ローF#弦との出会い [ベース]

エレクトリック・ベースを嗜む人なら今やすっかりポピュラー化した多弦ベースの数々。ただ、黎明期のそれはネックが弦負けしてしまって弦振動が相殺されていたりするのも少なくなく、ジョイントネックのベースならばそのジョイントに用いるネジ穴の物理的な位置でも弦振動を左右してしまうという諸問題が多々あったようです。今でもその辺りの研究は進められているんでしょうけどね。

ヴァイオリンに用いる駒だってただ単に装飾感を演出してああいう形状になっているのではなく、それこそボディとの接し方やら弦の「据わり」など全てが計算されて、その経験が培われているのでありまして、エレクトリック・ベースとてブリッジ・サドルや低音弦側のナットの切り込みやら、非対称のナットとかそういう面でもふくよかなサステインを得るためには重要なファクターなんですな。

私がローF#弦を張るエレクトリック・ベースに出会ったのはRoscoeの7弦ベースが最初でしょうか。20世紀末だか21世紀になるようなそんな頃に。あんまり馴染みが無いベースかもしれませんが、ジミー・ハスリップ(元イエロー・ジャケッツ)が現在使用しているのであります。

通常Roscoeは35インチを主体としているようなので、サステインを稼ぐには確かにスーパー・ロングスケールというのは功を奏します。が、ローB弦でも鳴らしきれないヘッポコなベースが多い中、F#を鳴らすというのはかなり難しいモノでしょう。ある意味、弦負けしないようにローB弦のチューニング落とした方が、音質自体は軽くなったとしてもその方がメリハリ感は得られるかもしれないところにそういった極超低音の世界に足を踏み込むのは並大抵ではできません。そういう意味でもRoscoeやF-Bassというのはよく鳴るなぁという印象です。

フェンダーもある意味量産物として妥協している部分はあるものの、ボディをネックジョイントの延長に左右からブックマッチする、という手法は避けていたようで、ジョイントネックにおいて5:5で、ちょうどネックジョイントのセンターに位置するところでブックマッチしてしまうとサステインが失われてしまうというのは広く知られていることで、古いフェンダーというのはセンターでブックマッチしておらず、ストラトでも概ね7:3、量産の度を強めていった70年代後期や80年代になると、2つのホーンの所から3分割するようにボディを形成しているのもありますが、これもサステインを確保するという視点できちっとセンターを回避するようになっていたんですな。

仮に中央でブックマッチさせてもネックジョイントのインサートの物理的な位置を相殺させないポイントでジョイントさせて回避したり、或いはネックそのものを奇数でプライしたりetcそんなアイテムが色々登場してくるのでありますな。この手の発想はやはりアレンビックの影響が大きいのではないかと。

着メロやってると、ケータイ端末のスピーカーなんて普通のベースの音域すらまともに再生されないようなものが殆どで、イヤフォン使って聴いてくれているのならまだしも、端末に搭載のスピーカーで低音を認識させるというのは無謀に等しいモノで(笑)、それでも音色のスペクトラムやらを色々駆使して鳴っているように感じさせる音作りというのはありまして、だからこそチャップマン・スティックの音などは面白いようにケータイからも鳴ってくれるワケですな(笑)。

ある意味、中低域や中域がまんべんなく倍音で満たされている音よりも、それらを大胆に弄るくらいの方が着メロ界でなくとも功を奏するというシーンはあって、ただ単にミドルのひとつの帯域をカットして「ドンシャリ」志向にするのを安易に回避してしまって「無駄な」中音域出しまくってアンサンブル乱すよりは、スッキリと聴かせるスペクトラム構造を身に付けてナンボだと思うワケですな。

やたらとウェットな会場でライヴやらなきゃならねえ!というシーンでもこういうのは大いに役立つはずです。

オーディエンスが沢山入ってくれていれば彼らの着衣で巧いこと吸音してくれるんで多少デッドにはなるでしょうが、その辺のアマチュア・バンドなど1回のライヴで50人集めるだけでもヒーコラ言ってるのが当たり前の世界で(笑)、閑古鳥鳴いてそうなウェットな場所で自己陶酔に浸るには、やはり音をスッキリさせてこそナンボでありましょう(笑)。ヘタすりゃベーアンを使わないという妥協も時には必要だったり。モニターだけとか、てめえだけカナル型のイヤフォン使ってモニタリングする選択肢も備えておかなければならなかったり、と。

以前のブログでも述べたことがありましたが、音の「回折」。つまり、音波が耳に届くだけではなく、人間は骨伝導やら、自分自身の肉体によって遮られた「スペクトラム構造の隙間」やら、自分自身の肉体によって回折された音やら、口腔はもちろん音によっては胸腔、腹腔やらをも伝わってくる、頭部を回折して回り込んでいる間接音を捉えていたり、と。もはやサラウンドどころかバイノーラルをも視野に入れた音のパラメータ達はいずれも日常意識することなく実感しているのが音でして、それらに加えて、音の反射率やら吸音率など音響的に計算された吸音材などの工業製品はどの周波数帯を考慮に入れたものなのかを設計されていますし、壁の内装の間隔だってきちんと計算されていたりするのが音響の世界。室温も考慮に入れられていたりするもんです。コンサートホールのイスがフカフカなのも実は観客の居心地よりも音響面で重視されていたりします。アリーナ席に用意されたパイプ椅子にはそういう考慮はないでしょうけれど(笑)。

不要な低音の鳴りは吸音しつつ、低音をも得ようとするのはそういう吸音を視野に入れた音響面でも普通に有り得ることで、ノンエフェクトのベースが必ずしも迎合されているワケではなく、カットしてもオイシイ音を学ぶというのが重要なのでありますな。自分が弾いている楽器くらいはそういう側面をマスターしたいものであります。