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東京JAZZ 2007 スペシャル・セッションを見て [クダ巻き]

NI Kontakt3が多くのバグを抱えているお陰で、NHK-BSで深夜4日間に渡って繰り広げられていた東京JAZZ 2007のライヴを夜更かししてテレビを見ることができましたが、まあ、私としては番組として一番みどころがあったのは、エリック・ベネイのGeorgy Porgyと小曽根真とマイク・スターンの演奏と、ランディ・ブレッカーのスペシャル・セッションで4日目の最後の最後にやった「Rocks」でしたか。

Rocksは着うたの方で、アリスタ・オールスターズによるマイク・マイニエリのソロをなぞったアレンジをリリースしている左近治でありますが、ランディ・ブレッカーを代表する名曲と言えましょう。オリジナルアルバムの方のベースはウィル・リーですけどね。

しかし、あんなにヘナヘナなアンソニー・ジャクソンの演奏を目撃してしまったのは私としては少々悲しかったですね。かなり好きなベーシストなんで。

リハの時間がなかなか取れなかったようで、メンバー皆苦労の色が見えていましたが、原曲の持つスリル感とは別のハラハラ感を感じていた左近治であります。

スペシャル・セッションのメンバーは

Randy Brecker (tp), Bob Mintzer (ts), Mike Stern (g), Will Boulware (kb), Anthony Jackson (bs), Dennis Chambers (ds)という、そうそうたるメンバー。ただ、このセッションは即席セッションのためランディ・ブレッカー自身がやたらとリハの時間が少ないことを強調していたので、「謙虚だなあ」と思っていたんですが、演奏が始まってみてそれは納得しました。Rocksは本当にハラホロヒレハレ状態でしたが、各人やはり相当な熟練者なため押し切ってしまうけれどもゆとりは全く感じませんでした(笑)。

特にアンソニー・ジャクソンは曲の構成そのものこそは譜面を追っているものの、印象的なリフを誰もが構築せずに「一発コード系」として捉えたようなプレイをしている人達が殆どなため、フレーズ自体がまばらで、自信を失ってプレイのゆとりの無さがついつい音価を短くしてしまったり、致命的なミスを避けるため、曲を構成する小節カウントにミスが生じないよう「先を急ぐ」ような感じでプレイしていたんですなあ。おそらくアンソニー・ジャクソン自身は原曲を知らなかったのだと思われるような曲解釈のようでした。

原曲の持つクラビネットのリフを弾いているものの、周期性を伴わないインタープレーで独自の解釈を色濃く出してしまったことが裏目に出てしまったんでしょうな。

この手のコード一発系が続くタイプの曲の場合、譜面は自身のパート譜だけではなく、少なくともメロディ譜か、トゥッティで主リズムを併記した方がミスは少なくなるんですな。これはあくまでも私の経験ではありますけどね。

とはいえディメオラと6連のユニゾンでも初見で難なくワンテイクで録音し、テイクごとには弦を新品に張り替えたという伝説を残してきたアンソニー・ジャクソンの読譜力に裏打ちされた確かなテクニックを知る人であれば、ローディーですらもプレイヤーのために譜面を新たに編集してあげるなど微塵も考えていなかったことなのかもしれません。裏舞台は分かりませんけどね。最後の16分のユニゾンも弾ききれなかったのか、途中、3音弾かずにシメましたね(笑)。


ローディーとはやはり、機材周りのサポートだけではなくプレイヤーに指図されなくともその場で譜面を作ってあげたりというサポートが当然のように行われるワケですが、凄腕アンソニー・ジャクソンには無用ダッタのかもしれませんな。しかしながらああいう演奏では「この先仕事大丈夫?」と思えるほどヘナヘナの音で、音そのものはどうにか場持たせしているように聴こえますが数小節前のフレーズをもflushさせてしまっているような先を急ぐ周期性の無さとリフ構築の曖昧さを露呈させてしまっていたようでした。とはいえ、ブレッカー以外のプレイヤーもリフは構築しておらず、デニチェンも中盤辺りから完全に「ながら運転」にフレージングさせて手数の多さでお茶を濁したようなドラミングでしたけどね。

デニス・チェンバースは譜面が読めないドラマーとして有名ですが、「一度聴いた曲の構成は必ず覚える」と豪語している人ですが、マイク・スターンのソロの時とウィル・ブールウェアのソロの時は1小節カウント及び腰になったような所がありましたね(笑)。ウィル・ブールウェアも1小節カウント間違えて無音でやり過ごした所がありましたね。

ただ、全体的にはこれほど難しいヴォイシングを持つ楽曲と、速いbpmにてあれほどグイグイ押しながら辻褄を合わせていようともアンサンブルとしては結構聴こえさせているのだから凄いと思いましたけどね。

ランディ・ブレッカーのソロの時のデニチェンの鬼の1拍12連(※シングル・ストロークの1拍6連でした。詳しくは下記注釈へ)のタム回しが来た時は、掛け値なしで凄いと思いました(笑)。ただ、デニチェンがもう少しメリハリ付けてテーマ部以外のソロの時はキッチリ2・4でスネア入れてあげながらインタープレー鏤めていればああいう混乱は少なかったように思うんですが、アンソニー・ジャクソンのリフがあまりにも「明日は明日の風が吹く」的な感じなんで、メリハリの少ないリフでみんなやり辛そうでしたね。

ウィル・ブールウェアのソロの時のマイク・スターンのコード・ヴォイシングは秀逸でした。サポートといい、ヴォイシングの選択が実に良かったです。自身のソロも良かったですけどね。曲が一番輝いていた部分でした。

辛辣コメントがまた炸裂しちまいましたが、フォデラの36インチ尺の6弦エンペラーを所有する左近治ですが、アンソニー・ジャクソンのLo-B弦の鳴りはかなり良かったです。

ライヴ全般では卓はどうもdigidesignのVENUEを使っているようなんで、使っているプラグイン等大方予測は付くんですが、Rocksの一番最後でアンサンブルがこだまが妙に長いので測ってみると、170ミリ秒ほどあるんですな。通常でもかなり長目のプリディレイというか、この曲のbpmの速さでああいうこだまの取り方ってどうなんだろ?と思ったんですが、モニターにそのリバーブを反映させているワケはないだろうし(笑)、会場特有の残響がマイクを通じて入ってきたのかもしれないし(そうするとスピーカー→会場の残響の一次反射→ステージのマイクが拾う→卓側ではその半分辺りのプリディレイを取っていると予測可能)。ともあれ、会場の残響特性やら卓の設定によってアンサンブルに影響したのか!?というのは普通は考えにくいことではありますが、「でっけえエコーだなー」とは思いました(笑)。

話は変わって、私はデイヴ・ウェックルはあまり好きではないんですが、屋外ステージではバスドラのボトムをベタベタにしていて、屋内ではきっちり締めているという使い分けは結構参考になった左近治でした。

なんだかんだ言いながら、このRocks。もう10回以上聴いていますけどね(笑)。


※注釈
デニス・チェンバースの1拍12連符と解釈していたオカズ部分は、よくよく分析してみたらシングル・ストロークの1拍6連でした(笑)。 当初はダブル・ストロークの2打目の弱いバラけた感じの1拍12連だと思ったんですが、先入観の恐ろしさというか、「こう在った方が心地良い」という左近治の勝手な思いがそう判断させてしまったんですなあ(笑)。 東京JAZZ 2007の「Rocks」の楽曲部分の尺は概ね8分48秒。出だしは3拍目8分裏からデニチェンのタムのオカズで入ってきますが、この最初のタムの音にマーカーを付けて、それがゼロコンマ72秒の位置、つまりアタマから0.72秒の位置の所に合わせています。最近のミックス傾向なら0.2秒程度の位置でもいいのかもしれませんが、出だしの空気感が欲しいので(笑)、この位置に合わせています(笑)。 そうして合わせたこの曲の4分07秒付近にて、デニチェンの1拍6連のオカズが入ってきます。ランディ・ブレッカーの1コーラス目のソロで、1つ目のブリッジ直前ですね。実際には2拍目からオカズが開始されますが。 小さいゴーストノートのようなダブル・ストロークの音が隠れているはずだ!とアレコレ分析してみたんですが、やはり1拍6連でした(笑)。でも、シングル・ストロークがゆえに余計に、片手の「3連」感覚が強調されたため、1拍12連をダブル・ストロークの手順だと、片手の挙動は3連刻む感覚ですので。とまあ、言い訳がましい左近治でありますが(笑)、極力間違いはないようにしたいので、左近治は徹夜してしまいました(笑)。