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ハトの鳴き声 「ででぽぽ」考察 [おバカ]

朝になるとよく鳴いております平和の象徴、鳩ポッポ。

ついつい二度寝したくなるような時に鳴いていることが多いと感じる左近治でありますが、その鳴き声は耳障りではなく、寧ろ心地良かったりするものでもあります(笑)。

で、いっつも鳴いているその鳴き声は

「でー、でー、ぽっぽー♪」

と聴こえてくるんですな。しかもリフレイン時に少々リズムから外れた独特の「間」がある(笑)。

私がいくら変拍子が好きとはいえ、たまたま聴いたハトだけがそういう鳴き声のリズムで鳴いているのではなく、みな同じ調子で鳴いているんですな。左近治も何十年とハトの鳴き声を聴いておりますが、やはり共通しているようです(笑)。

今一度ハトの鳴き声のリズムを符割にしてみようかと、左近治ようやく思い腰を上げて今回のブログで語ることに致しました。


「あの独特の間は何なんだ?」


左近治は熟考に熟考を重ねた結果、「ハトは5つフレーズをベースに持っているのではないか?」

という仮説を立てて考えてみることにしました。


当初は16分音符5つフレーズでの16分の21拍子、bpmは160前後でやってみたんですがどうもしっくりこない。テンポを速めにした視点で考えたのは、人間よりも心拍数は速いであろうハトの特性を考えたモノなんですが、根拠はありません(笑)。

で、次は5連符をベースに考えてみることに。テンポは120前後。

そうすると、最初のふたつの鳴き声「でーでー」は特に5つを意識することなく四分音符で済むワケですが、3拍目に休符が入って「ポッポー」と鳴き、その後一瞬のリズムから外れた「間」を演出するには、まず最初の「ぽ」の鳴き始めには1拍5連の2つ分の音価の休符が必要になったんですな。

で、4拍目アタマでふたつめの「ぽー」が来るんですが、その後16分休符ひとつを挟んだ16分の17拍子が聴いていて自然だったんですな(笑)。

勿論ハトはうまいことその一連のフレーズで鳴きやむことはなく、たま~に「でーでー」で終わらせることもあります(笑)。

16分の17拍子という奇妙奇天烈な拍子をここまで自然に聴かせるハトの鳴き声は素晴らしいとあらためて感動したワケであります(笑)。

今回のこの検証は実際にハトの鳴き声をレコーディングしたものではなく、あくまで左近治の脳幹にまですりこまれてしまった記憶によるもので、根拠は全くありません(笑)。


dedepopo.jpg
2020年12月11日追記

 久方振りにあらためてキジバトのパーシャル(部分音)を採譜して、微分音的に表される事となる状況を示してみる事としました。

 最大5声の声部で表しておりますが、デモに用いている音源はEXSのデフォルトの正弦波に対してIRリバーブをBus送りで掛けております。参考まで。



 以前にもキジバトの鳴き声を採譜して、17/16拍子というアクサクのリズムに於て平然と5連符が忍ばされている状況を示した物でしたが、それが単なるリズム譜であった事から、今回はグッと進んで複合音分布の状況までを採譜しようと企図し、デモをYouTubeにアップロードしたという訳です。

 今回あらためてキジバトの鳴き声を採譜するにあたり私はiPhoneを用いてフィールド録音した音声ファイルMacに取り込んだ訳ですが、詳らかに繰り返し再生してみると、収音時の自分の耳での聴こえ方と録音されたそれとでは随分と印象が異なる物だとあらためて痛感した次第。

 収音時には拘泥する事の無かった環境音、特に人の声や他の鳥の鳴き声。耳を注力して聴かなければ気付く事も無かった仄かに録音されている交通音や風による樹木のざわめき、更にはマイク部の「フカレ(=収音部に風が当たって生ずる吹かれた音)」などがロガリズミックに波形を見ただけでも8割方はそうした「不要」な音が占めていたのにも拘らず、収音時はキジバトにしか耳が行っていないのですから、人間の心理的な偏重にまざまざと実感させられる現実との違和には驚かされる事頻りでした。

 無論、フィールド録音という状況を前提にヘッドフォン等でモニタリングし乍らの録音であればそうした違和感を抱く可能性は低くなるでしょうが、人間の耳というのは注力している音だけが印象に残る(カクテル・パーティー効果)もので、キジバトの鳴き声以外の不要な雑踏は相当な程に含まれている事を実感したという事です。

 雑踏のノイズを除去する事に今回最も貢献してくれたのはスタインバーグのSpectraLayersPro6でした。最新バージョンは7もMac版でリリースされておりますが、私はHigh Sierraでとどめておかないと使えなくなるソフトがあるものですから7へのバージョンアップをしていないので最新バージョンでの話とはならないのはご容赦下さい。

 いずれにせよ「消したいノイズ」を波形の一部を選択した上でノイズの一部を記憶させてから、今度はファイル全体を選択して近似的なノイズを除去するという手順となります。古くはLogic Pro 7以降では同梱されていたSoundtrack Proでもこうしたノイズ除去は出来たものでしたが、今現在のAppleでは波形編集ソフトはおろかWaveBurnerも消えてしまったので、オーディオ&波形編集となるとサードパーティーに頼らざるを得ないのが現状です。

 扨て、SpectraLayersPro6にインポートしたオーディオ・ファイル上で消したいノイズを選択した上でそれを記憶させる手順は、'Process' メニューにある 'Noise Reduction' の 'Register Noise' を選ぶ必要があります。

 そうしてノイズを「登録」したら、今度はファイル全体を選択して 'Noise Reduction' メニューを選んで実行するだけで、登録したノイズを元に近似的なノイズを除去してくれるという訳です。こうする事で、キジバトの鳴き声の主要なパーシャル(部分音)抽出には300Hz以下と700Hz以上はほぼ必要なくなるので、ノイズ除去の後にこれらの帯域を消してやれば更に「クリア」なキジバトの鳴き声が得られるという訳です。

SpectraLayersPRO6.jpg


 鳥類の多くは結構高い倍音も鳴らしていたりするのですが、キジバトの場合は高次倍音という風に数オクターヴに亙るオクターヴ重複となっていないのが特徴的でもありました。つまり、それほど「共鳴」させておらず、狭い帯域でパーシャルを密集させているのが特徴であるという事をあらためて痛感した次第です。

 各パーシャルの僅かなビッチの揺れ具合をも再現しようとするのであれば、最も手軽にMIDI編集が可能なのはHit 'n' MixのInfinityにインポートしてやるのもひとつの手であろうかと思います。

 最も良い手段は、Spearにインポートさせてパーシャル毎の再生をした上で、その再生音通りに「手動」でピッチ・ベンドを追従させる様にMIDI入力するという方法が一番良いかもしれません。

 とはいえ、そこまでピッチを細かく揺らす事がなくとも、重要なのは部分音が組成された複合音という状況に似せる事ですので、ピッチの揺れを施す事がなくとも十分な程にキジバトの鳴き声に近付ける事は可能です。こうした理由から、今回の私のデモは、細かなピッチの揺れを施す事のない最大5つの部分音組成で構築しております。


 それでは譜例解説の方へ進みますが、今回の譜例動画で用いたパート数である最大5声部はLogic Pro X (10.4.8)内蔵音源のEXS24mkIIのデフォルト正弦波を使用しているだけです。強いて言えば、先述の通りBus送りのIRリバーブが仄かにかかっているだけで、極端なコンプレッサーもかけてはおりません。あとはマスタリング用のリミッティングが施されている位のものであります。

 そうして17/16拍子という1小節が幾度か繰り返される様になってはおりますが、注釈で 'repeat n>4 times' としているのは、4回超繰り返してほしいという願いを込めての物です。4回超と言い乍らデモ自身は4回で終わってしまうというのはミソを付けられてしまうかもしれませんが、私以外の再現する方に対しての思いであるのでその辺りはご容赦を。

 扨て、各音の上部にはプラスマイナスの増減値が付与されておりますが、これは「幹音」からの増減値としてセント数を付与した物であります。とはいえ、パート2での2拍目は「+25」という値となってしまっておりますが、これは正しくは嬰種微分音変化記号通り「+125」という値が正しい物ですのでご注意ください。下記画像の方では当該箇所を太字で「+125」と示しているのであらためてご確認いただきたいと思います。

 私個人としては数値のそれよりも楽譜の側を重視しているので、こちらは修正を施さずにこうした注意に留めているのはあらためてご容赦のほどを。

DaeDaePOPO-2020.jpg


 まあ、今回こうしてキジバトを採譜をしてあらためて気付かされたのは、キジバトの鳴き始めの《ででぽぽ》の最初の「で」は、口腔咽頭器官の共鳴を利用した物ではない「不完全五度」音程として部分音が組成されているのは駭きであり新たな発見でもありました。

 もしも「彼等」が共鳴を利用した発声であるならば、この五度音程は完全音程として協和する筈だからです。

 純正完全五度を念頭に置くと、その音程は自然数ではありません(※純正音程の比率として自然数なのであり、音高の絶対値が自然数なのではない)が概ね702セントという所になります。唯、譜例動画および先の譜例画像からもお判りとは思いますが、最初のパート4&5の2声の音程は純正完全五度よりも相対値として10セント広い音程であるのです。

 加えてこれらの部分音のオクターヴ共鳴=偶数次倍音が現れていないという事は、閉管と同様の構造で鳴らしているのではなかろうか!? と推察におよぶのでありますが、キジバトの発声が実際に閉管であるのか真偽のほどは定かではありません。とはいえこうした部分音の組成である事は瞠目に価する物であります。

 念の為に付言しておきますが、鳴き始めとして示した譜例1拍目のパート5で示す [e] よりも高めの微分音が、複合音としての最低音となる基本音であるので、キジバトの鳴き声を複合音として捉えずに単音として表す場合は、この基本音を基準にして示すのが宜しいので、高い方の部分音を採らずに解釈するのがより好ましいでしょう。

 とはいえキジバトの鳴き声は個体差があり、基本音のピッチは結構バラバラです。私の今回の採譜の例は「低め」のキジバトの鳴き声であり、今回の鳴き声を [e] の近傍とすると、概して長三度高い [g] または [gis] を近傍とする辺りで鳴く個体もおり、Wikipediaの方でも [g] を基準に採って例示している様ですが、低い方がキジバトっぽいなーという個人的な思いから今回の採譜の鳴き始めは [e] の近傍の個体を採用しているのでご理解願いたいと思います。

 譜例の17/16拍子は [4・4・4・4・5] のパルス構造としているのですが、四分音符での2拍目はツイッターの投稿では3声の予定でしたが、割愛しようとしていた部分音もあらためて含める事にしたので1拍目以外は5声としての部分音組成にしたという訳です。

 つまり、2拍目以降は微分音が凝聚する事となるペンデレツキよろしくの微分音クラスターともなる訳でして、微分音という中立音程が犇めき合う事で生ずる僅かな「うなり」の集まりが、獨特の「嗄声」感を演出している事にも貢献しており、《ででぽぽ》の特に後半の「ぽっぽー」の部分の嗄声感は、より一層強調される様な中立音程の配合となっているのです。

 微分音群を俯瞰してみると、人間の尺度としては見やすい24および48ETの様な四分音・八分音よりも、五分音や六分音の音脈の方が頻出している事が解ります。八分音としての基準となる3単位八分音=75セントや5単位八分音=125セントも、六分音の近傍として解釈する方が、キジバトの音程は五分音・六分音の音脈の方に寄せて発声していると見た方が好都合なのかもしれません。

 そういう意味からしても、五分音や六分音の方が実態に即した(自然界への)感のある微分音であると同時に、閉管構造の木管楽器の微分音オーケストレーションでも参考になる様な音脈で大変興味深い事実であるのは意外な発見でした。

 他に特筆すべき事は無いかと思いますが、つい先日Ekmelowフォントのバージョンが2.18にて追加されたファーニホウの五分音記号を早速使わせてもらっているのはご愛嬌という事で(笑)。