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サイド・チェーン活用法 ~ライド・シンバル編~ [ドラム]

さてさて、今回はSide Chain活用法のライド・シンバル編と参りまひょか。以前のブログ記事King Crimsonに学ぶサイド・チェイン活用法にて語ったのは、ダッキングを主眼に置いた、エフェクティヴな活用法としての一例でありました。今回はなにゆえライド・シンバルなのか!?

と言うのも、サイドチェインを扱うにあたってとりわけ用途が多いシーンはスネアかハットを録音するシーンと思われるんですが、左近治が感じてきた中で、一番応用を利かせることができて、且つサイド・チェインの妙味を知ることができる素材というのが私にとってはライド・シンバルを録音するシーンこそが一番糧になったから、というワケであります(笑)。

ライドと言えば、左近治にとってはPaiste。パイステですね。河に牌捨てるんじゃなくて(笑)。

ベルの音にも厚味があってふくよか、それでいってチップの音も重厚でありながら高域成分の部分音をふくよかに均一になってくれるような音だから好きなワケでありますが、とりあえずパイステであろうが他のシンバルであろうが、チップとベルの部分の音を両立させた音をクッキリ録音するには、サイドチェインのトリガーによるゲートを使わないとなかなかイイ音が得られないモノなんです。

アルバムの例で挙げると、例えば有名どころではキング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』収録の同名曲の終盤のライドの音。最近じゃオダギリ・ジョー出演のトヨタISTのCMにてクリムゾンを満喫できるのでありますが(笑)、あの曲は太陽と戦慄の方に収録なんでありますが、話を戻して、およそ40年ほど前に録音された楽曲の音を今も「良い音」と感じることができるというのが、あらためて作品の素晴らしさを痛感できるのであります。

ただ、左近治がライド・シンバル録音の奥の深さを思い知ることになったのは、有名なエンジニアであるダグ・エプスタイン御大が構築したサウンドに他ありません(笑)。

ダグ・エプスタインを知ることになったのは、最初は渡辺香津美のアルバム『TO CHI KA』。Unicornの収録されている有名なアルバムですね。

そのアルバムでトニー・レヴィンがフレットレスでグイグイとポルタメントを利かせて弾いてくれている「Cocumo Island」。この曲はピーター・アースキン大先生ですが、ピーター・アースキンのライド・サウンドに当時は釘付けだったワケですよ。この音に惚れて、ダグ・エプスタインの名前を知るきっかけになり、その後の渡辺香津美のアルバム『頭狂奸児唐眼(とうきょうがんじがらめ)=Talk You All Tight』に参加する山木秀夫師匠が演奏する「Riboj」のライドのチップのレガートの音にもノックアウト!これもまたダグ・エプスタイン御大。

その後、渡辺香津美の「Mobo」もこれまたダグ・エプスタイン御大によるもの。正直、このアルバムはオマー・ハキム聴きたさに購入したアルバムでしたが、このアルバムはゲート・リバーブ(Gated Reverb)を結構利かせているというか、そういう時代背景もあったんでしょうが、ゲイブリエル先生ほどゲートの前段にてコンプで圧延させていないゲートの切り方なので、やはりダグ・エプスタイン御大というのはゲートの使い方が巧みだなぁと思い知らされるアルバムには違いないんですね。

スティックのチップ音は材質やら体積など物理的な構造の違いはあっても、「オイシイ」コツコツ感というのは大体150~200ヘルツ付近。この辺りを少々Q幅狭いEQでブーストさせてやって、左近治の場合はこの後段を2系統にパラって、ベル用のサイドチェイン用とチップ用のサイドチェイン用の信号として処理するワケです。もっと欲張って3系統にするってぇのもアリなんですが。

レガートで演奏すると、シンバル自体が飽和してくるので概ね低域の余韻が強調されてきます。それをうま~くカットできるようにゲートを使うワケですが、この時サイド・チェイン用のトリガーとして使うのはセルフ信号(ライド・シンバル)の高域部分です。つまり、飽和した音が低域であるためコツコツ感を演出したい帯域とカブってしまう!それを回避するためにまずはHPFに通して、その信号の高域のあるポイントにてトリガーさせてゲートが効くようにする、と。

ただ、ここであんまりゲートを効かせすぎると、部分音をふんだんに含むタイプのライドは概ねクローズド・ハイハットのような音にもなりかねないので注意です(笑)。あんまり部分音が無いライドだと、径の大きなスプラッシュやら割れたシン・クラッシュのような音にもなりかねませんが(笑)、こんな音にならないゲートの調整が必要なのでありますな。概ねスレッショルドとリリースタイムをチマチマ扱うようになるんですが、Logic Pro内蔵のゲートはチャタリング回避のパラメータがあるんでこれは非常に便利です。

ゲートならチャタリング、コンプならブリージング、と。

江川ほーじんという方はブリージングさせたオーバー・コンプによるスラップ音が好きな方でしたが、それはさておき(笑)、ま、上記のようにチップのレガートを演出しても今度はベルの方で同じ設定をやってみると、ベルが少々軽くなっちまうってのが常なんでさぁ。

とゆーワケで、左近治は最低でも2系統、多くて3系統パラって使うというワケなんですよ。

最近のチャート系の曲でライドシンバルをふんだんに取り入れたアンサンブルの楽曲などそう耳にしないと思うんですが(笑)、ライドシンバルをもっと可愛がってあげるとイイことあるぞ、ということを述べてみたかったのでありますな(笑)。