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今回の制作秘話 [制作裏舞台]

桜の花が散り始める時、なんだかんだ言って夜は冷え込む時もあるでしょうがだいぶ暖かいワケで、左近治は寒い時期のモニタリングを好むため、難曲を着手するには絶好のシーズンだったというワケでありました。とはいえ夏の時期でも難曲に挑戦することはありますが(笑)。

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例えば4月4日リリースの曲で言えば、デイヴ・ヴァレンティンの「Astro-March」で苦労した点は、トライアングルのバリエーションでしょうか。ギャグではなくて。

原曲のクレジットはというと、

Flute:Dave Valentin
Piano&Oberheim:Dave Grusin
Bass:Marcus Miller
Drums:Buddy Williams
Percussion:Roger Squitero

本来のデイヴ・ヴァレンティンだとベースがリンカーン・ゴーインズだったりするんですが、なんだかんだいってGRPを代表する人達とこうしてセッションの記録を残していることが多いデイヴ・ヴァレンティンです。余談ですが「Pied Piper」という別アルバム収録の曲のヴァレンティンのプレイはかなり好きです。

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トライアングルと言えば楽器の弾けない人が担当する代名詞的なイメージがあると思うんですが、パーカッションとしてまともに向き合って考えると、たかがトライアングルされどトライアングルで、パーカッショニストという方は色んな音を使い分けていることが判ります。

金属なのだから普通に叩けば余韻が生じる、とそんな単純なことではなくて、叩き方がおかしければその余韻も変な飽和感のある音を生じることもある、と。スラップベースを弾けない人が親指で弦をヒットしてもまともに出ないのと同じ。スッと叩いて、スッと引く。パーカッション類はこれがキモですよね。

ところがその飽和感をも操って、通常ならある大きな部分音に合わせて律されているトライアングルもミュート加減を手の握り加減で調整して音を調整したり、部分音の出方を調節したりして際立つピッチを加減しながら操っているワケですね。ただ単に楽器弾けない人のトライアングルとは雲泥の差がここにあるわけで、今回はココに一苦労させられたというワケです。

というのも、この曲の出だしのトライアングルというのは多くの人が意識していない音だとしても、省いてしまうと原曲を知る人だと「何かが違う」という違和感を生じるほど存在感は際立っていると思います。それだけ結構重要なアンサンブルとして構築されているワケです。人の癖など無くて七癖とはよく言いますが、ある意味サブリミナルというか、あまり気付かれてはいないものの重要な役割とでも言いましょうか。必要不可欠な音だということをあらためて認識させられた思いです。

楽曲の楽理的な面で言えば、ベーシストの安直な発想で言えばこの曲はE一発系としてとらえてしまいがちですが、実は一箇所F△7を使っているので、Eマイナー一発で押し切ろうとするベーシストを制御するとでもいいましょうか(笑)、そこに配慮したフレージングをしないと流れを断ち切ってコードを追うのに必死になるだけの、和声の動きに埋没していくことになりかねないので注意が必要なんですな(笑)。マーカス・ミラーとてココの部分は「逃げ」を感じます(笑)。マーカス御用達の「Run For Cover」だってテーマ部にはF△7が出現するところがありますが、和声として重要ではあるものの、一方でフレージングで活かしきれていないのが同居しているシーンもあります(笑)。ベースで長七を巧く操る人はそうそう居ない。ましてやオクターブ主体のスラップとなれば長七など天敵といえるほどのコードかもしれません(笑)。ゆえにこのベースがそれほどマーカス・ミラーっぽくないのはそういうところにあるかもしれませんね。原曲の終盤ではマーカス・ミラーっぽさが顔を出しますが。

原曲の良さは何といってもジェフ・ミロノフのサイド・ギターのフレーズです。ホントに良いフレージングをします、この人は。シングル・ノートが主体なのに。インコグニートのブルーイもこういう「系」でありますな。

とまあ、つらつらと「Astro-March」について書いてみましたが、この曲に限らずリリース時と制作時はかなり開きがあるものでして、制作時の記憶を遡るだけでも億劫になってきた左近治の脳はすっかり加齢が進行してしまっているということを実感させられるワケなんですが、制作時は1月の下旬辺りでしたでしょうか。今現在6月下旬リリース用の曲作ってるんで(笑)。

さらにマジ曲でジョン・スコフィールドの「Wabash」。これについてはもう以前のブログで語ってしまったので詳しくは述べませんが、まあ、ツーバス・フレーズの6連と5連符の交互の醍醐味を、チョット汚した音で堪能していただければな、と。ボンゾの音がダーティー気味でワイルドなのは、レコーディング時にモニター用のスピーカーがさらにそれをマイクが拾うからでありまして、レニクラもこういう手法を散々使っていたと思います。ヴィンテージ機器において。ハムノイズすら「綺麗に」レコーディングされていたりもしますけどね(笑)。


ごきげんようサイコロトークの加速テンポバージョンはそのまんま名前の通りです。どんどん速くなっていくので最後の方ではすっかりグシャグシャ感があってメロすら取れないほど速いのでありますが、終わる直前ではちょっとだけブレーキをかけて元の音を把握できるように配慮しました(笑)。250km/hでスッ飛ばして、危険回避で急ブレーキ。それでも90km/hで前の車にカマ掘った、というような感じでしょうか(笑)。一気に150キロ以上減速してもぶつかられた側はたまったモンじゃあありません(笑)。ブレーキが結局利かずに大破した車というのはよ~く高速道路などで見かけます。要はスピード出しすぎ、と。左近治、この曲でスピード出しすぎておりますよ、と。


あとは、久々のYMO名義の曲で、アルバム「テクノデリック」から「体操」を。

オリジナルのプロモビデオにあるように、少々ラリ入ったおバカな人を統制しようとするような寓喩の込もったモノでしたが、四半世紀以上経過した今でも、音は現在のように、おバカなかほりは捨てずにエレクトロなパンクスなスタンスを具現化したいと思いまして、こーゆー音にしてみました(笑)。学力偏差値トコトン低いけど、どこかカッコイイというか(笑)、そーゆー音にしてみたつもりです。別な意味での脳幹直撃系と言いますか、トルエン嗅いだとでも形容しましょうか(笑)。六価クロムも危険ですので素人さんが扱ってはいけませんよ♪そういえばスネークマンショーに「シンナーに気をつけろ」というのがありましたっけ(笑)。


もひとつは、特命係長只野仁のテーマです。ショートに割愛しながらまとめております。お色気女性スキャットを模した音はKORG MS-20(ソフト音源)をエディットしたものです。コルグの音はエグみがあるので、この手の音作るのはARPかコルグか、ってなくらい重宝してます。うまくするとウーリッツァー系の音に持っていくこともできますからね。こちらの音は細野晴臣の「ファム・ファタール~妖婦」にてお聞かせできると思いますので、それはまたいずれ語ることに。

最初のテーマ部ではドラムンベース風のドラムリフを鏤めているんですが、ケータイ実機でのシャカシャカ感を緩和させたら、ドラムンベースのスネアとキックが我が家のモニタリング環境では妙に目立つようになってしまっております(笑)。ただ単にケータイの音を逆算しているんですが。スネアやハットのポリリズミックな音がどれくらい作用してくれているかは、各ケータイによって様々だと思うのですが、一方ではイナタくダブ系のギターのコードが鳴っている、と。どっか古臭いB級・C級チックな感じを演出したかったんです。スキャットボーカルが全面に出るワイルドなドラムのフィルの所は完全に汚し系ではなくアンビエンスを利かせたドラムキットの音にしております。初期反射用のインパルス・レスポンスと、ほんの少し長めのインパルス・レスポンスのリバーブ2つをアサインしているのが制作裏事情的なネタですか。

サンレコのオーディオインターフェース比較をお聴きになった方は多いかと思うんですが、MIOでのタムの音というのは本当にクッキリハッキリ、そして伸びてくれています。なぜ好きなのかというと、8~11kHz辺りの音の出方が好きだからです。あちらではノイズフロアを押し上げているのがベースを筆頭に他にふたつほどあるんで効果を活かしきれていないように思えるんですが(笑)、MIOのDSPは本当に重宝します。もちろんタム類にはMIOのDSPで処理しております。また、もはや実感できるレベルを超越するほど、MIOのダイナミクス系のアタックタイムは非常に細かく設定できるのも特長です。環境にもよりますが、余裕でインパルス以下の設定も可能です(笑)。左近治の多くはゲートで重宝しているんですけどね。

ハナシをサンレコの側に寄り道しますが、例えば先の比較記事でのPreSonusのタムの出方は、他と比較するとタム類の3.5kHz辺りが強く出て、なんとなくクセが出てしまって、引っ込ませてしまいたくなるような音になっていると思うんですが、タム類の3.5kHz付近の音って音を弄る人ならどういう風になるか想像に容易いと思うんですが、つまりはそういうこってす(笑)。Mackieはフカれに弱そうな感じのブーミー感がありましたし、Focusriteは意外なほど優れておりました。

ただ、ノイズフロアを押し上げているソースが含まれているにも関わらず、平滑化させずにメリハリある音はMIOさすがだな、と。デジの場合は普段は平滑化しているようで、倍音を多く含む低域ソースがある時の音は有利ではないかな、と。コンデンサ・マイク向きなんでしょうな。

そういうワケで回り道しましたが、今回の只野仁のタム、実は注力してます、ってこってす(笑)。春の訪れで性欲うずく季節(年中無休の方も多いと思いますが)、やはりパワフルに「攻める」というメリハリ感を出したかったので(笑)。