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DAWアプリケーションにおける3dB補正のお話 [DAW]

2006年もあと僅かですねー。左近治は1年を振り返るよりも四半世紀くらい前を語る方がネタとして冴え渡るんですが(笑)。25年前の今ごろだと、私は車に夢中で、スカイラインRSのポール・ニューマンが写っているカタログに桜井真一郎氏のサインを家宝にして飾っていた時期でしたか。部屋にはベストカーガイド、CARトップ、driver、ホリデーオートなど多数の車雑誌に囲まれていた時期ですね。トヨタ2000GTの中古が当時で800万円ですか。時代を感じさせますね(笑)。

当時の車社会はDOHCエンジンブームの幕開けとも言える年でして、忘れもしない1981年3月21日の土曜日に、YMOのBGMが発売されレコード店でゲットした後、ちょっとした急用が出来てアルバムを聴くことができないまま親父の車で祖父母の家へ出かけることになって、その時の道中で見かけた初代ソアラがとてつもない速いスピード(たぶん160km/h以上出ていた)で親父を嘲笑うかのように抜いていったシーンが印象に残ります、ハイ(横羽線上りにて)。

さてさて、車の話はさておき本題に移りますか。

最近、DAWアプリケーション側で手っ取り早く3dB補正を行う機能が付いているものが増えましたね。でもこの機能、使い方によっては団子ミックスを手助けすることになりかねないので注意が必要なんですね。

3dB補正をするとサウンド的にはどうなるのか!?というと、まあ、イメージ的にはカメラの超広角と思っていただければよいかと。

カメラの広角というのは、魚眼レンズとまではいかなくとも25mm以下になると結構端っこのゆがみが目立ってきます。対象物が直線であるにもかかわらず。

左近治の抱く3dB補正というのはまさにこれで、音が左右に定位する端っこがよりよく聞き取れるようになるものの、定位が甘いという感じ。しかしこういうシチュエーションはあくまでもソースがモノラルだろうがステレオだろうが関係なく、安直に入力につないでミックスした場合のことです。

ステレオ感がそれほど無く、左右が同じ音量になってしまえばモノラルに近いものになります。つまり3dB補正を行う時は、左右のパンニングが甘く聴こえてしまう場合は、そのソースが補正の前の段階から明確に左右の違いが無いからでありますな。

しかし、空間系エフェクトの場合は内部処理でステレオ感の演出を行っているケースが多いため、3dB補正を行うと、おおむねリバーブやエコー感が増強されたように聴こえるのではないかと。

以前から何度も述べていますが(笑)、パンを左右振っただけでは実際の物理的シーンにおける音増の左右の移動とはワケが違います。右に振れば左側が僅かに遅れるのでありますな。左右の耳の距離があるので。

3dB補正をより良く効果を発揮させたいのであれば、補正される前から「定位」という明確な差を持たせて左右の遅延差や位相差などでステレオ感を演出させてあげないと効果が薄く、それをやらなければ団子ミックスに早変わりになりかねないんですな。

ここで、バストラックではなく、各トラックにリバーブなどの残響系や他の空間系エフェクトを「かけ録り」すれば、エフェクトが持つステレオ処理によって遅延や位相の差などがモノエフェクトでない限りは彩りを与えることができます。

つまり3dB補正を行う場合は、明確な定位やステレオ感という演出を最初からイメージしてやらないと補正という効果が仇になりかねないというワケであります。

しかし、耳の距離やらなにやらまで計算して処理したりなど、果ては楽器の配置感を得るために物理的にイメージしながら、距離をわざわざシミュレートして計算したりなど、こうなるとバイノーラルの世界に近づこうとしてしまいますね。良かれ悪しかれ、このようなデジタル音声を扱うことで遭遇してしまうシーン。定位を配置することが明確で2chミックスのそれとは趣きが異なるマルチ・チャンネルでの発想には及び腰になることなく3dB補正させていいかもしれませんけどね(笑)。

私はオーソドックスな2chミックスで3dB補正をさせない方が作業が進むのであまり使わないのでありますが(笑)、ミックスの前から明確に各楽器の距離感や左右の物理的な距離を計算して、エフェクトのかけ録りを必要とする場合において3dB補正を行ったりします。でもその場合は、ミックスの過程で定位をあれこれ悩んでトライ&エラーしてしまうようなら始めから3dB補正は捨ててしまいます。

かけ録りでステレオ・エフェクトの内部処理を利用して手間隙かけずに恩恵を受けようとしても3dB補正を念頭に置いたミックスはやはり定位は補正無しのそれとは大胆に振って、左右の遅延差や位相差などを演出した上でやらないとやはり満足できないというのが正直なところであります。

で、左近治はKクリで着うたをどうやって作っているのかというと、基本的には24ビット48kHzでやりますが、高域を大胆にいじったりするようなソースが多い時は24ビット96kHzでやります。

48kHzよりも高いサンプルレートで作業すると、高域のEQのかかりが良くなるので、そういう風に使い分けてるわけですが、高域の大胆なEQを欲する場面で48kHzや44.1kHzだと、いくら増減しても、プラグインなどのパラメータは同じ値でも全然レスポンスが違うんですね。例えて言うなら、油膜が付いてワイパーブレードが劣化した車のフロントガラスのワイパーで雨滴を一所懸命落としても落ちきれないイライラするような感覚と思ってもらえれば、と(笑)。ハイ・サンプルレートだとレインX使ったような感じとでも言えば分かりやすいでしょうか(笑)。16ビットだとさらにイライラが増して、高域ブーストさせた時に粒状感すら感じるくらい(笑)。

とまあ、こういう裏話を語りましたが、年が明けるまでは今年リリースしたものを振り返りながら話題を進めることにしますか。