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可聴周波数帯域に惑わされな! [回想日記]

さて、久々の記事アップ。今回は少々専門的な話題にしてみまひょか。

デジタルフォーマットの音楽が完全に標準となった今、最も身近なのはCDのデジタルサウンドの規格でありますが、いわゆる16ビット44.1kHzサンプリング周波数というものであります。レコーディング現場においてはこれよりもさらに高ビット深度と高いサンプリング周波数で録音してマスター制作という作業を行っているのであります。

でもCDはおろか圧縮された音楽ソースでも多くの利用者を満足させるように世にリリースされているわけですが、人間の耳の可聴周波数帯域が20~20kHzということをあまりに素直に信頼しきっているのではないかと疑問に抱く人は少ないようで(笑)。

可聴周波数帯域という名称で知られているものは、「人間の耳が純音を聞き取る極限域」ということを示したものだけでありまして、実は人間が音と認識するのは、この純音部だけではないということは殆ど知られていないのですな(笑)。あまりにも自分の耳がヘッポコだと居直っていやしませんですか?

「純音」とは音叉とかギターなどハーモニクス。すなわち倍音を含まない純粋な単一の振動数を持つ音のことであります。

どんな人間でも「純音」を認識できるようになっています。純音を捕らえるのは「毛細胞」という非常に小さい毛のような細胞が耳にあるわけですが、この毛細胞の物理的な長さは確かに「純音」を捕らえるように出来ています。とゆーか、毛細胞の捕らえた音はまさしく入ってきた音の振動数を正確にキャッチしています。

毛細胞が根差す膜に延びている神経が卵円窓と呼ばれる部屋から伝わる振動をキャッチしていて、耳に入ってくる音の振動数が複数あってもその振動数の違いをキャッチしているのは毛細胞、その毛細胞に根差す膜は微妙な周波数の違いをも全く別の要素の音だと判別できるのはこの組織の役割です。

これらの毛細胞と毛細胞が根差している膜によって初めて音と知覚するというワケです。鼓膜から入ってきた音は卵円窓に入って、中身は液体が満たされ、その中をフワフワと毛細胞がワカメのように根差していると思っていただければ良いかと。「音の高さ」はこうして知覚できます。

では、次は音の強さ。実際にはどれくらいの音の大きさを感じ取ることができるのかというと、ここがもはや神レベル。
1.25cm×10の-10乗という、とんでもない小さな変化量すらも聞き取ってしまいます。この音の大きさの振幅を周波数に換算した場合、この変化量を持つ波長は驚くこと無かれ、なんと「2720GHz」の1サイクル(=1波長)に匹敵するほどの距離なんですな。波長の概念を導入しましたが、あくまでもこの場合は音の強弱によるものなので、耳は音の強弱を判別しているのは、たったそれほどの距離の変化で判別しているということです。周波数(音の高さ)は毛細胞の役割なので誤解のないように。

毛細胞自体はその物理的な大きさから、捕らえることのできる周波数は幼年期で25kHzをピークに加齢に伴ってどんどん低くなっていき、中年で15kHz前後まで下がっていきます。さらに驚くことなかれ、個人差はあれど上限あるいは下限域外の音も実際には毛細胞自体は音を捕らえているのであります。

それを「音」として知覚するのは卵円窓から毛細胞の根差す膜へ伝わる振動によって「都合よく」音をフィルタリングしてしまっているのであります。さらには、毛細胞の根差している膜が何らかの要因で横方向に張力が加わると、途端に毛細胞の呼応性が高まるというのも驚愕の事実なのであります。

純音が、一般的に知られている可聴帯域である20Hzから20kHzの間をスウィープ(連続的に周波数が変化する)する正弦波というソースを聞いたとして、この場合もう細胞はきっかりと純音を捕らえてはいますが、毛細胞の根差している膜自体に張力の水平な変化は影響をあまり及ぼさず、むしろ、楽器類などのアンサンブルによる他の音がある意味「呼び水」となって張力変化を起こすのです。

カクテルパーティー効果として知られている能力は、例えば周囲の雑音が多い場面でも会話など特定のソースの部分の音の判別を高めようとする能力なわけですが、耳の構造自体がありとあらゆる純音を分析して捕らえてはいても、自然倍音列などは構造上非常によく捕らえる(感度が増す)ためか、ある種の倍音列に合致させるような能力が備わっていて、その働きによって人間は可聴帯域はリアルタイムに変化しているというのが真実なのです。

正弦波のスウィープ信号でも16kHz辺りまでしか聞こえなかったから「もう歳なのかなあ」などと悩む必要はありません(笑)。加齢に伴う衰えよりも、器楽的な倍音列の合致能力が強化されているため、器楽的ではない単一の純音に反応しなくなっているだけなのです。器楽的に豊かで、アンサンブルのある音が呼び水となって、特定の音の倍音構造を判別しているので、例えばある楽器の演奏されている音域がオクターブ上に変化した時、耳はその楽器の倍音構造をとらえて今まで聞いていた音域での倍音構造と似た(または同じ)ものなのか否かを瞬時に判別して、それが同一の楽器と認識しているのは、倍音列を瞬時に判断しているからなのです。こういう時に概ね人間は純音だけでは捕らえきれなかった極限域外の周波数を聞き取るようですが、ヴァイオリンの音などが呼び水となって、音楽全体(耳で捕らえる全体の音)の周波数帯の上限がリアルタイムに変化しているというものでもないようで、ヴァイオリンの倍音構造を判断するためにヴァイオリンという楽器への上限域外の音は聞き取れていても、その他は上限域が変化していなかったりなど、様々なシーンがあるようで一概には言えないのも確かなのです。

とはいえ、純音で16kHz程度しか聞き取れなかったからそれ以上は聞こえていないのだと悲観することはありません。実際にはそのオクターブ上、あるいは2オクターブ上なども聞き取れているのは事実なのです。但し、極限域はリアルタイムに変化していて、アンサンブル全体の周波数帯が拡大するのではなく、ある特定の音への倍音構造を判別するために捕らえている、その音に呼応することの方が確実に多いということです。

もっと分かりやすくいうと、非常にこもった音質の楽器が数トラック分あって、それを2ミックスで人間は聞いている。その内の1つの楽器、例えばヴァイオリンの演奏音域が変化して途端にヴァイオリンのEQのハイ部分が上がると。

しかし、それが呼び水となって他の楽器のトラックまでもEQでハイを上げて2ミックスを聞いているのでないということであります。

ところがこういうことは音響関連を学ばない限り知られていないのが現実で、これらのことが載っている専門書など、こういうことを学んでいない限りまず一般的に目にする機会はないでしょう。ところが、それ故なぜか純音だけでの測定が耳の可聴帯域だとして曲解されてしまっているフシがあるのも事実で、少なくともインターネット上でこのような内耳構造なども併せて正確に述べられている記事やHPは見たことがありません。多くの人が煩わしさを感じることなく情報を手にすることができるのがネットのメリットですが、情報を発信する側がいつまでも凡人レベルだと正しい答すら見えてこないのが弊害でもあるわけなんですな。

ただ、音楽に関しては言葉でどう説明しても演奏すら全く出来ない人にまでこのようなことを理解させる必要があるのかどうかというのも疑問で、分からない人は分からせないままでいいのではないのか!?とも感じることはありますね(笑)。着メロ制作時代でもMIDIすらも分からない人にどうやって作るのか、または音階やキーとはなんぞや?などと説明する必要があったのかどうか(笑)。

次辺りは絶対音感についても語ってみましょうか(笑)。